ほぼ日のいい扇子2014 - ほぼ日刊イトイ新聞

「ほぼ日のいい扇子2014」ができるまでのことを、
扇子チームで振り返りました。
メンバーは

の４人。
思い入れがあふれ、長い読みものになりました。
お時間があるときにお読みください。
デザインしてくださった作家さんたちや、
前向きに取り組んでくださった
扇子メーカーさんの想いが伝わるといいな、と思います。


	（資料を読みつつ） ‥‥あらためて、ありがたいですね。
	（資料を読みつつ）はい、すでに目を通したアンケートですが、みなさんすごくていねいに答えてくださって。
	（資料を読みつつ）「扇子についてのアンケート」、やってよかったですね。
	（写真を撮りつつ）よかったですー。
	そもそも、なぜアンケートを実施したのか、おぼえてますか？
	もちろん。
	実際に使ってるかたの声をちゃんと聞きたかった。
	みんなが使ってるシーンのイメージを持ちたかった。
	1000を超える方々がアンケートに参加してくれて、まずはそれにびっくりしました。
	ありがたいことです。このアンケート、ぼくの印象としては、「おしゃれ」と書かれた解答が多かったような‥‥？
	そうそう、多かった。「ほぼ日の扇子のいいところは？」「周りからの評判は？」という質問に対して「おしゃれ」という解答。
	「デザインがいい」っていうのも。
	「自慢できます」とか、「誇らしい気持ちに」っていう感想も。
	ありがたいですよね。そう思ってもらえたのはやっぱり、他にはないデザインだったからだと思うんです。つまり、作家さんたちと、ほぼ日の扇子を作ってくれている京都の『山二』さんのおかげだなぁ、と。
	ほんと、そうだわ。
	このアンケート結果は、『山二』さんにも読んでいただきました。
	あ、そうなんだ。
	『山二』さん、うれしいですよね。
	たぶん、よろこんでくださったと思います。
	３年前、はじめてご一緒したときと、『山二』さんとの関係はだいぶ変わった？
	変わりました、とても。４年目ということもありますが、今回の、このアンケートは大きかったと思います。これを読んだことで「他にない扇子を作ることの価値」をすごく共有してくださって、わたしたちの難しい注文にも応えようとより頑張ってくださるようになった気がします。
	‥‥すばらしい。

	その一方で、「ほぼ日の扇子を持っていない」というかたのアンケートも、参考になりました。
	はい。
	「使うのが照れくさい」という答えもありましたよね。「扇子は使うのがちょっと恥ずかしいです」
	正直に答えていただいて。
	その恥ずかしさ、 TPOによっては、たしかにありますよね。
	ある、ある。
	あと、「普段、扇子を使うシーンは？」っていう質問への答えも、おもしろかったです。
	「待ってる場面」が多かったでしょ。
	そうそうそう！
	駅のホーム、バス停、信号待ちの横断歩道、コンサートの開演待ちのとき扇子を使う‥‥。
	そこがポイントで、使うシーンはやっぱり、「移動中」、「外（そと）」なんですよね。
	そうですね。
	で、移動中に使うっていうことは、必然的に「人に見られる」わけで‥‥。そうです‥‥恥ずかしくない扇子が、いい。
	うん。おしゃれなら、かわいければ、人前で出せる。
	出せるどころか、どんどん出してほしい。
	もっと扇子を持ち歩いてほしい！
	それを本気で伝えよう！　というのが、 2014年の扇子の最初のテーマでした。
	ちなみに、このアンケートを実施した９月には、すでに翌年の扇子デザインを各作家さんにお願いしていました。
	８月末にはご依頼しています。 10月にデザインを完成してないといけないので。
	つまり扇子というものは、夏の真っ盛りにもう、翌年のデザインをはじめているのです。
	というわけで、ここからはもう具体的にいきます。 2014年のデザインをどうやって決めていったか、ひとつずつ振り返りましょう。まずは、ひびのこづえさんのデザインから。

