カシミヤのストール

無染色のカシミヤの魅力。
轟木節子 ✕ NATURAL BASIC 鼎談

スタイリストの轟木節子さんが監修した
カシミヤ山羊の産毛のやわらかさを
そのままいかした無染色のカシミヤのストール。
ほぼ日では2018年にはじめてご紹介して
たいへんな人気で、よろこばれたストールです。
2年目の今回は、さらに大きく、やさしく、
そして、ユニセックスの
あたらしいかたちも企画しました。

無染色ならではの、やわらかさとやさしさ。
カシミヤの産毛のやわらかさを保ったストールは、
ハンカチやスカーフなどの老舗メーカー、
「川辺」のブランド、「NATURAL BASIC」と
轟木さんとのコラボレーションによるもの。

昨年、無染色のカシミヤについて
企画の監修をした轟木節子さん、
川辺企画チームの、
デザイナーの月原佐知子さん、
マーチャンダイザーの金子貴香さんに
うかがったお話と、
この夏、写真家の吉森慎之介さんが
内モンゴルで撮影した、
カシミヤ山羊たちのようすをお伝えします。

轟木節子(とどろき・せつこ)

スタイリスト。
1972年、熊本生まれ。
ファッション誌、カルチャー誌、広告などで幅広く活躍。
シンプルな中にスパイスの効いた、
独自の空気感が漂うスタイリングが人気。
ナチュラル志向なライフスタイルも注目されている。
近年は、フォトグラファー、文筆家としての活動も。
著作に日々のスタイリングのヒントがつまった
『毎日のナチュラルおしゃれ着こなし手帖』
『毎日のナチュラルおしゃれ着こなし手帖 2』
などがある。

NATURAL BASIC

1923年創業の服飾雑貨メーカー「川辺」から、
「自然に優しく」そして「より自然に」をコンセプトに
2000年に誕生したストールのブランド。
一頭からとれる毛の量はおおよそマフラー1枚分。
その希少性から「繊維の宝石」と呼ばれるカシミヤの
素材そのままの柔らかさ、軽さ、あたたかさ、
触れた時の気持ち良さ、
そのうれしさの全てを最大限に‥‥と考えて、
ナチュラル=手を加えない「素」への追及を重ねている。

吉森慎之介(よしもり・しんのすけ)

写真家
1992年鹿児島県生まれ、熊本県育ち。
都内スタジオ勤務を経て2018年に独立。
トレードマークはオーバーオール。
著書に写真集『うまれたてのあさ』
(2019年/私家版)がある。

公式サイト
https://shinnosukeyoshimori.com/

カシミヤ山羊のふわふわの産毛。
そのままのよさを、もっと伝えたい!

月原
ナチュラルベーシックの
無染色のカシミヤを使ったストールづくりは、
2000年にスタートしました。
カシミヤ山羊のふわふわの産毛の
そのままのやわらかさ、軽さ、あたたかさを
最大限に生かしたいというコンセプトを保って
ずっとやっていたんですけれども、
なかなか広がらなくて。

無染色のカシミヤのストールは
とてもシンプルだからこそ、
巻き方ですとか、
素敵に見える方法がわかれば、お客様に
もっと気に入っていただけるんじゃないか。
どなたかとコラボレーションして、
ストールをプロデュースしていただけないか、
と思ったんです。

タレントさんに着けていただくとか、
いろんな方法があると思うんですけれど、
スタイリストさんがいい、という声があって。
スタイリストさんって、
お洋服やファッションアイテムを活かして
素敵に見せてくれるプロですものね。

じゃあ、スタイリストさんを探そう、と。
でも、スタイリストさんっていう職業の方、
私たちは接点がまったくなくて。
インターネットとか、雑誌を見たりして調べて、
勘だと思うんですけれど、
轟木さんが冷え対策のお話をされてる記事も拝見して、
そういうことも考えてお仕事されてる方だったら、
このカシミヤのあたたかさをわかってもらえる。
もう絶対、轟木さんだ! と思って。
でも、そのあと、なかなか轟木さんに
たどり着けなかったんです。

轟木さん(左)と月原さん(右)。

轟木
すみません、私の連絡先、わかりにくくて。
月原
なんとか、やっと連絡がとれまして、
会社に来てくださって、
ストールを見ていただいたりして。
それが2015年の末で、16年から始まって、
冬物は3シーズン、ご一緒させていただいて。
でも轟木さんがどういう思いで受けてくださったかは、
ちゃんと聞いたことがないですね。
轟木
まず、触れてみたときに
ふわっとした弾力が気持ちよくて驚きました。
物を見たときって、
なんとなくその重さを想像しますよね。
その予想よりすごく軽くて、
巻いてみると気持ちがよくていいな、と思いました。
けど、デザインがエレガントで、
対象として考えている年齢層も上なのかな? と。
金子
そうですね、そのころは、
ミセス寄りな感じのものづくりには
なってましたね。

