だいじに着る、ということ。 MITTAN主宰・三谷武さんインタビュー

素材となる糸づくりから、染め、織り、ニッティングにも、
一流の技術と伝統が生きている服。
京都をベースにしたデザイン&プロデュースのチームと、
日本各地の腕のよい職人さんがタッグを組んでつくりあげる
「あたらしい民族服」、それがMITTANです。

そして、長く着るということについての高い意識は、
服のじょうぶさだけでなく、
ほつれたり、ほころびたりした箇所は縫い直し、
あせた色は染め直す。
さらなるあたらしいこころみは、
「もう着なくなった服」をひきとって、
きちんとつくりなおして次の世代に託す、
そんなチャレンジもしています。

あたらしいこころみ

──
MITTANの新作のラインナップを拝見すると、
昨年くらいからでしょうか、MITTANそのものが
とても活性化してる印象があります。
有機的に、ぐんぐん成長しているというか‥‥。

MITTAN 三谷さん

三谷
ありがとうございます。
ぼくらの基本的な姿勢は変わってはいないんですけど、
コロナ禍の状況でも手に取ってくださる方がいたことを、
本当にありがたいなと思ってるところです。
日本の各地で販売をしてくださるお店にでかけ、
お客さまと直接ふれる機会が減ったものですから、
昨年は、商品ごとに解説サイトを作りましたが、
今年に入ってからは、商品の下げ札を新しくして、
それぞれにQRコードをつけたんです。
ぼくらが不在で、お店にもし説明をする人がいなくても、
商品からQRコードを読み込んでいただければ、
解説サイトに行くように。
──
買う前の知識も得られますし、
買ったあと、あらためて確認をすることができますね。
三谷
そうなんですよ。
商品の素材や原料の産地、デザインのことも、
どこで織物やニットにしてどこで縫ってるかとか、
どこで染めてるかとか、わかるようにしました。
可能な範囲でメーカーや工場のリンクも貼って、
作り手のみなさんが見えるようにもしています。
──
それ、とってもいいです。
ずいぶん丁寧なお仕事ですね。
三谷
MITTANは「長く着て欲しい」がコンセプトのひとつですから、
そのためにも背景をお伝えしたいんです。
背景を知っていただけると、
より大事に着ていただけるかなと。
今回のラインナップもみんなこのQRが付きます。
──
これから展開していく
あたらしいアイデアもあると聞きました。
三谷
はい、10/25から買取のサービスをはじめました。
既に50点ほどの買取をして、
販売するために順次修繕・染め直しも進めています。
今までも、修繕や染め直しはやってきて、
販売数に対して、お直しで帰ってくる率がどのくらいかは、
おおよそ、わかっていたんですけれど、
見えないなかに、直しをしてまでは着ない方が、
ある程度いらっしゃるのかなと想像したんです。
傷んでいなくてもなんとなく着ないままでいるとか、
いつの間にかタンスの奥に行ってしまったとか。
なかにはそのまま捨てられるものもあるかもしれない。
だったらそういうものをぼくらが買い取って、
修繕や染め直しをして、また別の方に届ける。
そういうことをやろうと思っているんです。

シャツ袖口をハンドステッチで修繕したもの

色あせた黒いパンツをミシンステッチで修繕後に胡桃の染液で濃く染めなおしたもの

──
丁寧につくられたMITTANの製品であり、
いい生地だからこそ、
できる取り組みという気もします。
三谷
そう言ってもらえるとうれしいです。
ふるくからのお客さまのなかには、
着込んで着込んで、朽ちていく様子がきれいだと
思ってくださる方もいらっしゃいますし、
いっぽうでは、ずっときれいな状態で着たい、
直したものには抵抗があるという方もいらっしゃる。
そういう「考えの違う人たち」をつなげられるアイデアが
ぼくら発信であるべきだと思ったんです。
買取サービスを使ってくださるなかには、
よく顔を知った顧客の方も多く、
しっかり着ていただけた服もたくさんで、
いろいろな思いの中、
次の方へお届けすることを楽しみにしています。
今回の取り組みでは普段は手間がかかるハンドステッチや、
草木の濃い染めを、あえてしっかり取り入れることで、
通常の展開とは差別化して見ていただけるように
取り組んでいます。

買い取った服たち

──
すばらしいですね。
三谷
まだまだ着られるものが捨てられてしまうことが
大きな根本の問題だと思ってるんです。
服が、寿命を全うしてくれたらいいなと。

はじめてのかたち、はじめての素材

──
そんな取組みもしつつ、
あたらしいデザイン、
あたらしい商品を開発なさっていますね。
今回のラインナップにも、
新しいかたちや素材があります。
三谷
それができるようになった背景には、
最近、スタッフが増えたことがあります。
おかげで僕も、デザインのほうに注力できて、
その時間で新しい定番づくりに挑戦しているんです。
──
今回のアイテムはどんな感じですか。
三谷
今回の特徴としては、短い丈のアウターがあること。
中わた刺し子織ジャケットですとか、
軽量ウールニットブルゾン、
こういう短いアウターは今まで少なかったんです。

中わた刺し子織ジャケット(灰)

軽量ウールニットブルゾン(墨黒)

コロナになってから、僕自身も
家の中で過ごす時間が増えたり、
出かけるのも近隣であるという頻度が増えました。
そういうとき、丈の長いアウターも、
もちろん好きで着ますけれど、
もう少し気軽に着られるものがあったらいいな、と。
このあたりが今回は充実していると思います。

セーターは、ベビーカシミヤのものを新しく。
パンツはラップパンツのかたちで、
複雑に見えるんですけど、ベルト1本で調整できて
とっても履きやすい素材でつくりました、
便利なアイテムですよ。
ウルグアイの羊のストールもあります。

ベビーカシミヤタートルセーター(薄茶)

ウールコットンラップパンツ(黒)

ウルグアイの羊のストール

(つづきます)

2021-11-28-SUN