ロフトの細井さんに訊く、OHTOグッズのこと。
後編では、「こぐまサイズ」にスポットがあたります。
「OHTO」飛躍のカギは「こぐまサイズ」にある?
さっそくごらんください。
細井 逆に、ぼくのほうから質問してもいいですか?
── はい、どうぞどうぞ。
細井 この「こぐまバッグ」をこのサイズにしたのって、
どういう「ねらい」があったんですか?
── ねらい。
細井 はい。というのもですね、ロフトで、
商品をお買い上げいただいたときに入れる紙袋、
あるじゃないですか。
── はい、はい。
細井 いちばん多く出るのが、このサイズなんです。
── ほんとに!?
細井 つまり、みなさん、この「こぐま」サイズに
ちょうど収まるくらいの商品を
買われることが、いちばん多いということです。
── へえーっ!
細井 そういうことは‥‥。
── ‥‥いや、ぜんぜん知りませんでした。
細井 少なくとも、うちではそうなんですよ。
── つまり、ロフトさんみたいなお店で
雑貨を買うときには
必要充分の大きさ‥‥だったんだ、このバッグ。
細井 「こぐまバッグ」をつくってくれてる
伊勢丹さんにも聞いてみてくださいよ。
「百貨店ではどうですか」って。
── ああ、あの「伊勢丹チェック」の紙袋ですね。
細井 百貨店ですし、お洋服や靴なんかもあるから
もしかしたら、大きなサイズの袋かもしれないけれど、
この「こぐまサイズ」も、かなり多いはずです。
── たしかに読者のかたから
「永久紙ぶくろの、小さい版をつくってほしい」
というメールは
むかしから、いただいていたんですけど‥‥。
細井 だからね、ラインナップをパッと見たとき、
「OHTO」のカギは、
このこぐまちゃんたちだなと思ったんです。
── なるほど。
細井 仕事やふだんの生活を、よく考えてみたとき、
このサイズに入らないものって
実は、そんなに多くないんだと思うんですよ。
── ああ、そうかもしれないですね。
小さいように見えて。
細井 女性でも男性でも、メインバッグの他に、
もうひとつカバンを持たなければならない場合、
必要最低限のサイズで
かつ、十分に機能を果たせるカバンとしては
このサイズって、すごく魅力的ですよね。
── たしかに、そうかもしれない。
細井 だから、まだまだこれから、可能性があると思いますよ。
── そっかぁ。いや、すごい分析です。
細井 じゃあ、もう少しプロっぽいことを言いますと(笑)。
── じゃんじゃんお願いします(笑)。
細井 素材の選択とバッグのつくりが、絶妙でした。
今回のこぐまのシリーズは。
── ウール100%のフェルトと、ポリエステルでできた、
「フェルトみたいな」生地のことですね。
細井 はい、どちらも「かわいい」素材ですから、
この小さなサイズにピッタリなんです。
── ええ、ぼくらもそう思ってえらびました。
細井 でもね、こういう「フェルト」って
カバンの素材として、最近よく見かけるんですが、
なんて言うのかな‥‥
じつは「ふくろもの」にしたとき、
素材の魅力をうまく出しにくいんですよね。
── へえ、といいますと?
細井 そのまんま「袋に取っ手をつけただけ」にせずに、
たとえば、ファスナーをつけてみたり、
「スタイリッシュ」な方向に、持っていきがちなんです。
── 飾りが何にもないと、素朴すぎる‥‥のかな?
細井 うん、よけいなことをしたくなるというか‥‥。
── そんなこと、考えてもみなかった(笑)。
細井 それに「スタイリッシュ」をつきつめていくと
どんどん機能が追加されて
「はい、ここには、名刺を入れてください」
「はい、ここには、手帳を入れてください」
「ここには、携帯電話が3個も入ります」‥‥とか、
つまり、
「このカバン、このとおりに使ってもらえれば、
 さあ、今日からあなたもスタイリッシュ!」
みたいな表現になっちゃうんです。
── ええ、ええ。なるほど。おもしろいなぁ(笑)。
細井 でもそういうのって、なんか楽しくないし‥‥
結果的には、売れないんですよ。
── 売れないんですか?
細井 売れません。
── うわ、キッパリ。
細井 すくなくともロフトでは。
── そうなんですか。
細井 だって、そのカバンにぴったり当てはまる人なんて、
世のなかに‥‥何人いると思います?
── ああ、そっか。
細井 もちろん、スタイルショップみたいなお店でしたら
ぜんぜんオッケーなんですよ。

お客さまの間口を、あるていどしぼったお店なら。
── ええ、ええ。
細井 でも、ロフトは間口が広いので。
── そうか、そうか。
細井 で、この「こぐまバッグ」ですけどね。
── はい。
細井 「ふくろにハンドル付けただけ」。
── あはははは、そう言われますと(笑)。
でも、たしかに何もしてないです。
細井 つまり、細かく「何々を入れるべきです」って言わずに、
「何に使うか、とくに決まりはありません。
 どうぞ、ご自由にお使いください」という潔さがある。

たぶん、それが、すごく大事なんだと思うんですよ。
── さっきの「謎かけ商品」の話と通じますね。
細井 そう。そして、この素材を、このサイズで、
このシンプルさで、つくりきってしまった。

その「素直さ」が、ぼくらなんかからすると
「ああ、こういう素材って、
 やっぱり、こういうふうにつくるよね」っていう
原点に、気づかされた感じがあるんです。
── はー‥‥。
細井 「フェルトでカバンをつくるんだったら、
 そもそも、こういうふうにするもんじゃないの?」
というところに
きちんと、行きついてるカバンだと思うんですよ。
── なるほど。
細井 いや‥‥勝手なことばかり言ってしまって。
── いえいえ、そんなことないです。

いろいろと勉強になりましたし、
なにより、すごくおもしろかったです。
細井 「OHTO」のグッズは、
どれも「10人」のためにつくっているのではなくて、
1000人とか5000人とか1万人とか、
そういう規模まで、膨れていきそうな感じがある。

だから、このシリーズの今後の展開は
ずーっと見ていかなきゃなと、思っていますね。
── おお‥‥(感動している)。
その言葉を励みにして、がんばります。
今日は、ありがとうございました!
<終わります>
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