路線図を「読みもの」と おっしゃっていましたけど、 どういうことなんでしょうか。
	実際に外出しないときでも、 ただぼんやりと路線図を広げて 見ているだけで、たのしいんです。 普通は１本で行けるところを どうやって遠回りして 行こうかなぁと想像できますし。
	想像で回る‥‥って 具体的にどんな感じなんでしょう。 おすすめのコースとかありますか？
	そうですね、個人的なあそびなので おすすめといえるか わからないんですけど‥‥いいでしょうか。 まず２つ、隣同士の駅を選びます。 適当に、新宿と代々木にしますね。 山手線でピュッと行けるんですけど、 あえて遠回りで行くんです。 新宿から‥‥そうだな、中央線で 立川まで行って。 そこで降りて多摩モノレールで 高幡不動まで行って‥‥ ‥‥あの、これ私の頭の中は たのしいんですけど こうして口に出して話すと 全然おもしろくないですよね。
	（笑） 大丈夫です。
	ぜひ、続けてください。
	高幡不動から京王線で 下高井戸まで行って、 世田谷線で三軒茶屋まで行って、 田園都市線で渋谷まで‥‥ あ、そうしちゃうと そのまま山手線乗れるから つまんないなぁ。
	つまんないんですか（笑）。
	はい。なので渋谷から 田園都市線であざみ野に行って、 乗り換えてブルーラインで 横浜まで行って、 最後は東海道線で品川まで行って、 山手線で代々木に戻る‥‥ というような感じでしょうか。 いまは私鉄も含めたんですけど、 JRにしか乗らない「JR縛り」のルールを 勝手につくることもあるし、 延々と考えるのが好きです。
	はぁ〜、すごい！ こういうのを 妄想されているんですか？
	はい、たのしいですよ。
	そうそう、この前 「CREA」を読んでいたら、 市川さんがつくられた 「妄想路線図」が載っていたので びっくりしたんですよ。 上に架空の路線図が描いてあって、 下には、その路線図と つじつまのあったダイヤがあって。
▲「CREA ５月号」に掲載された市川紗椰さんの「妄想路線図」。
	あぁ！　それ、 ダイヤが完全には 一致してないから恥ずかしいです。 本職のスジ屋さん （ダイヤを組み立てる人）から見たら 矛盾だらけで‥‥。
	それでもすごいですよ。
	ダイヤを組むなんて‥‥ むずかしそう。
	ええ、本当にむずかしいです。 路線図を描くだけなら、 ただのお絵描きだから 誰でもできるんですけどね。
	路線図は、どういうふうに 描きはじめるんですか？
	だいたい、まずは線を描きはじめます。 路線が交差するところが うまくいくように 多少は最初から構成を 考えておく必要がありますね。 もともと存在する路線をベースにして 「ここに線があったらいいな」 というふうに足していくこともあります。 実在する路線を使うときは、 線路幅の比率を実在のものと合わせるのが ポイントなんですよ。 この駅は乗り入れ可能かどうかっていうのを 全部把握したうえで 描くのがおもしろいんです。
	へぇ〜〜！
	よく見ると 「カニクリーム路線」とか 名前が書いてあって、かわいいですね。
	それ、目の前にあるものを 駅名にしただけなので こだわりゼロなんです。 食べものとか ゲームのキャラを路線名にしただけで‥‥。 何でもいいんですよ、路線名は。 とにかく早く、早く‥‥
	早く「スジ」に行きたい（笑）？
	はい。 早くスジに行きたい。 時刻表をつくりたい。
	（笑）
	それが「妄想路線図」の たのしいところというか 醍醐味なんです。
	すごく専門的な知識がいると 思うんですけど、 本で調べられたんですか？
	そうですね。 本で見て描き方はチェックしています。 だけど、やっぱりむずかしい！ 乗り換えを便利にしすぎると、逆に 「あ、これ、事故になりかねないな」とか。 本職の方たちが どのくらいすごいのかが改めてわかります。
	そうですね。 弊社では以前、実際に鉄道の ダイヤを組まれている JR東日本の三井倉昭夫さんという方に 登場していただいたことがあるんですよ。
	（記事を読んで） あぁ、すごい。 これは大変な仕事です。 人の命が掛かっていますから。 みんな、この三井倉さんに感謝ですよね。
	でも、それをこうやって 妄想でつくられている 市川さんも相当すごいです。
	それも、かなり本格的に！
	いやいやいや、 このダイヤ通りに走ったら、 苦情ばっかりですよ、たぶん。 お客さんをすごく待たせたかと思えば、 電車が到着した瞬間に出ちゃったりします（笑）。
	（笑）
	（つづきます）

2014-05-27-TUE