「ミヒャエル・ゾーヴァの世界」の おすそわけ
第2回 ポストカードで広がる絵。
ゾーヴァ 日本に来ると
どうしてもスケジュールが
過密になってしまって
じっくり日本を楽しめないのが
ちょっと残念なのですが
日本は大好きです。

ただ、不思議といいますか、謎なのは
みなさんの「熱狂」とも言える
歓迎ぶりですね。
私のことをとてもすごい作家のように
大きく持ち上げてくださるので
とっても気分が良くなってしまうんです。
でもドイツのベルリンに戻ると
地に足がつくといいますか、
現実に引き戻されます‥‥。
糸井 ベルリンでも
大活躍していらっしゃるでは
ありませんか。
ゾーヴァ あはは、どうでしょう(笑)
糸井 (笑)「どうでしょう」ですか。
ゾーヴァ 日本とドイツでは
ぜんぜん雰囲気が違うのです。
糸井 本国ではひとりの「絵描き」さん
なのでしょうか。
それとも「イラストレーター」として
見られているのでしょうか。
ゾーヴァ とてもむずかしい質問ですね。
どちらかというと
イラストレーターでしょうか。

ここ十年ほどは、
ほとんど自分の絵を描く時間がないのです。
イラストの絵の仕事が多くて、
イラストばかり
描いてしまうものですから。

糸井 ポストカードという媒体が
大きな転機になったと思うのですが
ポストカードの仕事というのは
どのようにお考えですか。
ゾーヴァ ポストカードの仕事には二つの側面があります。
博物館や美術館関係者から見ると
その作品をポストカード化してしまうような
アーティストというのは
格がランクダウンという
マイナス面な部分。
糸井 あぁ。「画壇」ではね。
ゾーヴァ ええ。
ドイツではまじめで真剣なアートと
ちょっとユーモラスなアートの境界線が
非常にきっちりとあって
ユーモラスのジャンルに入ってしまうと
軽んじてみられる傾向があります。

ただプラスの面としては
このポストカードを出している会社の社長は
長年の友人でして
私の経済的な保険といいますか
生活の基盤にもなっているんですね。

そしてもうひとつ、
ポストカードというのは
非常に手軽に広く行き渡るものなので
きっとニック・パークさんなど
(編集部註:
 ゾーヴァさんが美術コンセプトを手がけた映画
 『ウォレスとグルミット』の監督)

いろいろな方が私に連絡をしてくるのは
ポストカードを目にしたという
きっかけも多いのではないでしょうか。
そういう普及的な効果が
あるのではと思っているんです。


映画『ウォレスとグルミット野菜畑で大ピンチ』は
今春公開予定です。
糸井 ゾーヴァさんの絵は
手軽でたくさんのところに届く
すばらしいメディアと
ずっと一緒に歩んできているんだと思います。
ゾーヴァ 実は一番最初に
わたしがブレイクしたと言いますか
ポピュラーになったのは
ポストカードというよりも
1992年に行われた
ハノーヴァの
ウィルヘルムブッシュ美術館で行われた
展覧会がきっかけだったのです。
糸井 その展覧会での絵は
どの絵なんでしょうか。
ゾーヴァ 1992年までにわたしが描いた作品は
ほとんど入っていたと思います。
(つづきます)
【通訳】
ゾーヴァさんと糸井重里の対談は
ゾーヴァさんの本を何冊も翻訳されている
木本栄さんに通訳をお願いしました。
2006-02-03-FRI



「ミヒャエル・ゾーヴァの世界」の おすそわけ

ケーラーの豚
 (画像をクリックすると絵を拡大します。)
 展覧会の会場でこの絵を前に
 二人が語り合ったことを
 こちらからお楽しみください。