乗組員やえの疑問

読者から質問をいただきました。
教えてください。

スカイツリーおじさんの解説

3月18日、事業主、施工者はじめ、
ご関係者の皆様のご尽力をもちまして
東京スカイツリーは無事に
最高高さ634mに到達しました。
建物の骨組みがほぼ完成した段階であり、
これを上棟(じょうとう)といいます。
今回はこれをひとつの機会に、
これまでにみなさまからお寄せいただいたご質問に
お答えいたします。

Q:ユニットになっているパイプ構造は
現場でどのように溶接しているのだろうか、
自動溶接? 単純な突合せ溶接?
(親父は毛抜き継手といっていましたが)

A:
太い鋼管同士をつなげる現場溶接は
「半自動溶接」という方法で行っています。
「半自動」と呼ぶからには半分が自動なわけですが、
どこが自動かといえば溶接ワイヤーの送給が
自動で行われるという意味です。

溶接は、「火」を吹かせているのではなく、
アーク放電(コンセントとかでバチッと光るやつ)
の熱でもって金属を溶かして、
部材同士を溶け込ませてつなぐものです。
つなげたい金属に、溶接機先端のワイヤーが触れたら
アークが発生して、溶接スタートなんです。
でも、そのワイヤー自身が熱で溶け込んでいくので、
そのワイヤーを、自動に一定量出るようにしてるのが
「半自動溶接」なんです。

「単純な突合せ溶接?」というご質問は、
そのとおり、「突合せ溶接」という溶接種類です。
突合せ溶接とは、
ふたつの部材を、ほぼ同じ面内で突き合わせて、
開先(溶接する母材間に設ける溝)を設けて行う
溶接のことです。
また、パイプとパイプの溶接ですので
「周継ぎ」とも言います。

なお、太いパイプから何本かの細いパイプへ
枝分かれしている箇所(分岐継手部)は
工場溶接で、この部分は
「隅肉溶接」と「部分溶け込み溶接」です。
「隅肉溶接」とは、
部材の継ぎ合わさる接線部分を
溶接で辿ったようなものです。
「部分溶け込み溶接」とは、
部材厚さ全てを溶かし込むのではなく、
その一部で溶接するものです。

 

Q:溶接の強度保証のための非破壊検査はどうやるのか?

A:現場溶接部は全数を、超音波探傷試験を行って
欠陥のないことを確認しています。
「超音波探傷試験」とは、
素材、製品などを破壊せずに、欠陥の有無、
その存在位置、大きさ、形状、分布状態などを調べる
非破壊試験の一種です。
溶接内部や材質などを破壊することなく
調べることができる代表的な非破壊試験なんです。

また、もちろん工場溶接部も、その精度、
溶接のど厚(溶接で溶かし込む部分の厚み)管理など、
必要な品質管理を行っています。

 

Q:全体の位置出しはどうやるか?

A:このご質問には施工者である大林組さんに
お答えいただくのが正統な筋なのですが、
設計者のわかる範囲でお答えすると、
3次元測量器を用いて、
各レベルで基準となる軸(座標)を出し、
その基準点をもとに各部材の接合部の位置を
確認調整しながら組んでいます。
こうした日本の建設技術は世界的にもトップなんです!

 

Q:構造物(パイプ)の中に
ガッセト/ダブラみたいのが入ってないと、
溶接も位置決めもできない?

A:建方用ピースという、
現場においてクレーンなどで組み立てる際に、
その部材を、そこで引っ掛けたり、仮どめするための
「耳」となる部分がパイプには必ずついています。
ここにボルトを通して仮締めを行い
部材の位置をおおまかに決めます。
その後、微調整を行ってから本溶接を行います。
最後に、このピースは鋼材ごと切り落とします。
東京スカイツリーのパイプを良く見ていただくと
この鋼板ピースを切除したあとが残っているのが
確認できますよ。

 

Q:強度が2倍も高い部材を使用で溶接したら
「鈍ってしまう、母材と溶接ビードにところが
変化して強度がさがる」のではないか?
溶接の熱歪で変形するが修正はどうやるか?

A:溶接による熱で鋼材の強度が低下する現象は
確かにありますが、
この鋼材はそういった問題が生じないように
特に配慮した溶接性にすぐれた鋼材を使っています。
溶接による熱ひずみは確かに生じるので、
それをある程度想定した上で調整をしながら
建方を行うことになります。
溶接による影響だけでなく、
風も吹きますし気温の変化により
タワーの位置は絶えず変化します。
ここら辺の精度管理がうまく行われないと
東京スカイツリーは、
まっすぐ建たたないことになります。
ここが溶接工、鳶などの職人をふくめた
施工者の腕によるところが極めて大です。

 

Q:富士山から鹿島の鹿島神宮裏の丘にある
高天原(地名)を結ぶラインは、
節分から立春に太陽が通るラインになっています。
実はその線上にスカイツリーがありますので、
スカイツリーから富士に太陽が沈む
ダイヤモンド富士が
節分と立春に見えることになります。
このラインは古い陰陽の暦の元旦に当たる
立春に太陽が通過するので、
皇居もこのライン上に設けられたものと思います。
日本の国の中心が富士山で、
その日本の国の季節が陰から陽に転じる方角
ということになります。
このスカイツリーの位置は、
このことを知って設けられたのでしょうか。
偶然であれば奇跡の一致と思います。
スカイツリーができたら、
この奇跡のダイヤモンド富士を
是非見たいと思っています。

A:このご質問にはびっくりいたしました!
私どもは全く知りませんでした。
設計者に聞いたところ、
「本当に? そうだとしたらすごいね!」
と感動していました。
ちなみに今年の2月に撮影した
スカイツリーと富士山の画像が以下に掲載しています。
http://www.nikken.co.jp/ja/skytree/photogallery/
お楽しみくだされば嬉しいです。

また、東京にはJR中央線という、
その名の通り東京の中央を東西に走る鉄道があり、
西側の立川駅〜東側の東中野駅までは、
鉄道がほぼまっすぐに通っています。
なんと、そのラインの東への延長線上に
東京スカイツリーは立っているのです。
空撮写真で、その様子や都市状況が分かりますから、
こちらもぜひ見てみてください!
http://www.nikken.co.jp/ja/skytree/photogallery/gallery/index.php

 

Q:スカイツリーの鉄骨総重量を教えてください。
基礎・本体・アンテナそれぞれ何トンになるのでしょうか?

A:スカイツリー塔体の重さは地上部分で32,000tです。
ウィキぺディアで「32,000t」を調べたところ、
ガンダムのホワイトベースに匹敵するそうです。

 

Q:東京タワーのように階段で展望台まで登れませんか?
もし登れるとすれば何メートルまで?

A:展望台まで続く階段は心柱内部に設置されています。
ただし、あくまでも非常用階段という位置づけなので
避難時以外には基本的に一般の方が
この階段を登ることはないかと思います。
ちなみに1階から第一展望台まで1,929段、
第一展望台と第二展望台は594段の階段です。
なお、メンテナスのために、
ゲイン塔頂上まで行く階段もあります。

さすが、ほぼ日の読者のみなさん!
かなり深い質問の数々をいただきました。
おかげさまで、私達自身も学ぶことができました。

これをひとつの契機として、
今一度心をひきしめて、皆様のご期待に沿うように、
さらに努力を尽す覚悟を新たにしています。

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2011-04-12-TUE