ほぼ日手帳 2016

ナイスなつかいかたコレクションあのひとの「ほぼ日手帳」017 マンガ家 とよ田みのるさん プロのマンガ家が水彩画で描く愛情たっぷりの育児日記が、Twitterで大人気に。

マンガ家のとよ田みのるさんが、
赤ちゃんと過ごす日常をマンガにして
Twitterで公開していた『最近の赤さん』が、
趣味の枠を超えて人気マンガになりました。
そして、新たに「ほぼ日手帳」を使いはじめた
とよ田さんは「リアル赤さんスケッチ」として
水彩画をTwitterで公開するようになりました。
手帳を使いはじめたきっかけや水彩画の魅力、
自認する親バカっぷりも、たっぷりと伺いました。

ナイスなつかいかたコレクションあのひとの「ほぼ日手帳」
ほぼ日
とよ田さんのTwitterで、かわいらしい「赤さん」の
水彩画をたのしみに拝見しているんですが、
描きはじめたのはいつ頃からですか。
とよ田
「私まんが座談会」で声がかかって、
これを機にほぼ日手帳を買ってみようかなと
6月の頭ぐらいから使い始めたんです。
ほぼ日
そこから手帳にもお子さんの絵を描いて、
Twitterにアップするようになったんですね。
とよ田
はじめは、ボールペンだけで描いていましたが、
『ほぼ日手帳公式ガイドブック2016』を読んで、
その中にあった「河シクシクイ」さんの絵に、
ショックを受けたのがきっかけなんです。
▲河シクシクイさんのほぼ日手帳
▲河シクシクイさんのほぼ日手帳
ほぼ日
河さんはInstagramで、
クオリティを保ちながら
毎日のように続けているのがすごいですよね。
とよ田
何で塗っているんだろうと見たら固形水彩なんですよね。
「ああ、固形水彩なら手軽でいいね」と思いました。
僕の水彩は、水筆っていう握ると水が出てくる筆で、
絵の具を溶かしながら描くんです。
ほぼ日
きっかけは、ガイドブックだったんですね。
とよ田
そうなんですよ。糸井さんとお会いしたときに
「娘を手帳に描いてるんですよ」と伝えられて、
もうそれだけでちょっと満足していたんです。
でも、そのあとにガイドブックを見たら、
かなり描き込んでいる人がいるじゃないですか。
よーし、もうちょっと頑張っていいのかなと。
ほぼ日
手帳に絵を描く時間は、どのぐらいかけるんですか。
とよ田
線画自体は本当にものの数分だと思うんですけど‥‥
そうだ、今ササッと描いてみましょうか。
(お話しをしながら描きはじめる)
ほぼ日
写真を見ながら描かれるんですね。
とよ田
そうですね。最初は、娘が止まってるときを狙って
描いていたんですけど、寝てるときしか描けなくて。
赤ちゃんって、つねに動いてますから。
ほぼ日
いろんなところに行っては写真を撮って、
家に帰って絵を描いて、という繰り返しなんですね。
いまではKindle版が発売されている
『最近の赤さん』をTwitterで始めたのが、
娘さんが10か月のタイミングでしたよね。
そのきっかけには、なにがあったんですか。
とよ田
はじめは、なんか幸せ自慢みたいで
カンジ悪いかなと思って我慢していたんです。
でもあるとき、妻のほうにばかり行っていた娘が
突然僕のとこに寄ってきてくれたことがあったんです。
それがもう、うれしくて、うれしくてしょうがなくて、
「こんなことあったぜー!」という漫画を描いたら、
思いのほかリツイートしてもらいました。
「あっ、こういうの言っていいんですか」と思って、
続けるようになったんです。
ほぼ日
とよ田さん以外の登場人物を動物にすることで、
「ああ、かわいいなあ」で受け止められますよね。
かなりサラサラと下描きをされるんですね。
とよ田
手帳の下描きは1、2分とかで線を引いて、
そのあとに、暇なときに着彩をしています。
ちなみに、絵の具の入れ物も手づくりしてみました。
重箱みたいになっていたものの1段だけをはぎ取って、
パレットとまとめたものを、段ボールで作りました。
ほぼ日
おぉー、すごい。お仕事でも水彩画は使っていますか。
とよ田
いえ、これはまだ趣味で使っているだけで。
仕事では「コピック」というマーカーを使っています。
でも、今ちょうど連載と連載の隙間で
わりと時間があるんですよね。
この期間にスキルアップしたいなと思って、
水彩を勉強してみようと道具をそろえたんです。
実際にやってみたら、かなり楽しいなと思いました。
ついこのあいだ描いたのが、これです。
娘が袋を持って、赤い実をずーっと拾っていたんです。
ほぼ日
わー、素敵! 「赤さん」がこの瞬間を覚えていなくても、
いつか大人になって読み返したときに、
「こんなことあったんだ」と思えたらうれしいですね。
とよ田
大きくなったら、このままプレゼントしたいですね。
写真のアルバムも作っていますが、
プリントアウトが遅れちゃったりして。
あと、これね。この絵の色合いが気に入ってます。
ほぼ日
ああ、これもかわいい!
