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高谷亜由さんは、京都でベトナム料理の
先生をされている料理家のかた。
ベトナム料理をこよなく愛し、
日本人の口に合う、作りやすいベトナム料理を
いろいろなかたに教えていらっしゃいます。
今回はそんな高谷さんに、
「カレーの恩返し」のベトナム料理アレンジを
教わってきました。

「はじめて『カレーの恩返し』のことを知ったときは、
もっとカレーカレーした味になるかと思ったんです。
でも実際に使ってみると、全然そんなことなくて、
『これは使える!』と思いました」

「カレーの恩返し」とベトナムのカレー粉は
ちょっと香りが似ているのだそうです。
カレー粉に珍しいレモングラスが入っていて、
クミンが多くないからかも、と高谷さん。
「ベトナムのカレー粉には八角が入るから
もうちょっと中華っぽいのですが、
雰囲気はけっこう似ています」

▲こちらがベトナムのカレー粉。
香りをかぐと、たしかにちょっと似た香りがします。
カレーはベトナムでも一般的に食べられていて、
主に中部と南部で人気なのだそうです。
ただし、ベトナムのカレーは、
「ごはんとは食べない」そうです。
麺またはパンで食べるもの。
「ベトナム人はほとんど麺かパンで食べます。
そして、たいてい朝か昼に食べます。
ベトナム人たちは麺を朝ごはんに食べるので、
カレーも『麺感覚』なんですね」
今日はそんな、ベトナムのカレー麺と、
ベトナム料理のカレーの恩返しアレンジ2品を
教えていただきました。
どれも「こんなおいしさがあるんだ!」という
新しい発見のあるおいしさ。
ぜひ、作ってみてくださいね。



まずは、カレー麺の作り方から。
「今日の具はベトナムカレーでもポピュラーな
鶏肉とさつまいもにしました。
『恩返し』をカレー粉として使うので、
他にスパイスを買う必要はありません
サラサラしたスープカレーで、
ココナッツミルクや砂糖を入れて
甘くしあげるのがベトナム流です」

添えるのは、ベトナムのお米の麺「ブン」。
ブンはベトナム全土で、
日本での白ごはんのように食べられているもので、
インターネットで買うことができます。
「ブンは、今日のようにつけ麺にしたり、
鍋に添えたり、生春巻きの中に入れたりします。
なければ冷や麦やそうめんでも、おいしいです
水につけて戻しておいてください」

野菜と肉の下ごしらえをします。
それぞれ、食べやすい大きさに切っておきます。

材料の下ごしらえが済んだら、
鍋に油を引いてにんにくを炒め、
香りが出てきたら鶏肉を加えて炒めます。
鶏から油が出てきたら「カレーの恩返し」を入れます。
「ちょっと炒り付けるようにして
スパイスの香りを出していきます」

恩返しのいい香りがしてきたら、
ココナッツミルクの半量と、水、にんじんを加えます。
アクも出ますが、軽くすくえば大丈夫。
「半量だけココナッツミルクを入れる理由は、
風味を具材に含ませるためです。
長時間煮込むとココナッツミルクは
香りがとんでしまうので、
まずは半分だけ使います」

カレーを火にかけている間に、
さつまいもを揚げます。
「香ばしさとコクをつけるのが目的です。
あと、揚げることで芋の水分がとぶため
煮くずれを防ぎ、カレーのスープを
短時間でギュッと吸い込むんです」

鍋のにんじんに火が通ったら、
揚げたさつまいもを鍋に入れ、調味料を入れます。
使うのは、ヌックマム、塩、砂糖。
「ヌックマムはベトナムの魚醤です。
ないときはナンプラーを使ってください。
ベトナムのカレーは砂糖を使った甘口で、
スパイスは香るんですが、辛さはありません」

最後に、玉ねぎと残りのココナッツミルクを入れ、
全体に火が通れば完成。
「ベトナム人はシャキシャキの玉ねぎが好きなので、
どんな料理でも玉ねぎの食感を残します。
だからベトナムカレーに玉ねぎの甘さはありません。
甘さは砂糖で出すんです」
最後にお好みで香菜をのせ、ライムを絞ります。
麺はスープの中に入れても、
添えるかたちにしても、どちらでも。

