カレースター 水野仁輔さん meets 土楽 福森道歩さんカレースター 水野仁輔さん meets 土楽 福森道歩さん

カレー研究家の水野仁輔さんと、
「ほんとにだいじなカレー皿」の作者である
土楽の福森道歩さん。
「ほぼ日」でカレーといえば‥‥のふたりですが、
じつはちゃんと話したことが、なかったのです。
ふだんからカレー皿を使ってくださっている、
という水野さんをお招きして、
道歩さんといっしょに、それぞれが料理をつくり、
ふたりで食べながら、おしゃべりをしました。
もちろん使うお皿は、道歩さんのカレー皿です。
「器の色に合わせて、カレーを考えてきました」
という水野さんは、じっくりと、
自作のスパイスを使ったカレー3種。
道歩さんは驚異の手早さで、カレーと副菜を8種。
料理の色と器のことから、カレー文化のこと、
日本のカレーの原点についてなど、
いろいろな話題がとびかいましたよ。

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とじる

その2器に合わせてカレーをつくる。

──
さあ、おふたりの料理ができあがりました。
食べながら、お話ししましょう。
水野
いただきまーす。
道歩
いただきまーす!
──
お皿の色と料理の話を、ぜひ聞きたいんです。
水野さんはこの企画を引き受けるにあたって、
カレー皿というテーマがあるから、
カレーの色を最初に想定したんだとおっしゃって、
こんなふうに3色のカレーをつくってくださった。
道歩さんもふだんから、
皿の色と料理の相性を意識なさっていますよね。

ナスのキーマカレー/ほんとにだいじなカレー皿(灰釉)

じゃがいものカレー/ほんとにだいじなカレー皿(青織部)

トマトチキンカレー/ほんとにだいじなカレー皿(アメ釉)

道歩
はい。「このお皿にこの色の料理を盛ろう」って
だいたいは決めてからつくります。
水野
ワカメと玉ねぎの副菜も、
玉ねぎは紫玉ねぎにしておいたほうがいい、
というのは、「色」を想定してのことですよね。

ひとくちカレー皿(灰釉)

道歩
そうなんです。
グリーン・オン・グリーン
(緑色の織部の皿に、緑色の食材を盛る)とか。

ひとくちカレー皿(青織部)

水野
グリーン・オン・グリーン、きれいですよね。
──
カレー皿の最新作がこの織部なんですが、
このグリーンが、使いこなすのが難しい、
という声もあって。
道歩
そう言われることはあるんですけれど‥‥。
水野
そうなんだ? 全然難しくないですよ。
ぼくからすると、むしろ灰釉のほうが
カレーでは難しいぐらいの感じがします。
──
灰釉も青織部も、むかしから和食器で使われる色ですが、
なじみのないかたも多いかもしれないですね。
真っ黒なアメ釉は、どんな色の食材も映えるだけに、
それと比べて「難しい」と思われてしまうようです。

水野
アメ釉は、何でもいけますものね。
じつは『カレーライス進化論』という本の
表紙に使わせていただきました。
カツカレーが、
めちゃめちゃおいしそうに映えましたよ。

──
灰釉は、まさしく土楽の伝統色で、
素材を活かした料理を引き立てます。
水野
いわゆる一般的な料理だったらば、
素材の色が出やすいじゃないですか。
そういうときは灰釉もいいなって思うんですが、
でもカレーはそうはいかないんですよ。
カレーは全て茶色の世界になる。
それが昔っから僕は不満で!
──
不満だったんですね。
水野
そう。だって、なんか全部茶色じゃない?
それを華やかに見せようとすると、
野菜の素揚げをトッピングしたりとか。
道歩
そういうことになりますよね。
水野
あるいはパクチーを散らしたりとか、
トマトを添えてみたりとかっていう、
カレーと関係ないところで彩りをだすしかないんです。
それがなんかちょっと、なんていうか、
「負けた感」が強いんですよ。
カレーは茶色だけど、
他のもので見栄えを変えますっていうんじゃあ、
ちょっとイマイチなんじゃないかと。
昔からそれに不満があったから、自分がつくる時は、
とにかくソースの色を変えるっていうことに、
結構長いこと執着してきたんですよ。
──
なるほど。それが水野さんの「デザインカレー」。
道歩
へぇー。
わたしと考える道筋が違って、面白いです。
どんなふうにソースの色を作らはるんですか?
水野
ソースの色を変える時は、
スパイスの色──
スパイスって色がいくつかありますから、
と、そこに入れるトマトなら赤、
ココナッツミルクなら白、
ヨーグルトならやはり白、
玉ねぎは白からキツネ色、飴色‥‥、
火の入れ方によって変化する色を想定します。
だから、このじゃがいものカレーだったら、
飴色の玉ねぎを入れちゃったら茶色く濁るので、
飴色にしちゃダメですよね。
でもチキンカレーのほうは、逆に飴色にしないと、
濃い茶色が仕上がりに出ない。
道歩
なるほど。
水野
あとは、その組み合わせ。
トマトをベースにした赤に、
ターメリックの黄色が加わったらオレンジになりますね。
絵の具を混ぜるのと同じような感じです。
道歩
つまり、全部混ぜちゃうと、
いわゆる普通のカレーになってしまう。
水野
そうですそうです。
辛くしたくてもレッドチリだと色が変わるな、
じゃあどんなスパイスを使ったらいいだろう?
というふうに考えていきます。
道歩
ということは、じゃがいもの黄色いカレーは、
もしかしたら辛くない?

水野
はい、辛味はありません。
でも、もしここに辛味を入れたかったら、
粉になってない唐辛子を炒めるんですよ。
道歩
辛みだけを油に移すんですね。
水野
だから、スパイスでカレーを作る時は、
スパイスの選び方と加熱の仕方で、
仕上がりの色をコントロールできるんです。
僕が“負けたくない”っていう長年の分析の結果、
これはいけると至った結論です。
道歩
水野さんのカレーは、
全部ご自身で色まで考えた、
超オリジナルということなんですね。
水野
そうなんですよ。
ふつう、レシピ本は、30品のカレーがあったら、
ほぼ茶色いカレーが30品。
でも、僕のレシピ本は、30品あったら30色です。
ソースの色は30色にするぞって、
レシピを開発する時に、
自分にチャレンジしてるんです。
そういう僕にとって、
この器が3色あるというのは、
すごくやりがいがあるわけですよ。

たとえば器が全部白だと、
なんか“自分だけ頑張ってる”
みたいな気持ちになることがあるのだけれど、
こうして器が3色あることで、
器をつくる人と、
料理をつくる人の共同作業ができるんですよ。
すごく、いいですよね。
道歩
やった! 嬉しいです。

(次回につづきます)

2017-08-09-WED