──

８重ガーゼのお話でも出たのですが、
真夏の夜、寝るときに冷房を使う人と、
冷房はにがてです、という人がいますよね。

増田

はい、その問題。

──

今回、増田さんにうかがうのは、
「冷房はにがてです」という方のための
ふとんのお話です。

増田

はい。

──

私自身も、冷房をつけて寝ると
体調がおかしくなります。
網戸にしたり
扇風機を使ったりしています。

増田

ふとんは、なにも掛けずに？　

──

いえ、暑い暑い言っているくせに、
１枚だけ掛けないと落ち着かなくて。

増田

わかります。

──

で、なにかを掛けると暑い。
どうしたらいいんだと（笑）。

増田

夏に寝るとき
冷房がにがてな人、かなり多いですよ。
みなさん悩みつつ、
試行錯誤されてますよね。

──

というお話を、実は、
ディーブレスさんと何度かしていました。
お話をしている中で、
「こういう新素材があるのですが」
と教えていただいた生地がありました。

増田

ええ。

──

それは、通気性がよくて、
うすくて、やわらかい生地でした。
まさに、
熱帯夜にクーラーをつけないで寝るとき、
一枚だけ掛けるのに
最適なふとんになるのではないかと。

増田

そうですね。
ですから、私たちとしての初の試み。
本邦初公開の寝具です。

──

その名も、
「くまもすずし～いかやのケット」。

増田

かやのケットの「かや」は、
「蚊帳」のことです。
とはいっても蚊帳用の生地で
寝具をつくったわけじゃなくて、
蚊帳のようなイメージの通気性がいい生地で
寝具をつくったということです。

──

蚊帳のような通気性があるので、
「かやのケット」と名づけたんですね。

──

昔は蚊帳といって、
虫が寝床に入ってこないように、
室内にテントのように網を張って、
その中にふとんを敷いて寝ていました。
『となりのトトロ』で
サツキとメイが寝るシーンに出てきます。

増田

蚊帳は紀元前から中東にあって、
そのあと中国大陸から日本に伝わりました。
もともとシルク（絹）や麻を素材にして
上流階級の人しか使えなかった道具です。
江戸時代にコットン（綿）の蚊帳ができてから、
人々のくらしに広まっていったそうです。

──

そうなんですね。

増田

戦後しばらくすると、
網戸を使う住宅が増えて、
蚊帳は徐々に使われなくなりました。
1970年代になると、
扇風機やクーラーも普及しましたし。

──

私は、小さいころ蚊帳に入ったことがあります。
夏の夜風と、蚊取り線香と風鈴の音。
蚊帳のなかで涼しく寝た記憶があるんですよ。
いま蚊帳はキャンプ用品や家庭用として、
大手ネット通販で買えるようになってますね。

増田

そうですね、
風情があって、風が心地よい、
蚊帳はここにきて
再び脚光を浴びはじめてます。

増田

「かやのケット」は
夏の暑い夜に使いたい寝具なので、
いちばん優先したのは通気性のよさです。

──

通気性、よさそうです。
なんの抵抗もなく
風が通り抜けそうな。

増田

蚊帳をイメージした新しい生地を
生地メーカーさんから見せていただいて、
初めて触れたときは、
通気性をここまで極めたことに
びっくりしました。
びっくりしたのと同時に、
「夏に蒸れ感をとるのって、
これがいちばんすごいんちゃうかな」と。

──

生地の役割りがはっきりしてるんですね。

増田

明確です。
通気性に振り切っている。

ほんとうはぼくたちがこの生地を使って、
自社の寝具をつくりたかったんですよ。

──

ふつう、まずは自社ブランドですよね。

増田

ところが、ほぼ日さんが
この新素材に目をつけてくれて、
「通気性に振り切った寝具をつくりたい」と。

──

はい。

増田

そういう流れで、
ほぼ日さんの企画で
肌掛けふとんをつくることになりました。
「抜かされたやん」
というのが本音なんです（笑）。

──

申し訳ありません（笑）。
ほんとうにすごいタイミングで
この生地を教えていただいたんです。
夏に１枚ふとんを掛けたいんだけど、
究極に涼しいのがほしいな、
そう思っている人多いよな‥‥
と思っていたときに増田さんが
バーンとこの生地を見せてくれて、
「これだ！」と。

増田

そういう運命やったんやと思います（笑）。
ぼくとしては、ほぼ日さんが
同じことを考えてくれてたのがうれしかった。
「そう、通気性ですねん！」っていう。

──

ありがとうございます｡
そこから、ディーブレスさんの技術と
様々なご協力があって、
「くまもすずし～いかやのケット」が
できました。

増田

ちなみに検索サイトで、
蚊帳を意識した
通気性のよい生地の寝具を調べたら
他には存在しなかったです。
※2022年３月時点

──

ほぼ日で、まさかの最先端寝具（笑）。

増田

新素材（新しい生地）ですからね。
これ、ほんとうに涼しいですよ。
そして、めちゃめちゃ軽い肌触りです。

増田

「かやのケット」の特性なんですが、
最初の洗濯で横幅がキュッと縮むんですよ、
15～20％くらい。

──

お。けっこう縮みますね。

増田

「くまもすずし～いかやのケット」のサイズは、
タテの長さが200cmで、
ヨコ幅が140cmです。
品質条件にも
「縮みますよ」と書いて販売しますが、
最初の洗濯で、ヨコ幅がキュッと縮んで、
ギャザー（布のひだ）が入ります。
引っ張るとほぼ元に戻りますが、
ギャザーが入った状態で
使っていただきたいんです。
ギャザーも含めて、空気の層なんですよ。
それが、
やわらかさと軽い肌ざわりになってます。

──

なるほど～。
最初に洗濯をして、
ギャザーを作って完成するんですね。

増田

そうです。
圧倒的な通気性を体感してほしいです。

──

ほんと、圧倒的‥‥。
向こう側がすけて見えます。

増田

この薄さなのに、３層構造なんです。
生地の目は
ガーゼよりも大きくてスケスケです。

──

通気性に特化したことがわかりますね。
素材はなんですか？

増田

３層のうち肌にふれる両面は綿100％です。
そして、内部の生地が、
ほぼポリエステルの
かやをイメージした素材です。
そこにもギャザーが入ってきます。

──

どんな感じのギャザーなんでしょう？　

増田

洗濯したサンプルを見ると、
縮むことでキュッとなって、
いい雰囲気なんですよ。

──

その風合いもたのしみです。
そんな「かやのケット」は
インナーケットには適していますか？

増田

インナーケットに求められる機能は、
身体の形に沿って、
肌になじむ「肌沿い」です。
たとえば冬に使う羽毛布団は、
風船みたいにふくれることで
空気をキープして断熱する機能が大事なので、
身体には沿いにくいんですよ。
なので、羽毛布団と、身体の間で、
かやのケットを使うのはいいと思います。

──

なるほど。

増田

その意味では
「くまもうっとりやわらかガーゼケット」も
インナーケットとして使えますが、
「かやのケット」のほうが軽いです。
ですから、
熱帯夜にクーラーをつけて
寝るのが苦手という方の場合は、
そこをサポートしてくれる特性を優先して、
「くまもすずし～いかやのケット」を
選ぶのがいいと思います。

──

なるほど、なるほど‥‥。
よくわかりました。

ディーブレスのみなさん、
寝具にかける熱いお話、
ぜんぶたのしかったです、勉強になりました。
ありがとうございました！