月原さん(左)と金子さん(右)。

轟木
自分の好みとはちがうかなと思いましたが、
「自然のまま」っていうコンセプトが気に入って、
素材もとってもよかった。
そして、癒されるようなやわらかさだったり、
見た目よりもずっと軽い、そういう驚きと、
触ったときのうれしさが
素材自体にすごくあったので、
もっといろんな服の好みの人も、
巻きたくなるものがあるといいなと思って、
ご一緒したいと思いました。

「ふわふわベビーカシミヤストール」27,500円(税込)
仔山羊のうまれて初めて生え変わる
産毛をつかったもの。

仔山羊。

「ふわふわベビーカシミヤストール」の
2019版は、さらに大判に。
どんな巻き方をしてもチャーミングになるように
すべての辺にフリンジをつけました。

カシミヤ山羊からの、
ぬくもりのおすそ分け。

月原
ナチュラルベーシックのカシミヤは、
中国の内モンゴル自治区で
生産したものがほとんどです。
いい原料がとれる地域なんです。
そういう場所にはカシミヤ工場が集まっていて、
そこで一貫で、
品質のいいカシミヤの製品が作れるんですね。


原料は、カシミヤ山羊の産毛です。
カシミヤ山羊が住んでいるところって、
朝晩も、夏と冬の寒暖の差も
激しい高地なんですね。
月原
カシミヤ山羊の毛って、
外側は硬いんですけれど、
内側に良質な産毛を蓄えるんです。
産毛に自分の体温の
あたたかさがたまるんでしょうね。
外側の硬い毛は、
それを逃さないのと、外気の寒さから守る。
金子
繊維の層にあたたかい空気が
たまるんだと思います。
月原
春、あたたかくなった5月ごろ、
その産毛が生え変わる。
そのときに、櫛のようなもので梳き取るんです。
轟木
産毛っていうのがいいですよね。
金子
それをおすそ分けしていただいてる感じですね。

カシミヤ山羊の産毛。

月原
山羊からいただいた産毛を、
人間の手で分けていくんですね。
ナチュラルベーシックのストールは、
自社で設けているランク付けの中でも
上質なものを使っています。

轟木さんがトークイベントで、
お客さまに目をつぶってもらって、
原毛をそっと手にのせて、
っていうのをやってくださったんです。
のせた瞬間はわからないんですよ。
で、しばらく目つぶったままでいると、
じわーっとあたたかくなってくるんですよ。
轟木
冬になると、よけいにわかるんです。
月原
それがカシミヤがもともと持ってる、
それ自体の自然の力なので、製品になっても、
「癒される」って感じるのかもしれません。
轟木
これは竹でできた布のお話なんですけど、
触った瞬間が気持ちいいと、
皮膚や筋肉がゆるむんですって。
そのゆるんだことによって、
血流がよくなるらしいんですよ。
それであたたかく感じる。
それはカシミヤにも言えるなと思って。

そうそう、ナチュラルベーシックのアイテムは、
みんながイメージする
カシミヤのストールの価格よりも、
買いやすいお値段ですよね。
月原
うちは、もともとメーカーなので。
自社製品をたくさん作っていることで、
お求めやすい価格になっているんです。
原料調達から仕上げまで
全部、中国でやっています。
もう20年ぐらいのお付き合いの協力工場で。
長い信頼関係があるんです。
轟木
ほぼ自社工場に近いようだから、
ファクトリーブランドみたいな感じなんですね。
私も関わるようになって、
すごくていねいで、よいものを作りたいという
熱い思いのある工場さんだなと感じています。

「シルク刺繍ストール(濃いグレー)」31,900円(税込)。
ゆるやかに揺らぐようなシルク刺繍のラインが
優雅なアクセントに。

自然そのままの色を
ブレンドしてつくる色。

月原
ナチュラルベーシックのラインナップは、
無染色の素材だけでつくっています。
基本的にカシミヤ山羊の毛の色って、
白、ベージュ、ブラウン、
それから黒ですね、黒カシミヤ。

ですけれど、自然のものですから、
山羊一匹ごとに個体差があって、
同じ色ではないんです。
たとえばブラウンの中でも
色は無限大ですし、
黒い山羊も、産毛はちょっと茶味帯びてて、
真っ黒ではないんですね。

