三國さんがデザインされたのは、
あたたかい季節の訪れが嬉しくなるようなサマーニット。
美しい模様は、編んでも着ても楽しいものです。
それぞれのデザインやカラーイメージ、
編む際のポイントなど三國さんに質問を送り、
お返事をいただきました。

──

サマーカーディガンには「jasmine（ジャスミン）」
という名前がつきました。
模様の特徴やイメージされたもの、
編む際の楽しいポイントを教えてください。

三國

メインのパターンはもともと「Persian Lace」という名前で、
イスラム寺院の装飾を思わせる、
ゆかしい柄行きに惹かれて使いました。
ベースが裏メリヤス地なので、
表メリヤスで描かれるレース部分がはっきりと浮き上がり、
型抜きしたような立体感が表れるのも楽しいです。

裾と肩に入れた模様は「Indian Pillar」という名前。
おそらくアメリカ原住民の作った「トーテムポール」から
イメージしてついた名前でしょうね。
通常ゴム編みのリブを入れる箇所に、
こういったささやかでひねりのある模様を入れるのが
この頃のわたしの流行りです。

それで結局なぜ「jasmine」か。
去年に引き続き花の名前をつけたかったのですが、
レース柄の縦に伸び上がっていくラインが
蔓性の植物に見える。
初夏に咲く蔓性の花でこの柄に一番近いのは、
ジャスミンかな、ということで決まりました。
５月の連休頃に街を歩いていてふと匂ってくる
あの花の香りがとても好きだから、
ということでもあります。

──

シルエットや裾の切り替えなど、
デザインのポイントを教えてください。

三國

全体にフェミニンなシルエットです。
裾のパートを長めにとっているため、
下に向かってテーパードされて、
自然と腰に添います。

袖は肘の少し上くらいまでと長めなので、
ワンピースやTシャツといった
夏物のトップの上に羽織るのに
重宝すると思いますよ。
全体にクラシックにまとめたくて
今回は貝ボタンを合わせましたが、
糸の色に近い樹脂製のボタンなんかも
素敵だろうなと思います。

──

色によって、大人っぽくも可愛らしくも、
印象が変わるカーディガンだと思いました。
どのようなイメージで色を選ばれましたか？

三國

どの色も、デコルテや腕の延長で優しく馴染み、
着る人を引き立ててくれる色だと思います。

──

首から肩まわりにかけて花模様が広がるサマーニットは、
「rukoso（ルコウソウ）」と名づけられました。
ルコウソウは星形の可愛らしいお花。
三國さんの作品としては、珍しいデザインです。
インスピレーションを受けたものなど、
どのように作品が生まれたのか教えてください。

三國

初めは全部かぎ針のモチーフで編もうと思ったんです。
コットン糸で編む「ドイリー」ってありますよね、
コースターくらいの大きさのやつ。
ああいうので全体をパッチワークしたデザインが、
定番的なサマーニットとしてあるので、
そうするつもりだった。
でもこうなっちゃった。
全然説明になってなくてすみません。

でも時々降って湧いたように、こうしよう、
というイメージがやってくることがあるんです。
今回がまさにそれです。
結果、自分でも見たことのないようなものが
出来上がりました。

──

花模様がお花畑のように綺麗で、
一枚で主役になれるプルオーバーです。
模様を編む際のポイントを教えてください。

三國

レース針で小さな６角形のモチーフを
まずたくさん編みためます。
それをヨークの形になるように、
巻きかがりでつなげていって、
さらに花芯を刺繍します。
ここまでの工程は、編みものというよりも、
手芸をしている感じ。

大変そう、と思われるでしょうか？
でも一気にやる必要はないですし、作業自体が楽しいです。
ヨークの形は前後で違っていて、
肩の傾斜もつくようにデザインしてあり、
全体像が現れた時の感動はなかなかですよ。
そこからさらに棒針で身頃と袖を編んで行くのですが、
ヨークの形を生かしながら下まで続けていくために、
中央と脇で増減目をしていきます。
メリヤスながら気が抜けない仕様で、
だからこそ最後まで飽きずに編んでいただけると思います。

──

色は紺とマスタードの２色です。
それぞれ配色が異なりますが、
どのようなイメージで選ばれたのでしょうか？

三國

最初に作ったのは紺色の方で、
ひんやり涼しい日陰で憩う花。
もう一色のマスタードは対照的に、
夏の光を浴びた眩しい花。
そんなイメージです。

──

jasmine、rukosoどちらも
横田株式会社さんのDARUMAの糸です。
この糸の魅力をどう思われますか？

三國

横田さんの糸は、春夏物も本当に色がいいんです。
rukosoに使ったレース糸はヴィヴィッドで色展開が豊富。
かつ色同士の相性がいいので多色の組み合わせもしやすい。
細番手で、機械編みのセーターに近い
薄手のニットに仕上がります。

jasmineのコットン糸は肌になじみのいい色展開で、
程よい太さがありながら編み上がりが重くならない、
絶妙に使いやすいコットン糸です。

──

「ニットは冬、夏はコットンを編み立てた
夏用ニットの王道・Tシャツを着ていればいいよ」
と何年も前に仰っていた三國さんですが、
サマーニット企画も3年めになり、
だいぶ定着してきたと感じます。
いま、サマーニットについて、
思われることがあればお聞きしたいです。

三國

前言を翻します。（笑）
わたしもこの数年コットンのサマーニットを着るようになり、
遅まきながらこのジャンルに目覚めつつあります。
もっと色々作りたいものも出てきましたので、
また来年以降のプロジェクトのために
アイディアを貯めていこうと思います。

（つづきます。）