ガラス作家の高橋禎彦さん──。
スタジオグラス(1970年代からおこった動きで、
大工場ではなく、個人や少人数での工房制作を中心にした
作家性の高いガラス制作)の第一人者です。
高橋さんがうみだす宙吹きのガラス作品は、
すぐれた技術にオリジナルのかたちで
東京国立近代美術館工芸館や北海道近代美術館、
英国のヴィクトリア&アルバート博物館、
ドイツのクンストパラスト美術館、
アメリカのコーニングガラス美術館、
ほかにも横浜、スイス、デンマーク、
オーストラリアのミュージアムが
パーマネント・コレクションにしているほどです。
と、そんなふうに書くと、
いかにもすごい大先生のようですが
(そしてじっさい、すごいんですけれど)、
お目にかかってみると高橋さんはうんと気さくなかた。
長髪にデニムにTシャツに革ジャン、
ロックが好きで料理が好き、
食べるのも飲むのも大好きで、
仲間からの信頼が厚く、
好奇心の赴くままに世界中を飛び回るすがたが、
じつにチャーミングです。
誰ともフラットに接するので、
学生たちからもとても慕われています。
高橋さんのクラスで学ぶ生徒たちはしあわせだなぁ。
(と、担当・武井は思っております。)
そしてアトリエでは時間を忘れてガラスと対峙。
アーティスト? ガラス吹き職人?
そんな肩書きどっちでもいいよ、と言わんばかりに、
アートと実用品の境界線を飛び越えて制作を続けています。
「ほぼ日」ではこれまで、高橋さんのつくる、
実用品としての作品を紹介してきました。
先日(2016年3月)のTOBICHI②では、
プラハのshinoさんとのコラボ作品やランプシェード、
そしてたくさんの「コップ」がならび、
たくさんのかたに来場いただきました。
そう、コップです。高橋さんといえば、コップ。
高橋さんのうつわのなかでもとくに人気があり、
愛用者も多いアイテムです。
ガラスという素材のうつくしさと、
遠心力、重力、表面張力と、技術の融合した
宙吹き作品のおもしろさ、ダイナミズムを、
きがるに、身近に感じられること。
ガラスなのにやわらかい印象の手触りや、
意外なほどのかるさ、口当たりのなめらかさ、
そしてなにより飲み物が(水も、お酒も)
おいしくなってしまうという不思議さ。
これは、じっさいに使っていただくのが
いちばんわかりやすいだろうと、
TOBICHI②では高橋さんのコップを、
ワインやお水で体験できるコーナーをつくりました。
「ほんとだ、たしかに味がかわる!」
「いままで飲んでいたグラスってなんだったんだろう」
「手に吸い付くようで、気持ちいいですね」
そんなみなさんの反応を見ていると、
ますます、もっとおおぜいのかたに
高橋禎彦さんのガラスのコップを
知っていただきたいなあ、と思うのです。
そこで(長くなりました)、今回の販売です。
高橋さんにお願いして、代表的なコップを5種類、
つくっていただくことになりました。
できる数に限りがありますから、上限はありますけれど、
なるべくほしいかたのところに届くように、
受注販売とさせていただきます。
そして、いっしょに、ガラスの箸置きもならびます。
こちらもTOBICHI②で好評だった、
アルファベットのシリーズです。
¥5,400(税込・配送手数料別)
サイズ 高さ:約10cm、直径:約8.5cm
重さ 約130g
手づくりのため、かたち、重さ、
そしてサイズは±5mmていどの個体差があります。
こぶりのワイングラスから、
脚をとったようなかたち。
ぜんたいにころんとまるく、
底はやや厚めで、安定感があります。
万能選手で、お酒はもちろん、
お水も牛乳もジュースも、
つめたいお茶にも合いますよ。
ワイン用として使われるかたも。
¥5,400(税込・配送手数料別)
サイズ 高さ:約9.5cm、直径:約8.5cm
重さ 約80g
手づくりのため、かたち、重さ、
そしてサイズは±5mmていどの個体差があります。
高橋さんのコップ史において
「いちばん最初にうまれたコップ」です。
うんとシンプルで、宙吹きならではの
やわらかなかたちをしています。
厚みは、まるコップとおなじなのですが、
底までうすいぶん、全体が軽くなっています。
何にでも合いますけれど、
まるコップがワインなら、
こちらはビールの気分かも?