ですから製品にするためには、
ある程度、色の基準を決めて、
それに合うように、
いくつかの毛をミックスしているんです。

左から、ホワイト、ライトグレー、グレー、
濃グレー、ブラウン×濃グレー。
カシミヤ山羊の産毛をていねいに選り分けて
色味を際立たせています。

轟木
ストールをつくる工程の中で、
その産毛のふわふわがあまりにも気持ちよくて、
そのままストールにできたらいいねっていうのが
ナチュラルベーシックの始まりだったって聞いて、
それもおもしろいなと思ったんです。
ストールをたくさん作っている会社ならでは。
月原
カシミヤって
今はけっこう身近になりましたけど、
高級素材ですし、
自然からいただいた貴重な資源なので、
やはり大事に使いたいんですよね。
どうしたらこのカシミヤの、
他の繊維にない柔らかさとか、軽さとか、
最大限に生かすことができるのか。
染めるのが悪いことではないんですけれども、
やっぱり、工程が少ないほど
原料に与える負荷が減って、
そのものの風合いが形になるので、
どんどんマイナスをしていった結果、
無染色になったんだと思っています。
轟木
それが、触れたときの
「わ、癒やされるー」という感覚に
つながっているのかな。
「生活のたのしみ展」のときのお客様たちが、
触った瞬間に、
目がキラッとするという話がありましたよね。
まさにそれですね。

「大判スクエア(濃グレー×ブラウン)」30,800円(税込)
贅沢な、おおきな、正方形。
どんな巻き方をしても
おしゃれになるのが、このかたち。

あたらしいカシミヤが、
ここにあります。

月原
若い方にもよさが伝わって、
使いたいと思ってもらえるものを
つくりたいと考えて、
轟木さんに企画と、
デザインのほうにも入っていただいて。
轟木
年齢層だけでなく、
カジュアルなお洋服を着る人にも、
ちょっとモードっぽい服を好む人にも、
男性にも合うっていうのを意識してます。
男性のお客さまから、
自分も巻けるのないかなっていうお声があったり、
男性への贈り物にするとしたら、
どれかな、っていうようなお話もあったりしたんですよ。

「リブニット差し込みマフラー」19,800円(税込)
マフラーの端を輪っかに通すだけで
おしゃれが決まるすぐれものです。
この手軽さは、女性だけでなく、ぜひ、男性にも。

金子
ほんとうにすごく広がりました。
こういう、色数の少ない世界なので、
デザインするのも
けっこう苦労するんですね。
轟木
そうなんですよ。そこは月原さんがすごい。
色が少ないから、
織りや編みの組み合わせとかでやっていく。
金子
轟木さんにいろいろ言っていただくと、
ああ、そういう作り方をしてもいけるんだ、
そういう視点の考え方もあるのか、って思います。
新しいひらめきというか、
相乗効果はありますよね。
轟木
私は、どういうことができるのか、
できないのかがわからないから、
全部言いますので、
そのなかでできることを
相談しながらやっていきましょうって。
月原
やはり物理的にできないこともありますけど。
轟木
「あ、それはできません」みたいな、ね。
月原
でも、それがいいんです。
私はもう、できないことがわかっているので、
そこでストップがかかっちゃいますよね。
だけど、何か工夫したらできるんじゃないか。
私も作り手なので、
やっぱり新しいものができるとなれば、
ワクワクしてくるんですよ。

できないと思い込んでたけれど、
いろいろトライしてみたらできちゃった、
みたいなことがあるんですね。
轟木
たとえばこのスヌードも、
最初は私、裏をシルクにしたかったんですね。
でもシルク100%というのはむずかしかった。

「リブニットスヌード」17,600円(税込)
表はカシミヤ、裏はカシミヤシルクのニット。
保湿性があって肌にやさしいシルクと、
あたたかくてなめらかなカシミヤで、
とろけるような肌ざわり。

月原
それで工場といろいろやりとりするなかで、
シルクカシミヤの糸があったはずだから、って、
作ってもらって、実現したんです。
轟木
シルクだけだとひんやりするんですけれど、
カシミヤが入ったので、それがなくなって。

さまざまな工夫をしてできあがった
シルクカシミヤのニットの裏地。

月原
あと、編み地が、表はやや粗いローゲージ、
裏地は細かいハイゲージというものなんですが、
それをつなぐのに、セーターなんかをつくるときの
リンキングっていう方法にしたんです。
そしたらきれいにできて、轟木さんにもすぐ、
うまくできましたよ、って。
轟木
あのときは、うれしかったですねー。
月原
轟木さんは、ものづくりの工程とか、繊維とか、
そういうことにすごく興味が深いんですよ。
ですから企画の話をしてても楽しいんですよね。
金子
可能性をどんどん広げてくださるので。
月原もベテランですし、
ほんとうに追及していくタイプなので、
2人の掛け合いが
今につながったのかなと思って。
轟木さんに出会うまでは遠回りしましたけど、
ほんとうに出会えてよかったって、
みんな思っています。
月原
私、そこほめてもらえます、みんなに。
よく轟木さんにたどり着いたね、って。

カシミヤのストールは、
2019年12月13日(金)
午前11:00から販売します。

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