――

このTシャツにプリントされているものって
いったい何なのでしょう？
写真や文字、イラスト、色といったさまざまな要素が
複雑に絡み合っている感じがするのですが。

石川

元ネタはさ、僕の持っているタイベック（＊1）なんですよ。
アメリカ製のタイベックで、
これにKIKIちゃん（＊2）の写真を
プリントできるかやってみようぜっていう
実験みたいなことをやっていたんです。
もう10年以上前のことですね。

（＊1）タイベック®はアメリカのデュポン社が開発した高密度ポリエチレン不織布。

（＊2）モデルのKIKIさん。エッセイの執筆、フィルムカメラで収めた作品を写真展などで発表も。

――

意外とにじまずにプリントできるものなんですね。

石川

当時は京都にいい職人のおじさんがいて、
腕もよくてね。
写真がうまくプリントできたから、
今度はそこに豊田さん（＊3）何か描く？　って
調子にのったわけですよ。

（＊3）「パームグラフィックス」の豊田弘治（とよだ・こうじ）さん。モダンサーフアートの第一人者。

――

Ｔシャツにしようと思って
つくったわけではないんですね。

石川

それは完全に無計画で始まったね（笑）。
ただ、そのあとに、
「ULTRA HEAVY」の初めての展覧会（＊4）があってさ、
そのときに、鵜飼くん（＊5）が
モノグラムをデザインしたタイベックに、
KIKIちゃんの素足の写真をプリントして、
神山（＊6）がシルク刷って、
それを小さな作品として販売したんだよ。

（＊4）虎ノ門の「キュレーターズキューブ」で2013年に行われた展覧会。

（＊5）アートディレクター、イラストレーターのジェリー鵜飼さん。個展も開くアーティストでもあり、「ULTRA HEAVY」の一員。

（＊6）アーティストの神山隆二（かみやま・りゅうじ）さん。「ULTRA HEAVY」の一員。

――

今回のＴシャツにも１枚入っているやつですね。

石川

そうそう、それそれ。
気がついたら、僕のタイベックには
KIKIちゃんの写真やら
豊田さんの手描き文字やら
鵜飼くんの絵とか
神山のシルクスクリーンプリントが入ってきたから、
Ｔシャツでもつくってみんなで着たいなと思ったの。
黄色いマスキングテープでプリント範囲を
こっからここなって決めてね。
マスキングテープもカッコいいからそのままでさ。
アートってよりも、いたずらプレイですよね。
ほんとにまんま。
それで、それぞれ刺繍も入れましたと。
それを「5DW」では今回久しぶりにつくってみたわけです。

――

そもそもタイベックのシートに入っている
タイポグラフィーもカッコいいですよね。

石川

でしょう！　
アメリカ製のじゃないとね。
デザインとしてすでに成り立っているんですよ。

――

そもそもタイベックの用途って
何なんですか？

石川

えっとね、雨水を防ぐ農業用資材だったり、
遮熱、耐水が求められる建築資材だったりね。
まあ、僕のタイベックは
完全に自分欲しさで、
コツとしては、
アートでもファッションでもなく
俺のオリジナルのキャンプ道具。
今にしたらアートピースものだけどね。

――

すごいアートピースだと思うんですけど、
石川さんの扱い方がちょっと雑ですよね（笑）。

石川

それはね、僕の中では道具ですから。
タイベックだから、イベントのときにも
画鋲で壁に貼り付けてもいいぞと。
テープで貼り付けたとしても、
剥がすときは（乱暴に）こんな感じだぞと。
作品としても思われたくなかったかな。

――

ちなみに、KIKIさんの写真はどうやって選んだんですか？

石川

写真はKIKIちゃんにいくつか送ってもらって、
なんとなく選んだのかなあ。
どうだったっけかな。
まあ、でも、
KIKIちゃんが登山に行ったときの山の写真で、
自分の足とか、靴とか、お菓子とかが写っていますよ。

――

このアートワークは
どこがもともとのタイベックのデザインで、
どこが新たにプリントされたものかとか
なかなかわからない凄さがありますね。

石川

でしょう。
キャンバスとしてのタイベックなだけで、
自由だったんだよね。