いつもの生活に、こんなお茶があったらいいな。
さっと気軽に入れられて、
友だちみたいに飽きのこない味わいで、
なんだか「いいふだん」を感じさせてくれる‥‥。
そんな思いで生まれたのが
「ほぼ日のにほん茶」です。

はじめての販売は、2012年の冬でした。
糸井が考えたことをご紹介します。

お茶を販売するにあたり、ぼく自身が、
お茶についていろいろと考えてみたことをすこし、
お話させていただきます。

最近みんながオフィスで飲むものは
お茶よりもコーヒーが主流になっていますよね。
お茶というと、急須の用意とか、
お茶がらの始末といった「手間が面倒」というイメージが
定着してしまったのかもしれません。
でも不思議なことに、
コーヒーをいれるときの手間はみんな面倒がらないんです。
それどころか「インスタントじゃ、だめだ」
なんて言いながら、
手間をかけた時間ごとたのしんでいる景色があります。

このバランスの悪さは、どうしてなんだろう?
コーヒーはあんなにたのしそうなのに。
なんだかお茶に対して申し訳ないと思いながら
考えてみたんですが‥‥
きっと、お茶のもつ日本的なムードを
あえて避けようとする時代があったのかな、と思いました。
コーヒーを飲むのがかっこいいと思って
みんなが取り入れはじめたころ、
いかにも生活感のあるお茶は
はしっこに追いやられてしまったような気がしています。

もちろん、お茶を自分でいれることが
習慣になっている人はいまも飲み続けています。
そうした習慣のない人たちが、
どんどん縁遠くなっちゃっているんですよね。
ところが、そういう縁遠くなっている人でも、
誰かが日本茶をいれてくれたら‥‥
ほとんどの人が飲みます。
そして、ほっとします。
ぼくはコーヒーが好きで飲みつづけてきたんですけど、
最近は日本茶もよく飲んでいるんですよ。
やっぱり、やさしいですしね。
「お茶は面倒だ」という誤解をしているだけで、
われわれは、ほんとうはもっと、
日本茶を飲みたいんじゃないかなって思います。

そんなふうに考えていたとき、
お茶屋さんと話す機会がありました。
このお茶屋さんは、歴史があるお店なのに、
「最高のお茶を贅沢にいれる」という感じではなくて、
「日常のなかで、惜しみなく飲めるお茶」を
出しているんです。
ぼくも飲ませていただいたんですけど、
なんだか「時代劇に出てくる町娘がいれるお茶」
っていうのかなぁ‥‥
ぜんっぜん気取ってないんです。
でも、ちゃんとおいしくて、香りもよくて、
おかわりしたくなるようなお茶でした。

それで、一緒に組ませていただくことになったのですが、
最初にわれわれから、「こういうお茶がほしい」という
思いを具体的に伝えました。
まずは、ちょっと休憩したいときに
コーヒーのようにすっきり気分転換できるお茶。
次に、ごはんどきにごくごくと飲めるお茶です。
みんな昼食どきにペットボトルのお茶を飲んでいるけど、
その代わりに、自分でいれたおいしいお茶が
飲めればいいなと思いました。
コンセプトは「いいふだん」。
気軽に飲めるんだけど、おいしくていい気分になれる、
そんなお茶がほしいとお伝えしました。

そうしたら‥‥
社長さんが膨大な種類から
えらんで提案してくださった茶葉が、
こちらの希望に驚くほどぴったりだったんです。

さらに、ふつうの茶葉にくわえて、
茶葉を粉砕してまるごと飲めるタイプも
作っていただきました。
これは、ぼくがテレビで
「茶葉をすって飲むと、
 茶葉の栄養がまるごと摂れて健康にいい」
ということを知って、
実際に乳鉢で茶葉をすってためしてみたのがきっかけです。
この粉砕タイプがあれば、
急須もいらないし、お茶がらも出ない。
オフィスで飲むのにちょうどいいな、と思いました。

粉砕タイプのお茶は「あたり茶」といいます。
最初は「すり茶」という名前を考えたんですが、
「する」って言葉の響きがよくないから、
するめを「あたりめ」とか、すりごまを「あたりごま」って
昔の人が言い換えていたのに習って、
「あたり茶」としました。
なかなか縁起のいい名前でしょう?

というわけで、
「ほぼ日のにほん茶」ができました。
みなさん、どうぞよろしくお願いします。