とよ田
これはね、娘が猫のパペットが好きなんですけど、
友人から貰った、かぶる猫の毛布を着せたら、
パペットのお母さんのフリをするんです。
ほぼ日
うわー、かわいい!
とよ田
「いい子いい子」とかしてあげるんです。
子どもでも母性があるんだなと。
ふしぎとこれかぶるときは、黙るんですよ(笑)。
ほぼ日
ああ、大人になるんですねえ。
『最近の赤さん』を描かれるようになった
生後10か月の赤さんが2歳になりましたが、
その中で変わったことってありましたか。
とよ田
最初はビックリする瞬間が、いろいろありました。
特に、しゃべるのと歩くのはすごくショックでしたね。
「ああぁ、歩いてる、歩いてるぅー」って、
歩いているだけで泣きそうになるんです。
うれしいのはもちろん大きいんだけど、
「あっ、もうハイハイじゃないんだ」っていう
寂しさもどこかにありますよね。
ほぼ日
マンガでは、とよ田さんも一緒になって、
ハイハイしていましたもんね。
とよ田
そうなんです。だから寂しくて‥‥。
これが2歳の誕生日なんですが、
誕生日のときには貼るものがあり過ぎて、
絵は、その周辺のページに描いています。
上野動物園の入場券を貼ったら描くところがないから、
別のページに絵を描きました。
イベントのときには描くことが多いですね。
ほぼ日
この手帳は、マンガのネタ帳にもなっていそうですね。
とよ田さんが、ほぼ日手帳を使いはじめたときには、
どう使っていこうと考えていたんですか。
とよ田
個人でやる仕事なので、あまり人と会わないんです。
意図的に人と会わないようにすれば、
人と会うのって月に1度か2度ぐらいだから、
手帳に書くことがあまりないんですよね。
それじゃあ手帳を持て余すなあと思ったけれど、
娘の育児日記にちょうどいいぞ! と思って。
使いだしたら、いろいろ使いみちが出てきました。
記録をしてみてよかったことは、
思い出になって、話せるのがいいですね。
「あ、ここ行ったね。また今度行こうか」とか。
動物園のチケットとかシールとか、
娘にもらったお花を押し花にして貼っておいたりね。
ちゃんとした行き場ができたのがよかったです。
貼るだけで、いい思い出になりますよね。
最近は妻が買ったチケットも、僕に渡してくるんです。
「これ、貼るでしょ?」って。
ほぼ日
たしかにチケットって、行き場がないですからね。
そういえば、水彩で描いているのに、
紙がにじんだり、フニャフニャにならないんですね。
とよ田
そうなんです。この紙、かなりいいと思いますよ。
裏写りも全然しないし、すごく描きやすいです。
水彩の勉強として、いろんな紙を試していますが、
案外この手帳が描きやすいんですよね。
水彩は、色を塗ったあとでも、ちょっと濃いなと思ったら
水で拭いてあげると、色が馴染んで明るくなるんです。
水を使うのに、後ろのページに染みにくいんです。
さすがに、描くページが増えると分厚くはなりますけど。
ほぼ日
だから絵日記に使う人が多いのかもしれませんね。
あっ、「赤さん」の落書きページもありますね。
とよ田
はい、これは娘が描いた絵ですね。
娘が、僕の真似をしたくて筆を奪うんですよ。
1歳半ぐらいで描いた絵なので、形は整っていませんが、
落書きのストックも面白いかもしれませんね。
最初は抽象だったのが具象になっていく過程も、
きっと面白いでしょうね。
ほぼ日
