Symposium ボーダーシャツを語ろう。[井伊百合子さん篇]

  • 井伊 百合子さん(スタイリスト)
  • 江藤 公昭さん(「PAPIER LABO.」ディレクター)
  • 尾崎 雄飛さん(「SUN/kakke(サンカッケー)」デザイナー)
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File 02 ボーダーマニア尾崎さんのボーダーコレクション。

date:

2013/02/20 WED

content:
尾崎 (カバンからボーダーシャツを取り出しながら)
なるべく、いろんな種類のボーダーシャツを
持ってきました。
井伊 たくさん持ってきてくださったんですね、
ありがとうございます!
江藤 すごいですね、これ全部着てるんですか?
尾崎 高校のときに着ていて、さすがに最近は
袖を通してないやつとかもありますけど、
基本的には着てます。
井伊 そうなんですね。
これは、「セントジェームス」?
尾崎 そう、「ナバル」というシリーズです。
上下に白い無地の部分がある、
「パネルボーダー」と呼ばれるタイプです。

▲ボーダーシャツの老舗「セントジェームス」の「ナバル」。
 「ナバル」とは、フランス語で「海軍」という意味で、
 かつてフランス海軍の水兵たちの制服であったことから
 この名がついた。
 胸もとと肩口が無地なので、すっきりした印象。

尾崎 こちらは、生地全体にボーダーが入っているタイプ。
同じく「セントジェームス」で、
「ウエッソン」というシリーズですね。

▲「セントジェームス」のシャツのなかでも、
 定番中の定番といわれる「ウエッソン」。
 目が詰んだしっかりとした生地は、
 長く着ていくことで風合いが増していく。

井伊 そうか、縞の入りかたにも、
いろんなパターンがあるんですね。
あまり意識したことなかったです。
江藤 これはヴィンテージものなんですね。
今のものとなにか違うんですか?
尾崎 まず、青の色がちょっと違うんですよ。
現行品は明るめの青か濃紺なんですけど、
このヴィンテージの「ウエッソン」は、
ちょっと赤にふれている紺色なんです。
比べてみたら、わかりやすいかも。
井伊 あ、本当だ、気がつかなかった。
紫に近い紺なんですね。
尾崎 あと、タグが古いタイプなんです。
今はフランスの名所「モン・サン=ミッシェル」が
描かれているんですけど、このころのタグは文字だけ。
江藤 へぇー、そうなんだ。
さすが尾崎さん、マニアだなあ(笑)
尾崎 ええ、ボーダーマニアです(笑)。
昔、古着屋をやっていたこともあるんですけど、
ヴィンテージのボーダーシャツは
すごく人気がありました。
どの世界にも、やっぱりマニアっているんですよ。
この「オーシバル」も、
そういうマニアからほしがられる一枚です。

▲1950~60年代にはフランス海軍のユニホームとして
 採用されていた「オーシバル」の「ラッセル」。
 織物と同じように縦方向に編みたてる、
 「ラッセル編み」が特徴。

井伊 あっ、なんだか素敵。
尾崎 これは、シャツのつくりが初期のころのもので、
できるだけ生地に無駄がでないように、
直線的なパーツを「T」字型に縫い合わせたような、
すごくシンプルな形をしています。
井伊 たしかにシンプルです。
まさに「T」シャツですね。
今、こんな形のボーダーシャツは見ないので、
とても新鮮な感じがします。
尾崎 着たときのシルエットが考えられるようになったのは、
ファッションとして認識されるようになってからです。
ここまでT字型のものは、もう見かけませんよね。
井伊 こっちの太いボーダーのシャツは、逆に形がモダンっぽい。

▲ロサンゼルスにある「RTH」のボーダーシャツ。
 ボディ脇線の部分が大きく開いた、ユニークなデザイン。

尾崎 これは、「RTH」という少し前にオープンした
ロサンゼルスのブランドのボーダーです。
ボーダーの幅が極太で、
サイドがガバーッと開いているんですよ。
井伊 大胆ですね!
尾崎 下に着ている服が見えて、けっこうかわいいんですよ。
女性が着たら、特に。
井伊 デザイン的に凝ってるものは、やっぱり目をひきますね。
尾崎 そうですよね。
これはぼくがつくったやつなんですけど‥‥。

▲尾崎さんが以前ディレクターを務めていたブランド
 「FilMelange(フィルメランジェ)」のボーダー。

井伊 ボーダーの線と線の間に、自転車と星が入ってる!
尾崎 ジャガード織りの生地をつかって、
ボーダーの地にあたる部分で遊んでみました。
尾崎 こっちはヴィンテージのポロシャツなんですけど、
まるでボーダーのラインかのように、
ノアの方舟の絵が入っています。

▲ボーダーの間に、ノアの方舟と、
 そこに乗ろうとしている動物たちが描かれている。

井伊 一口にボーダーシャツといっても、
いろいろありますね。
尾崎 みんな、けっこういろんなことしてます。
ボーダーって、一見ただの線だけなんですけど、
そのなかにいろんな可能性が含まれていて、
おもしろいと思います。
井伊 ‥‥そういえば江藤さん、
さっきから無言ですね(笑)。
江藤 あ、ごめん、つい見ちゃってた(笑)。
あの、いろんなボーダーシャツを見せていただいて、
ぼくは、シンプルなほうが、しっくりくるなと思いました。
絵とか入ってるのは、まだ手が出せない気がする。
井伊 うんうん、たしかに。
ふだんボーダーシャツを着ない我々には、
シンプルなボーダーシャツからはじめるのが
いいかもしれません。
そして、わたし、
着たいと思うボーダーシャツが見つかった気がします!
みんな おぉっ、それは!?

(つづきます)

井伊 百合子(いい・ゆりこ)

スタイリスト。
東京生まれ。
2004年文化服装学院アパレルデザイン科
メンズデザインコース卒業。
在学中よりスタイリスト ソニア パーク氏に師事。
2008年独立。
現在、「GINZA」や「装苑」などの雑誌や広告等、
幅広い媒体で活躍する人気スタイリスト。
「実際に使える」ことが、しっかりと考えられている、
ナチュラルで上品なスタイリングを得意としている。

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江藤 公昭(えとう・きみあき)

「PAPIER LABO.」ディレクター。
ランドスケーププロダクツにて
インハウスデザイナーとして在籍時に
紙にまつわるプロダクトを取り扱うショップ、
「PAPIER LABO.」を設立。
2010年1月に独立し、
店舗運営を中心にデザインや印刷の窓口的役割を担う。
もののよさを見抜くセンスは紙ものだけにとどまらず、
ジャンルを超えて活躍中。
井伊さんとはご近所さんで、ふだんから親交がある。

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尾崎 雄飛(おざき・ゆうひ)

1980年愛知県生まれ。
大手セレクトショップバイヤー、
ヴィンテージショップ店主を経て、
2007年に「フィルメランジェ(FilMelange)」を立ち上げ、
ディレクターとして活動。
2011年に独立し、
フリーランスのデザイナーとして
様々なブランドのデザイン、ディレクションを手がける。
2012年1月に自身のブランド
「SUN/kakke(サンカッケー)」をスタート。
洋服に対する愛情と深い造詣に定評がある。

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