できあがったのは、ココナッツミルクが香る、
甘いスパイスカレー。
アツアツのものを口に運ぶと、
ふわーっと、いい香りがします。
しっかりした甘さがおいしい。
「ベトナムカレーはすぐ完成するから、
いいですよね。
わたしはもう10年ぐらい作り続けています。
あと、今日は麺を添えましたけど、
トースターで温めたフランスパンを添えても
おいしいですよ」



続いては、揚げ塩豚。
もともとコショウで作るメニューを
カレーの恩返しに変えて作ります。
「食べるとほのかに遠くから恩返しが香って、
すごくおいしいなと思いました。
ビールにもよく合います」

まず、豚のかたまり肉に、
塩、砂糖、カレーの恩返しをまぶします。
「レッドペッパーは取り除いてもおいて
あとでのせてもいいし、
潰してまぶしてもいいと思います」

まぶし終えたら、ラップでぴっちりと密封し、
冷蔵庫で一晩置きます。
「塩豚は、多めの塩をもみ込んで
短時間で漬けるのがベトナム流です。
塩が多いので、浸けすぎには注意してください」

さて、こちらが一晩おいたもの。
水気が出ているので、キッチンペーパーなどで
しっかり水分をふきとります。

こうしてできた塩豚を、
冷たいままの油に入れ、揚げていきます。
(油の量は、肉が半分ていど浸かればOK)
肉を入れたら最初は強火。
油が熱くなってきたら、徐々に弱火にします。
おたまで油をかけながら、
ときどき裏返しつつ、
低温でじっくり揚げていきます。

「しっかり揚げると、バラの余分な脂が抜けて、
食べやすくなります。
素揚げだと、揚げれば揚げるほど
肉の脂が油に溶けてなくなっていくので、
衣つきで揚げるより、実はずっとヘルシーです」

最後にいちど取り出したあと、
高温で二度揚げし、油切れをよくして
表面をカリッとしあげます。これで完成。

少し厚めに切り分けて‥‥

野菜と一緒に盛り合わせて、いただきます。
「野菜はリーフレタス、青じそ、ミント、キュウリ、
バジルなどを盛り合わせることが多いです。
あと、かいわれやレタスなどと一緒に
パンにはさんでもおいしいです。
白いごはんと食べるのも、いけます。
冷めてもおいしいので、
飲み会メニューとしてもおすすめです」



最後はシンプルな、
スナップエンドウの恩返し和えです。
「カレーの恩返しでオイルを作り、
それを野菜に和えるだけのもので、
すぐにできちゃいます。
ベトナムではコショウを使いますが、
今日は『恩返し』を使います」
写真にうつっていませんが、
玉ねぎは切って水にさらしておきます。

カレーの恩返しは軽く炒めて火を通し、
香りをオイルにうつします。
軽く火を入れることで、
少量でもグッと香りが引き立ちます。
「焦げやすいので、香りが立ったら
すぐ火を止めるのがポイントです」

軽く塩を入れた湯で、
スナップエンドウを茹でます。
「キヌサヤでもおいしいですし、
ゆで野菜ならなんでもいけます」

スナップエンドウは、
茹であがったら軽く冷水で冷やしたあと、
キッチンペーパーなどで水気をふきとり、
水にさらした玉ねぎと合わせてから
調味料で和えます。
調味料は、ヌックマム、砂糖、
先ほど作った恩返しオイル。
「和えかたの順番に注意してください。
先がヌックマムと砂糖で、最後に恩返しオイル。
そのほうが味がなじみます。
ヌックマムは、なければナンプラーや、
塩に変えても大丈夫です」

「あっというまですが、これで完成です」
食べると、シャキシャキした玉ねぎと
ふわっと香る恩返しが、いい感じ。おいしい!

できあがった3品を見て、
「今日はこれで献立にもできますね」と高谷さん。
どれも、そんなに手間をかけることなく、
パパッとおいしく作ることができます。
「ベトナム料理は中国とフランスの影響を
大きく受けたアジア料理なんですが、
日本人の口に合うものが多いんです。
タイ料理よりもやさしい味わいで、
いろんな味のハーモニーをとても大事にします」
と、高谷さん。
たしかに、3品はどれも、
エスニックテイストながら、
全体にどこかほっとする味わい。
ふだんの献立にも、違和感なくとけこみます。
ぜひ、作って味わってみてくださいね。
(高谷さん、ありがとうございました!)
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