ほぼ日手帳 2016

ナイスなつかいかたコレクションあのひとの「ほぼ日手帳」016 株式会社ルミネ豊田久美さん予定をぜんぶ書き残すことで、未来の自分を助ける手帳。

ある日、すこし変わったお問い合わせが
ほぼ日宛に届きました。
「じぶんの使っているほぼ日手帳を
 大学の美術展で展示したいのですが、
 大丈夫でしょうか?」
メールをくれたのは、東京学芸大学で
美術教育について学んでいるという田中亮丞さん。
「はい、大丈夫ですよ」とお伝えしつつ、
実際にその展示を見てみたくなったので、
手帳チームでお邪魔してきました。

ナイスなつかいかたコレクションあのひとの「ほぼ日手帳」

こんにちは、ほぼ日の手帳チームの田中です。
(名前がややこしくてすみません)
今回は、すこし珍しい
手帳の使い方の事例をご紹介します。

そもそもは大学生の田中くん(田中亮丞さん)が
「ほぼ日」宛にくれた、こんなメールがきっかけでした。

「じぶんの使った、ふつうのほぼ日手帳を
大学の美術展で展示しようと思っているのですが、
大丈夫でしょうか。
ふだんあったことを書いたり貼ったり、
ただ記録しているだけで、
特別な絵や装飾をしているわけではありません。
ですが、ほぼ日手帳の機能のおかげで
自然に作品として成立した気がします。
この手帳を作ってくださって、ありがとうございました」

メールと合わせてハガキでも、
ていねいな案内をいただきました。

どんな展示かはわからないけれど、
「美術展で、ふつうのほぼ日手帳を展示する」
って、なんだかおもしろそう。
せっかくなので、実際に美術展にお邪魔して、
話を聞かせてもらうことにしました。

おとずれた場所はこちら。
東京学芸大学の秋のお祭り「小金井祭」の
「大美術科博覧会」の会場、芸術館です。

会場には、1階と2階のいくつもの部屋にわたって、
映像、絵画、彫刻、ポスターなどなど
みなさんのさまざまな作品が並んでいました。
そこに、田中くんが展示している
「ふつうのほぼ日手帳」もありました。

こちらが、田中くんの展示している、ほぼ日手帳。
おそらくふだんから田中くんが使っているであろう
ペンと一緒に置いてありました。

こちらが田中くんです。

田中
こんにちは、田中亮丞です。
今日はよろしくお願いします。
ほぼ日
よろしくお願いします。
こちらが、今回展示されている手帳ですね。
田中
はい、「ただ置いただけじゃん」とか
思われてしまいそうですが(笑)。
ほぼ日
いえいえ。
今回はどうして、大学の美術展で、
ほぼ日手帳を展示しようと思ったんでしょう?
田中
もともとのきっかけは、ほぼ日のみなさんが
2年前に渋谷ロフトでおこなっていた
「手で書く手帳展」です。

(2013年9月に開催した「手で書く手帳展」。
たくさんのかたの手帳や
手書きのメモなどを展示させていただき、
おおぜいのかたにご来場いただきました)