	「くもの宝石」です。
	ひびのさんは「ほぼ日のいい扇子」を企画の元年から手がけてくださっています。
	今年で４回目ですね。
	2014年もすばらしい扇子ができたと思います。
	作家さんとのやりとりは主に、ちなちゃん（コウノの名前）の役割りなんだけど、ひびのさんとのお仕事はどうでしたか？
	毎回、すごく勉強になります。とくにひびのさんは、骨の形と骨の色に関して、毎年、細かくご指示をくださるんです。扇子の竹は、染められるんですが、かなり特殊な色をご指定されます。
	特殊というのは？
	まず、染められない色です。

	ああーー。
	最初の年、「山二」さんに色指定を出したときは、「こんなん無理ですわ」というお返事で。
	ほえ～～～。
	でもひびのさんは、「多少は色が転んでもいいから、　その色に向かって全力でやってみてほしい」と。
	「色がころぶ」というのは、ちょっと違う色になってしまうことです。
	で、全力でやってくださった仕上がりを見て、「あ、この色でも案外いいじゃない？」と。
	こづえさんのその感じ、ハラマキのときといっしょです。「再現できない細かい柄ということはわかってます。　柄がつぶれちゃっても構わないので、　まずはできる限りやってみてください」という。
	ひびのさんは、自分がデザインしたものがすこし変化することをたのしんでらっしゃるような。
	そう、そうなんです。
	その「できる限りやってみる」というあんばいが、山二さんと、ひびのさんのあいだで、今年はツーカーになってきたんですよ。
	へええーーー。

	あとはそう、今回の扇子は全体が「くもの巣」という見立てなので、「扇子の骨はできるだけ細く、華奢に」というご指定がありました。
	それはすごく、おっしゃってましたよね。
	強度との兼ね合いで、できる限り細く。
	なるほど。 ‥‥あとはその、ビーズの飾り。ぼくらは扇子につける飾りを「チャーム」と呼んでますが、そのチャームはすごいですね。

	かわいい‥‥。
	かわいいでしょお。扇子の中に、くもはいなくて、下に糸でぶらさがってるイメージなんです。
	かわいいけど‥‥つくるのはたいへん。
	ええ。ぜんぶ手作りなので。
	そうでした。
	名作、ですよね。なかなか、他では実現できないことだと思います。
	あとひとつ、今回、個人的にすごくうれしかったことを。去年の５月くらいの段階で、こちらからご依頼をする前に、ひびのさんから、「次の扇子を作るときは、　こういう方法で色確認をしませんか」というご連絡をいただいたんです。
	おおー、前向きに考えてくださっていた。
	そうなんです！それがすごくうれしくて‥‥。
	ありがたいですね。もう‥‥さっきからずっと、感謝しかないです。
	そうですね、ほんとにそうですね。
	うん。 ‥‥感謝しながら進めましょう。こちらの扇子、「APPARE」をデザインしてくださったのは‥‥

	鈴木啓太さん！
	今回のテーマ、「ジャパネスク」をストレートに表わしてます。
	鈴木啓太さんとは、メールで知り合ったんですよね。
	そう。鈴木さんが「ほぼ日」に「何かいっしょに」というメールをくださったのが最初でした。
	「富士山グラス」とか「虹色風鈴」を知ってたので、あれをデザインした人だーー！　って。
	さっそくお会いして、扇子のデザインをお願いしたのが去年の８月。
	すぐに最初のアイデアをプレゼンテーションしてくださって。
	かっこよかったー。
	いちばん最初のアイデアも富士山がモチーフだったんです。それが、びっくりするようなデザインで。
	あれは画期的でした。
	ただ、画期的すぎて、作ることが不可能だったんです。
	さすがの「山二」さんでも無理だった。
	そしたら鈴木さん、「製造の現場を見ておきたい」と。
	わざわざ京都まで行ってくださったんですよね。
	最初にやりたかったデザインが「技術的に無理です」となったことがやっぱり残念だったようで、次のデザインを考えるにあたっては、どこまでができることなのか、作り方の仕組みを知っておきたい、と。それによって自分のデザインの幅も広がるだろう、と。
	‥‥また感謝しかないです。
	この扇子、扇子の骨と骨のあいだから、向こう側が見えませんよね。