それ、面白いですね! いい記録になりそうです。
『最近の赤さん』のマンガにしても、手帳にしても、
とよ田さんの好きなときに描かれていますよね。
趣味として、好きでやっているからこそ、
続いているのかなと思いました。
とよ田
「うちの子見て。かわいいでしょ?」っていうのを
漫画の中でやっているだけですからね。
「このかわいい仕草、どう?」っていう。
僕は今でこそ、こんなに親バカなんですが、
じつは、娘が生まれるまでは赤ちゃんを見ても、
あまりかわいいと思えませんでした。
お世辞では「かわいいですね」って言うけれど、
内心では、サルみたいだなって思っていたり(笑)。
だから、しゃべれない赤ちゃんのときは、
面白くないだろうなっていう感覚があったんです。
でもね、生まれた子どもを初めて抱いた瞬間にね‥‥
よだれが落ちてきたんです。
「ああっ、かわいい!」と思っているうちに、
ボーッと見過ぎちゃっていたのかな。
一瞬で虜になりました。本当に、本当にかわいかった。
ほぼ日
はぁー、そんな変化があったんですか!
「赤さん」が好きなのはもちろんあるとして、
やっぱり絵もお好きなんだなというのも伝わってきます。
マンガ家を目指すきっかけも「絵が好き」からですか。
とよ田
そうですね。気がつけば絵が好きで描いていました。
中学校のときは美術部で油絵をやって、
色を塗るのも楽しいなと思えるようになりました。
マンガ家になって、描くことを「鍛錬」としていたのが、
最近、やっと「楽しい」に変わった気がします。
ほぼ日
「赤さん」がきっかけで本が出たり、
お仕事も変わってきていますよね。
とよ田
親バカな僕がベロ出して「見て!見て!」とやっていたら、
小学館さんが「うちでやりませんか」と言ってくれたり、
みんなが読んでくれるようになったんです。
Webでマンガを描いている人って、
かなり純粋な「好き」が多いですよね。
出版社を通すのもかったるいぐらいの感じで、
「面白いの描いたから見て見てー!」とやっていたら、
「おい、もっと描け」と周りに言われるようになって、
「ああ、描いていいんだ」っていう感じです。
『赤さん』の漫画もWebに投稿したら、
すぐに反応があるから、ちょっと気持ちいいんですよね。
ほぼ日
とよ田さんが手帳に絵を描かれているのを見て、
「あ、自分もやってみようかな」っていう人も
きっといるんだろうなって思いました。
とよ田
そういう広がりがあったらうれしいですね。
水彩だって、やってみたら本当に簡単ですよ。
自由に濃淡をつけられて、誰でも雰囲気を出せますから。
マーカーでグラデーションをつけるのには
じつは技術が必要で、けっこう難しいんですよね。
それが、水彩だと筆1本でササッとできる。
これから連載マンガでも、ぼかすところは水彩でやって、
パッキリ塗りたいところはコピックでっていう、
併用ができたらいいなと思っています。
ほぼ日
ほぼ日手帳をきっかけに、仕事の幅が広がったなんて
こちらもうれしいです。次回作、楽しみにしてますね。
いいお話が聞けました。ありがとうございます!
とよ田
いえいえ。ものすごい人がいっぱいいる中で
取り上げていただいて、ありがとうございました!
ナイスなつかいかたコレクションあのひとの「ほぼ日手帳」
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