ほぼ日
あ、あのとき来てくれてたんですか。
田中
はい、糸井さん、松浦弥太郎さん、
BRUTUSの西田善太さんのトークを
聞きたくて行きました。

(そのときのトーク内容は、こちらで読むことができます。
「手で書くことについてぼくらが考えたこと。」

ほぼ日
わぁ、ありがとうございます。
田中
それであの会場に、松本大洋さんや横尾忠則さんなど
いろんなかたの手帳やメモが、
たくさん展示されていたじゃないですか。
それが、すごくおもしろくて。
「いろんな人がふだん手帳などに書いているメモって、
展示できるくらいおもしろいんだな」
と実感したんです。
ほぼ日
あの展示、ほんとに良かったですよね。
有名無名を問わず、書いた人それぞれの
体温みたいなものまで伝わってきて。
田中
はい、読んでいてとてもたのしくて。
それで、今年の美術展に何を出そうかと思ったときに、
「自分の手帳を展示するのはどうだろう」と、
ほぼ日手帳を買ったんです。
ほぼ日
と、いうことは「展示しよう」と思って、
手帳を使いはじめたんですか。
田中
そうなんです(笑)。
WEEKSは前に使ったことがあったんですけど、
「1日1ページ」のものは、初めてで。
ほぼ日
だけど「展示するから」ということで
毎日絵を描いたり、なにか作品を作るように
使っていたわけではなく、
手帳としてふつうの使い方をされたんですね。
田中
すごくふつうに使ってました。
というのも、ぼくが「手で書く手帳展」で思ったのは
「作品として仕上げてるわけじゃないのにおもしろい
日常の記録のすごさ」だったんです。
だから、美術展にくる人たちにも、
同じ「ふつうの手書きのおもしろさ」を
伝えらえたらと思いました。
ほぼ日
だけど、手帳をそのまま展示するって、
けっこう大胆ですよね。
田中
ふつうに作品を作ることもできたんですが、
今回ぼくが考えたのは
「この展示がすこしでも、
美術を好きになるきっかけになってほしい」
ということでした。
ほぼ日
美術を好きになってもらうきっかけ。
田中
ぼくは大学で美術教育について学んでいるのですが、
年齢が上がるにつれて、美術のことを
好きじゃないと言う子が増えるんです。
あと、子供のときはみんなのびのび書いていたはずなのに
「自分に絵は描けない」と思っている大人は
ずいぶん多いですよね。
ほぼ日
そうですね。
完成度の高い作品を書けないと
ダメだ、みたいな。
田中
そうなんです。
それって、美術の持つ「専門的なイメージ」に
原因がある気がしました。
でも、誰かが手帳に書いてるラクガキとかって、
その完成度に関わらず、おもしろいじゃないですか。
そんなふうに、
「美術的な行為って、じつはみんな普通にやっていて、
それっておもしろいものですよ」
ということを、この展示では
メッセージとして出せたらと思ったんです。
そこまではっきり言葉で伝わらなくてもよくて、
「手帳っておもしろいな」「あ、落書きしたいな」とか
くらいでいいんですけど。
ほぼ日
うん、他の人の手帳を見るおもしろさ、
田中くんの手帳から伝わってきます。
ちなみに、具体的にはどう使ってましたか?
田中
そこは、ほんとに日常の記録ですね。
右上に天気を書いて、下が食べたもの。
あと、体重、起きた時間、寝た時間を
書いたりしています。
チケットなどを貼ってるページもあります。
ほぼ日
ずいぶん毎日しっかり書きこまれてますね。
田中くんの生活やキャラクターが
伝わってくるようで、おもしろいです。
田中
ええ、ただ、最初のほうは
かなり気合いが入ってますけど、
だんだん、何も書いてない日なども
できてきたりもするんですが‥‥。
ほぼ日
あと、この展示パネル、
あれ、「ほぼ日手帳公式ガイドブック」に
出てくださってたんでしたっけ‥‥?
田中
いや、じつはこれは、
「ほぼ日手帳公式ガイドブック」の真似をして、
自分が取材されたという体(てい)で
架空の記事を作ってしまったんです。
なんだか、こういうものがないと、
展示の意図が伝わらないんじゃないかと思って。
ほぼ日
あ、そういうことなんですね。
一から作ってますね。すごい。
田中
元ネタがこれです、とわかるように
ここの写真に
本物のガイドブックを登場させてます。
ほぼ日
なるほど、ほんとだ。
‥‥あとこの展示、びっくりしたんですが、
「書き込み自由」なんですよね。
“ご自由に触って、開いて、書き込んでご覧ください”
って。
田中
そうなんです、美術作品って
触っちゃいけないものとかが多いですけど、
これは「触ってもいい」とか、
「見た人たちの影響で変わっていく」とか
そういう展示にしたいと思いました。
ほぼ日
自分の手帳に書き込まれても、いいんですか?
田中
なんだかそのほうがおもしろくなる気がして。
みんな、意外と書いてくれてるんです。
でも「展示おもしろいです」とかじゃなくて、
「たこ焼き食べる」みたいな落書きとか、
受験生が書いた「絶対受かるぞ!」とか。
誰が書いたか分からないし、
僕の手帳に書いてどうするんだろう、みたいな。
ほぼ日
たしかに(笑)。
田中
「他人の手帳なのに、勝手に使ってる感」が
おもしろくて。
でもそれも、まったく関係のない人やことが
ほぼ日手帳を介して
コミュニケーションが生まれてて、
今回ならではの使い方だな、と思いました。
「プレゼント」と書かれたカードが
突然はさまってたりもしました。
ほぼ日
なんだか手帳のこれまでなかった遊び方、
という感じがします。
もし、これが「ほぼ日手帳」じゃなかったら、
どうだったと思いますか?
たとえば日記帳とか、スケジュール帳だったら。
田中
うーん‥‥展示できたかもしれないですけど、
同じメッセージを伝えるために、
別の工夫が必要だったかもしれません。
たとえば日記帳だったら、負の感情とかも書くから
見せられないものになってた気がするし、
スケジュール帳だったら、記録がすごく単調だから、
ほぼ日手帳ほど展示に耐えるものには
ならなかった気がします。
ほぼ日
ほぼ日手帳は、完全にプライベートでも、
完全にパブリックでもない、というか。
田中
まさにそんな感じがします。
「他人に見られちゃいけない」ことまでは
書かないんだけど、個性は出るんですよね。
ほぼ日
こうやって展示してみて、
田中くんは「ほぼ日手帳」の特徴って
どのあたりにあると思いますか?
田中
「使い方が自由」ということでしょうか。
ほぼ日手帳って使い方の正解がないから、
それぞれにみんな、自分が出やすいと思います。
1日1ページでスペースも広いから、
よけいに個性が出やすいのもあるし。
ほぼ日
たしかに、そうですね。
田中
手帳って「自分が気になったこと」しか
このなかに書いたり貼ったりしないじゃないですか。
だから、ふつうに使うだけでも
「自分の視点が詰まった一冊」になるんですよね。
たとえばぼくはウルトラマンが好きだから
こういうスタンプを押しますけど、
興味がない人なら、押さないし。
そういうことの積み重ねだと思うんです。
ほぼ日
今回は展示のために使いはじめたわけですけど、
使っていてなにか、
ユーザーとして思ったことはありましたか?
田中
使う前は、ガイドブックを見ているだけで
「いろんな使い方があっておもしろいな」
と思っていたくらいだったのですが、
自分が使うと「手帳が育っていくおもしろさ」が
身にしみてわかりました。
濡れてしまって、紙がシワシワになった部分や、
時間が経って色が少し変わったところ、
貼って微妙に厚みが出た部分とか、いいな、って。
手帳ってそういうこともうれしいんだな、と。
ほぼ日
たしかにいまの使いこんだ感じ、
かっこいいです。
田中
あと、おもしろかったのが、
ぼくがこうやって手帳を使ってたら
妹も「来年ほぼ日手帳にする」と
言い出したんです。
ほぼ日
あ、妹さんまで。
田中
ぼくはただ、ふつうに使ってただけですけど、
なにか、おもしろそうに見えたんだと思います。
もちろんぼくも、来年も使いますよ。
ほぼ日
わぁ、ありがとうございます。
今日はおもしろかったです。
田中
いえ、こちらこそ、来てくださって
ありがとうございました!

(田中くん、ありがとうございました)

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