	はい。びっしり扇骨でふさがっています。
	これは、紙扇子ではほとんど例のないことなんです。でも、工程を見ていた鈴木さんは、「たぶんできるはずだ」と。そしたら山二さんも、「前例はないんですが技術的にはできますねぇ‥‥ 　やってみましょう」と。
	しびれる話ですね。
	そのほかにも細かい部分のチューニングで何度もやりとりをさせていただいて完成した、「APPARE」という扇子です。
	鈴木啓太さんも「山二」さんも、どちらも「あっぱれ」なお仕事ですよね。あと、ちなもあっぱれ。
	え！？　いやいや、私はそんな‥‥。それよりも、ふくろ。扇子のふくろの話をしましょう！

	「扇子のトートバッグ」。これは今回、最も試行錯誤を繰り返したアイテムでした。
	話し合いましたよね、とことん。
	そうなんです。鈴木啓太さんとの扇子アイテムは、「ほぼ日」とアイデアのやりとりをしながらいっしょにつくったものでした。他の作家さんとも、もちろんやりとりはあるんですが、鈴木さんとは、なんていうんでしょう‥‥ ほんとにちからを合わせて考えましたよね。
	新鮮な作り方でした。
▲鈴木さんの事務所で打ち合わせ中。煮詰まったりもしたけれど。 ▲様々なパターンを試した、試作の山‥‥。
	たどりついたのが、この扇子ケース。

	「もっと扇子を持ち歩いてほしい！」というメッセージをみごとにカタチに落としこんでくださいました。
	ああーー、「持ち歩く感」がすごくでてるー。
	ね。なにしろ、かわいいし。続けてまいりましょう。
	こちらも、初めて「ほぼ日」とご一緒した、ひがしちかさんの扇子で、「Swan」という名前です。

	ひがしちかさんへのインタビューは、とても好評でしたね。
	そう。このお話を聞いて勇気が出るかたが世の中にたくさんいらっしゃるだろうと思って急きょ掲載することにしました。それはそれといたしまして、「Swan」のデザインの進行はどんな具合でした？
	最初、まずはこういう絵をいただきました。

	刺繍の指示書きが入ってます。
	「Swan」は刺繍で柄が描かれた扇子なので、まずはこれを刺繍屋さんに渡して、機械刺繍をしたんですが‥‥だめで。
	だめだった‥‥。
	やはり絵だと伝わらないのかもと、ひがしさんに元の刺繍を作っていただいて、もう１回、入稿データとして準備しました。とはいえ機械刺繍には限界を感じていて‥‥。
	限界を感じて、どうしたんでしょう。
	オール手刺繍にしてしまうと、とんでもない価格になってしまうし‥‥。「山二」さんが、どうやったらひがしさんが思うようにできるかっていうのを頭を絞って考えてくださったんです。
	はあー、追求してくださった。
	そうなんです。で、刺繍屋さんをもう一度さがして、その刺繍屋さんとの相談で、「外側の輪郭だけ機械で　内側の羽の表現は手刺繍でいこう」ということになりました。
	‥‥それって、ほぼ手刺繍ですよね。
	はい。なので、他の扇子よりもどうしても製作に時間がかかるんです。
▲試作の刺繍をチェックするひがしちかさん。
	あとほら、ここの「Swan」文字。ぼくはこれ、すごく好きです。