¥5,400(税込・配送手数料別)
サイズ 高さ:約9.5cm、直径:約8.5cm
重さ 約80g
手づくりのため、かたち、重さ、
そしてサイズは±5mmていどの個体差があります。
吹いたガラスをギザギザの型(モールド)に入れて、
ねじってから、もういちど宙吹きでかたちを整えます。
ねじり具合は、1点ずつことなります。
テーブルに置いたときの影もきれいで、
底はうずまき状になっています。
お酒を飲むのがますます楽しい時間になりそう。
もちろん、お水やジュースなど、どんな場面にも。
¥5,400(税込・配送手数料別)
サイズ 高さ:約9.5cm、直径:約8.5cm
重さ 約100g
手づくりのため、かたち、重さ、
そしてサイズは±5mmていどの個体差があります。
つくる工程の途中で他のガラスを巻き付け、
また膨らませてかたちを整えます。
つまり、かなり手のかかるつくりのコップ。
1点ずつ、巻いたガラスの幅がことなりますが、
巻き付けたガラスが
ちょうど指にしっくりとなじむ手触りで、
「酔っぱらったときに手から落としにくい」
と、これはお酒好きのお客さんからの評判です。
¥5,400(税込・配送手数料別)
サイズ 高さ:約9.5cm、直径:約8.5cm
重さ 約80g
手づくりのため、かたち、重さ、
そしてサイズは±5mmていどの個体差があります。
ボディの模様と、
リムが波打つかたちが特徴的なコップ。
モールドコップを、さらにもういちど
逆方向にねじることで、こんなふうに、
いちごのようなかわいらしいかたちがうまれます。
これは、高橋さんの技術と、
ガラスの表面張力や遠心力、重力のなせるわざ。
ドリンク類以外にも、
ヨーグルトやアイスクリームなどにも合いますよ。
1文字¥1,080 (税込・配送手数料別)
サイズ 縦横幅:4.5×4.5cm以内
厚さ:約1.5cm
重さ 約40~60g
※文字によって異なります。
今回の販売は受注方式。
お申し込みいただいたぶんを制作、
7月下旬に発送する予定です。
「まるコップ」「モールドコップ」「ぐるぐるコップ」は各200個、
「うすコップ」と「うるうるコップ」は各100個が上限数です。
アルファベットは1文字50個の予定です。
2014年に高橋さんとつくったワインのコップ。
今回のTOBICHI②でも大好評でした。
こちらは、1点1点のかたちが、かなりことなりますから、
「お気に入りの1点」を選んでいただけるよう、
あらかじめ高橋さんに制作を依頼しています。
大中小の3タイプを各100個ずつ、
できあがるのは秋ごろの予定です。
9月オープンを予定している販売ページでは、
1点ずつ画像でご紹介し、好きなものを選んで
お求めいただけるようにと考えています。
ぼくのコップは一個一個、手で作っています。
だいたいの大きさはねらっていますが、
型で作るように均一にはできません。
ガラスの素材はバリウムが含まれたソーダガラスです。
つやとハリが出るようにバリウムがはいっています。
その原料に、毎日制作の時に出る
切り端や竿についたガラスなどを混ぜて溶かします。
ずっとそれを繰り返すので鉄分が混ざっていって、
若干緑色になっています。
その具合もそのときでいろいろです。
大企業の工場などでは、鉄が混ざらないように、
竿についたガラスは廃棄したり、
色を溶かす時だけに使います。
ぼくのところでは、捨てるガラスが多くならないように、
なるべく溶かして使います。
その緑色もきれいだと思います。
ガラスの表面にたまに、脈理とよばれる筋のような、
または点のような跡が見られます。
これは完全に混ざりきっていない部分が、
薄く吹くことによって現れてきたものです。
これも大企業的には廃棄の対象ですが、
現れ方によっては、雰囲気とも景色とも
