みなさん、こんにちは。

「AcousticT」開発の舞台裏に
みなさんをお連れする、第2回めです。

今回は、プロジェクトのはじまりから、
Tシャツを完成させてゆくプロセスについて、
私、オックスの当時のメモをもとに、振り返ります。

ふだん、あまり明かさない部分ですけれど、
平武朗さんとTシャツをつくるという、
はじめての試みが、何かとおもしろかったので、
お伝えすることにしました。

どうぞ、ごらんになってみてくださいね!

     
 

平さんも入って、具体的にアイデアを出すための
はじめてのミーティング。

A4を四半分にした紙がみんなに配られて、
そこに、思いついた案を書き込む。



ハリさんは「アイデアシート」なんて言ってるけど、
ようするに落書きみたいなもの?
こんなやり方で、だいじょうぶなのかなあ‥‥。

でも、まるでベストみたいな「チルデンT」とか、
セーターみたいな「ノルディックT」とか、
ちょっとおもしろそう! いろんな案が出てくる!



 
     




いま見ると、最終的なデザインに近いものが、
この段階ですでに出ていますね。

アイデアとして「いい!」と思ったものを、
そのまま、まっすぐ作ったのが、
今回うまくいった原因かもしれない。

ちなみに、あのとき決まっていたのは、
「今年は柄だ!」ということだけだったので、
ぼくも、Tシャツチームのみんなも、
はじめのうちは、おたがいに手探りでした。

「こんなの思いついたけど、どう?」
落書きを見せあっては、反応をうかがって(笑)。

そうそう、ぼくのブランド「Desertic」でやってる、
「リキッドニット」のようなデザインも、
候補のひとつとして、考えていたんですよね。

これ、いずれやってみたいんですよ。



     
 

落書き会(?)から一週間後、
有望視されているアイデアのうちいくつかを、
平さんがインクジェットプリンタで、
プリントしてきてくれた。





わあ、これ、いい!
ほかのみんなも、盛り上がってるし、
これはイケるかも‥‥!?

この段階で、かたちにしてしまうっていうのは、
思いつかなかった。 さすがは平さん!

 
     




ぼくがよく出入りしている工房のようなところに、
Tシャツ用の大きなインクジェットプリンタがあって、
ちょうどそれを使えたんです。

最終的にインクジェットでやるかどうかは関係なくて、
あくまで、アイデアがOKかどうか、
雰囲気を見るためにプリントしてみました。
かたちにしてみないと、いいのかどうか、
なかなかわからないですからねー。

ちなみに、このとき素材として使ったのは、
ハリーさんの私物。





写真上のラマ柄のセーター、
写真下のVネックニットそれぞれからのアイディアが、
最終的に「アルパカニット」「サマーベスト」に
なりました。

     
 

平さんにヴィンテージ・ニットを
提供してもらえることになって、
「いい柄」のあてはついた。

いま取りかかっているのは、柄の表現方法。
デザイン担当の田口くんや、助っ人で参加してくれた
山川みっちゃんが、いろいろ試してくれている。

日々、柄を量産しているから、二人は、
「柄組合(がらくみあい)」なんて呼ばれている‥‥。

なかでもおもしろそうなのは、
チェックやラマのセーター模様を、手描きしたもの。

これがTシャツの上にのったら、
どんなふうになるのか、ワクワクするなあ。











 
     




「実物のニットをスキャンして
 シルクスクリーンでプリントする」という、
最終的に採用された方法のほかにも、
じつは、いろいろと試していたんです。

短い期間のあいだに、
さまざまな手法で柄や模様をつくったので、
正直言うと、タイヘンでしたね(笑)。

手描きのチェック柄は、みんなにも好評で、
けっこう最後のほうまで候補に残っていたんですよ。

     
 

柄のいちばんかっこいい表現方法が見えた!

それは、
平さんのニットをスキャンして、
色数を落とし、
シルクスクリーンでプリントする方法だ。







ワイルドだけど、編み目やニットの質感は
リアルに再現されていて、これはかっこいい!

すくなくともこのデザインは、これで決まりじゃないかな。

 
     




たとえば、アンディ・ウォーホールの
シルクスクリーン作品って、かっこいいじゃないですか。
ああいう、リアルで荒々しい感じを、
試してみようってことになって。

やってみたら、平さんの古着ニットの魅力とあいまって、
想像していた以上に、いい感じになったんです。
「これなら!」という手ごたえがありました。

結果的に、すべてのデザインで、
この手法を採用することになりました。

     
 

すべてのデザインが決定して、
入稿をひかえた前夜。

20種類以上、いままでで最大のラインナップ数だ。
でも、なんか、まだ足りない感じがする‥‥。

あのラマのセーターみたいな、
肩にまるく模様が入るデザインがなくて、
みんなそれが心残りなのだ。

そのとき、平さんが、叫んだ。

「あっ、あれがあった!」

 
     




最初にインクジェットでプリントした
あのラマのセーターが、強く印象に残っていて、
「あのタイプ、やりたいね」と、みんな言ってました。

プロジェクトの初期から、似た古着を探していたんですが、
いいものがなかなかなくて‥‥。

柄に動物が入ってるのがポイントだと思ってたんですけど、
残り1日というところで、
「動物じゃなくてもいいから、近いものはないか?」と
発想を変えたら、あるセーターを思い出したんです。

もう夜だったんだけど、ぼくの家まで取りにいって、
また「ほぼ日」の事務所にもどって、
それから田口さんがデザインしてっていう、
まさに突貫工事でした。


▲平さんが思い出したアルパカセーター

あんなギリギリになって追加したデザインが、
いちばんの人気になるなんて、
まったく予想できなかったですけどね(笑)。

こんな試行錯誤や紆余曲折を経て、
「AcousticT」はできあがりました。

今回のプロジェクトの立役者である平さんは、
「AcousticT」に携わった感想を
このように、述べてくださっています。

そうですね‥‥「スカッとした」というのが
いちばん大きな感想ですね。

たとえば、
この「AcousticT」のラインナップのなかで
ぼく自身がいちばん気に入っているのは
「アーガイル」のシリーズなんです。

グラフィック的な、かっちりしたアーガイルを
Tシャツにプリントしている例は、
けっこうあると思うんです。

でも、「AcousticT」のように
実物のニットからダイヤ柄を抜き出して、
編み地の雰囲気をのこしたまま
プリントしているものは、たぶん見たことない。

あがってきたサンプルを見て、
「これは新鮮だ!」と思いました。

もし、ぼくのブランド「Desertic」で、
同じことをやるとしたら、
きっともう少し、デザインを加えるはずなんです。

なんというか、洋服として成立させるために、
もう一味、加えたくなると思います。

でも、この「AcousticT」に関わってみて、
いちばん大切な、核となるコンセプトを、
ストレートにデザインするだけで、
ものすごくかっこいいんだと、わかった。

それが、すごくスカッとして、うれしかったんです。


平さんとコラボレーションした「AcousticT」、
もしまだ、お気に入りのTシャツが残っていたら、
ぜひこの機会に、お申し込みくださいね。

それではみなさん、
またこのページで、お会いいたしましょう!