	これ、機械？　手彫り？
	機械ですね。レーザーで。
	レーザー！　‥‥なんかすごい。
	骨のところも女性的で‥‥。

	いいでしょ～？
	ここも、鳥の羽をイメージしているような。
	そうなんです、すてきなんです。

	うっとりしてるちなちゃんが一瞬で目を覚ますような、次の扇子をご紹介しましょう。秋山具義さんの「にゃんす」です。

	インパクトあるわー。
	あなたのそのお洋服もね。
	そう？
	アッキーさん（秋山具義さんの愛称）に扇子のデザインをお願いして、このデザインがやってきて‥‥
	まあ、みんなで唖然としましたよね。
	ビックリ。
	大の猫好きで知られるゆーないとさんでさえ‥‥
	「アッキーさん、マジか？」と。
	マジか？（笑）
	「お洋服のような扇子をお願いします」って言ったのに。
	お伝えしました。
	今回のテーマは、「もっと扇子を持ち歩いてほしい！」なのに。
	そのあたりもお伝えしたと思います。
	その上で、これがドーンとやってきて。

	すごいなぁ（笑）。
	アッキーさん、さすがだな、と。
	そうそう、さすがですよね。つまりまぁ、さっき話した、「外で使うのがちょっと恥ずかしい」っていうことをなくすどころか、逆に「これを見て！」というデザインに。でも、この振り方はアリなんですよね。
	アリ、アリ。
	「目立たない」だけを目標にしちゃったら、ひたすら地味なものを作っていくっていうことになるわけですからね。
	それは退屈ですね。
	ちなちゃん、「にゃんす」の製作で難しかったところは？
	それは、耳です。
	あー、なるほど。
	まずはこの、コシとハリを出すための素材選びですね。コシのある布で裁ちっぱなしのって、フェルトくらいしかないんですよ。でもアッキーさんは、「フェルトじゃなくて、　扇子の布と似たような感じの、薄い布です」と。
	うーーん‥‥悩みそう。
	悩みました。普通の薄い布だと、耳がタラーンって垂れてきちゃうんですよ。垂れないようにするには、耳のサイズをちいさくするしかない。
▲試作品で耳のサイズを検討するアッキーさん。
	なるほどねー、ぎりぎり垂れないサイズに。
	なおかつ、アッキーさんと相談しながら決めたんですけど、この、耳の真ん中に、ちょっとくぼみをつけると、垂れにくくなるんじゃないかと。

	くぼみ、ありますね。ネクタイの、えくぼみたいな感じで。
	あとは、ズボンのタックみたいな。
	はい、はい、はい。なるほどなーーー。 ‥‥これ、耳をずっと触っちゃうね。

	わかる（笑）。
	愛着が、ぐんぐんわいてきた（笑）。
	急に（笑）。
	やっぱりこれ、アリですよね。いけますよ、普段使い。ゆーないとさん、ちょっとやってみて。
	へ？
	なんかこう、「ニャンス」をあおぎながら、さっそうと街を歩いている感じ。
	‥‥ええと‥‥（立ち上がる）‥‥こう？

	そうそう！
一同	（拍手）
	アリですね、普段使いにぜんぜんアリ。
	すばらしい。では次にまいりましょう。すっかりお馴染みのシリーズになりました。デザーティック・平武朗さんの扇子、「The Other Side of Marine」です。

	平さんは、３年目の扇子ですが、名前がぜんぶ同じですよね。「The Other Side of Marine」。
	ずっと一貫して、マリン。
	平さんと何度もやりとりを重ねるのは、もう恒例になりましたが、直接の担当のチナちゃん、今年はどうでした？
	まずは、布探しでした。
	布探し。
	「白と白でボーダーにしたい」というご希望があったので、探しました。白と白のストライプって、シャツの生地くらいしかないんです。しかも、そんなに種類はない。平さんのイメージにぴったりなのがなかなかなくて、いくつもサンプルを取り寄せて、ようやく「これかな」と言っていただいたのが、この生地でした。

	これに決まるまでに、何日くらいかかったんですか？
	ええと‥‥２、３ヶ月。
	ああ‥‥そのくらいかかるんですね。
	他の作業も平行してやってたので。
	平行して、たとえば扇子の骨も作らないといけない。
	ええ。その骨がまた、今回はたいへんで‥‥。
	３色に染め分けられてますね。
	しかも、よく見てください。型が２種類あるんです。