いえるかなと思っていて、
ぼくはそんなにきらいじゃないです。
小さな泡についても同様です。
あまりにも主張していると思うものは間引いていますが、
もし気になるようでしたらお取り替えいたします。
ガラスのコップは、窯から出てきたときが
いちばん無垢できれいなんです。
そのあと、手でさわるだけで、油分がついてきます。
しばらく戸棚の中においてあると、
特に、空気中の水蒸気がある場合、
表面が曇ってくることがあります。
是非洗って拭いて、ぴかぴかにしてあげてください。
ぴかぴかなら、いつまでもテーブルに登場するはずです。
ウチでは日常的には、激落ちくん、
などの商品名で売られている
白い、洗剤のいらないスポンジを愛用しています。
ぬるま湯でこれを使って一回こするだけで、
油分も完全にとれてぶりっとした感触になります。
全部の表面がこすられていればすぐにきれいになります。
布巾などの上に伏せておけば、それだけでもオッケーです。
ガラスを拭くための布、も売られています。
これは、めがね拭きの布を大きくしたような材質で、
ちょっと湿らせて拭くだけでも抜群にきれいになります。
ちなみに、通常の木綿の布巾などで拭くと、
かえって糸埃がついてきれいになりにくいです。
食洗機で洗っている方もいるようです。
機種によっては手で洗うよりきれいになると
言っている方もいました。
乾燥するときに水滴の跡がついてしまうとの
報告もありますので、気にする方は注意してください。
花瓶として、水をいれたままにしていると、
蒸発していくときに、ガラスの内側に
カルシウムのような白いものが付着して、
とれなくなります。ご注意ください。
このガラスは耐熱ガラスではありません。
経験的には、やかんの熱いお湯を入れると、
やっぱり割れます。
お湯で割れる、のは熱のショックです。
ガラスの温度とお湯の温度差、の問題です。
もともと作ったときは熱いものなので、
ゆっくり熱くするのは平気なんです。
焼酎を入れてあるところにそっと注ぐくらいは大丈夫です。
お酒を入れてレンジでチン、も経験的には大丈夫です。
紅茶のポットから淹れる、のは割れた場合もあります。
以上、とても長くなりましたが、
末永くかわいがってやってくださいね。
2016年3月にTOBICHI②でひらかれた、高橋禎彦さんとプラハのshinoさんによる、3日間だけの二人展です。高橋さんのアートピースをチャームに使ったチョーカーなどのコラボ作品のほか、高橋さんは色ガラスを使ったランプシェード、ガラスのアルファベット、そしてたくさんのコップをならべました。
東京国立近代美術館工芸館で大規模なガラスのアート作品をあつめた個展を開いた年、「コップ屋タカハシヨシヒコ」として、もうひとつの小さな個展を開いた高橋さん。ここでは、高橋さんがガラスを志した経緯や、製作現場をくわしくレポートしました。ふるい仲間であるshinoさんによる「なぜ、高橋さんのコップは、飲み物をおいしくするのか」についての考察も。
脚のないワイングラスである「ワインのコップ」が初登場となった、3年ぶりの「コップ屋」展。その開発には、作家の三浦しをんさんの協力がありました。このコンテンツは、ワインが好きな仲間のちからを借りて、高橋さんがワインのコップを完成させるまでのドキュメンタリーです。9月発売のワインのコップのこと、ぜひこのコンテンツで予習しておいてくださいね!
2012年、「はじまりを、はじめよう」を合言葉にした「ほぼ日」のプロジェクト「BEGINNING」。そのアイテムのひとつとして、高橋さんに「はじまりのコップ。」と名付けた、ちょっとぽってりと厚みのあるコップをつくってもらいました。ロゴをガラスに型押しするという、高橋さんにとっても「はじめて」の挑戦となった仕事です。コンテンツでは動画もご覧頂けます。