	‥‥あー、ほんとだ。丸が多いのと少ないのと、２種類。
	すごい‥‥。
	これも、レーザーで？
	これだけ細かい柄なので、たぶんレーザーだと。
	はあ～。
	この、染めもすごいですよね。青、水色、白にぱきっと染めてて。
	これ、竹に４度塗りくらいしてるんです。
	はあ～～。
	そして、くじらのチャーム。
	かわいい、かわいい。

	クジラが海水を吹き出しているっていう表現なんですよね。
	うん。躍動感。
	爽快感とかリズム感も感じます。ナイスアイデアですよね。
	去年の平さんの扇子にも焼き物のチャームがついていたんですが、今年も引き続き、長崎の波佐見焼（はさみやき）の工房で、１個１個つくっていただいたものです。
	オリジナルで。これはマッコウですね。マッコウクジラ。
	マッコウちゃん。
	クジラの絵は、平さんが描きました。
▲試作品をチェックする平さん。
	爽やかな扇子ですね。
	ほんと、爽やか。
	青空の中の雲のような、波しぶきの中の白のような。
	薄い生地に、波しぶきが透けて見える感じが、おしゃれで素敵です。
	夏に持ちたくなります。
	そうだ、もうひとつチャームポイントが。平さん、「ここのところが、　波っぽく見えるようにしたかった」とおっしゃってました。

	ここって？
	どこ？
	扇子をとじている要（かなめ）の下の部分。開いたとき、ここにウェーブができるように、要から下をシュッと短めにしたんです。
	はあー、それ、聞いておいてよかった。いやぁ、細かい工夫ですねぇ。
	きれーい。
	そう、きれいなんです。とてもきれいな扇子だと思います。
	さて、次へとまいりましょう。ほぼ日オリジナル、「よる花火」と‥‥

	「ひる花火」。

	「ほぼ日」のデザイナー、とやまちゃんの作品です。
	‥‥うれしいです。すごくうれしい。
	なぜ、花火をテーマにしたんですか？
	なんか、めでたいっていう方向じゃないカラフルさというか、夏っぽい色合いをベースに‥‥。なんかこう、ただ涼しげとかじゃなくて、元気な色でアクセント的になる感じで。うまく言葉で言えてないですけど‥‥。
	大丈夫です。言えてます。
	「ほぼ日」のコンテンツで、長岡の花火を見て、ああいう大きい花火、見たことなかったんで、世の中にこんなきれいなものがあるんだーと思って、こういう花火図鑑を開いたら、すごくきれいで、魅かれて。

	（図鑑を開く）ああ‥‥きれいですね。
	花火と扇子って、イメージの相性もいいし。
	きれーだー。

	打ち上げられた花火が一直線に上がって、パーッて開く感じが、ちょっと扇子に似てるなぁと思って。
	自分でやってみて。ヒュルヒュルヒュル～と上がった花火が‥‥
	パーーン！（笑）

全員	やんややんやー（拍手）。
	そのリボンが、打ち上げられた花火の軌跡のようになって。
	そうなんです。
	ちょっとこれ、名作じゃないでしょうか。
	そうですか？！
	素直に、そう思います。
	うれしい！
	ちなみにこの扇子は、こんなにカラフルに骨を染めわけていますが、これも「山二」さんの努力のたまものなんです。

	そうですよね、「山二」さんのおかげだ‥‥。
	そして、最後にこちらをご紹介です。「雨ニモマケズ」。井上有一さんの書を扇子にしたものです。

	「ほぼ日のいい扇子」のシンボルですよね。
	最初からあるデザインです。
	これはもう、いつものように作っていただいてということでしょうか。
	いえ、それが、今年はマイナーチェンジがされているんです。ここなんですけど。
	え？　ここ？　要の下のところ？

	そうです。ここの部分を大顔（おおがお）というかたちに変えたのだそうです。
	大顔？
	この部分、最初はもうちょっと細かったんです。
	デザーティックの扇子では、短くシュッとさせた場所ですよね？
	そうです。この扇子では逆にそこを幅の大きな「大顔」に変えたんです。
	それは、なぜ？
	「山二」の専務さんが、「そのほうが品がいいですから」と。
	ほおーーーー。
	「格調の高いものになります」と。
	提案をしてくださったんですね‥‥。ありがたいです。本気に取り組んでいただいて。手のかかる扇子を、こんなに作っていただいているのに、さらにそこまでしていただいて‥‥。
	ほんとうに、凝った扇子を作っていただきました。他ではまずできないことをやっていただいたと。
	‥‥それは繰り返しますが、アンケートのおかげですよね。みなさんの声が、今回のラインナップを実現に導いてくれたんです。手間を厭わなくさせてくれたというか‥‥。
	そうですね、ほんとうに、そうですよね‥‥。

	というわけで、けっこう長い時間、扇子のラインナップについて話してきましたが、まだあります！
	まだある！
	作家さんとやりとりをしながら、様々な準備を進める中で、もうひとつ、大きな山がありました。
	ありましたねぇ。
	扇子のデザインも決まって、そういうページ作りをしようと考えていたある日。
	あれはたしか去年の11月末‥‥。
	さんに報告にいったんですよね、「来年の扇子は、　夏を涼しく。ちいさな風を持ち歩いてください。　というテーマでやります」と。
	はい。
	そしたらイトイさん、「正直で悪くはないんだけど、　そのテーマは古いのかもしれない」と。
	「夏を涼しくは、　そうなんだけどちょっと当たり前すぎる」
	で、しばし考えたイトイさんが、膝をポンと叩いて、「ジャパネスク」と。
	一瞬、ぽかんとしましたよね。
	「扇子っていうニッポンのものを、　もっと客観的に見せる工夫をするといい。　たとえば‥‥ 　自分が外国人で、日本に遊びに来たなら、　どんな扇子を選びますか？　みたいな。　そういう感覚でお届けすると、おもしろいでしょ」
	ああーー！　って思いました。
	思った思った。そこからはもう、チームの中でもパタパタパタっとイメージが整ったよね。
	撮影のモデルさんは、外国の女の子がいいとか。
	外国から遊びにきたその子が、日本の女の子とふたりで海の近くに小旅行に出かけるイメージ。
	そのイメージで逗子を候補地にして、ロケハンに行って‥‥
	イメージにぴったりのモデルさんを見つけて‥‥
	カメラマンさん、スタイリストさん、メイクさん、などなど、スタッフの予定を調整して‥‥
	いざ、ロケ撮影！
▲かわいい物語が浮かび上がる、一連の写真が撮れました。
	商品の「物撮り」もいちにちかけてやりました。
▲商品の詳細を見せる写真は「ほぼ日」のスタジオで。
	あとは商品のたのしさや魅力を伝える、コンテンツ作りです。
	ジャパネスクというテーマなので、「センス交換！？」という企画を思いついて、デンマーク大使館に行ったり、様々な国の学生さんに扇子の話をしたりしました。
	その企画はこちらでお読みいただけます。
	ひとりひとりの作家さんに会って、デザインについてのお話をうかがって‥‥
	ひたすら原稿を書き‥‥
	ひたすらレイアウトをし‥‥
	「ほぼ日ストア」と販売のシステムをしっかり確認して‥‥
	みんなでテストをして‥‥
	販売開始の日をむかえる、というわけです。 ‥‥なんか、いつもやってる仕事を並べてしゃべっちゃった。これ、ぜんぶ書いたとしたら、長ーい読みものになっちゃうね。
	はい（笑）。
	でもまぁ、いつもこういう感じです、と。そういう意味では、いいのでは？ここまで読んでくれた人、ありがとうございましたーーー！
全員	ありがとうございましたーーーーー！！
	「ほぼ日のいい扇子」は、ほんっとにほんとーに、他にはできない「いい扇子」です。よろしかったらぜひ、夏の友だちにしてください。
	おおー、さすがチームリーダー。
	最後の最後までオススメしている！
	ほぼ日の扇子、どうぞよろしくお願いします！
全員	よろしくお願いしまーーーす！！
（メイキング・オブ・いい扇子2014　おしまいです）