糸井重里が知りたいことシリーズvol.1歩く 糸井重里が知りたいことシリーズvol.1歩く
些細な悩みから哲学的な話まで‥‥
学びたいこと、知りたいことは、
おとなになってもつきることはありません。
むしろ、歳を重ねることで、
興味が広がっていくようにも思います。
そこで新しい座談会のシリーズを
はじめることにしました。
糸井重里が「知りたいこと」をテーマに選び、
その専門家の方と一緒に学んでほしい方をおよびして
学びを深めていきます。
テーマから、自由に話は広がっていくでしょう。
第一回のテーマは「歩く」です。
歩くことは運動の基本、
健康にも大きく関わってきます。
東京大学で老いについて研究している飯島勝矢先生と、
犬のお散歩やロケで日々歩くカンニング竹山さん、
おふたりとじっくりお話しました。



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第3回 社会的な衰えは、筋肉も自分も衰える。
写真
糸井
絵を描くのが好きだったり、
読書だったり、
ひとりでいるのが好きな人は
どうすればいいんですかね。
無理に人付き合いをしても、
ストレスが溜まるでしょうし。
竹山
人見知りで、人に会うのが億劫な人もいますよね。
そういう人もがんばって
誰かと交流したほうがいいんですか?
飯島
全国各地で講演会をしているのですが、
その質問は必ずされますね。
「引きこもりの人はどうすればいいですか?」と。
糸井
ああ、やっぱり。
飯島
そういう人は2つタイプにわかれるんです。
ひとつは若いときから人と会うのが苦手な人。
もうひとつが、元々社交性などが保たれていたのですが、
退職後など社会との接点がぷっつりと途切れて、
ここ数年で急に引きこもりっぽい状態になった人。



前者の方を、無理やり連れ回すのは、
あまりよくないと思います。
本人も嫌がっていますし、ストレスもかかるので、
ひとりでも継続できる方法を考えるべきですね。
後者は、意外と多いんですよ。
60~65歳で会社を退職して、
いきなり社会との接点がなくなると、
人生が一度リセットされた感じになるんですよね。
そうして突然、対人コミュニケーションが
とれなくなる人がいるんです。
写真
糸井
ちょっと、気持ちわかります。
めんどくさくなっちゃうんでしょうね。
飯島
実は社会との接点が衰退すると、
同時に、ふくらはぎや太ももも
あっという間に細くなるんですよ。
糸井・
竹山
ええーーっ!
写真
飯島
運動をしている、していない以前に、
社会的なつながりが減ると、
筋肉もどんどん減っていくというのは、
研究結果として出ています。



やっぱり、人とつながっていると
なにかと動きますからね。
ボランティアをしながら友だちと動く、
囲碁・将棋の会場へ向かう、
しかも好きでやっていることだから自然と続きます。



もちろん、スポーツジムが大好きで行きたい、
という方はそれでいいと思います。
ただ、全員が定期的に
スポーツジムに行けるわけでもないですし、
スポーツジム通いで常時健康、
というわけではないですね。
糸井
健康維持のためにとりあえずスポーツジムに行こう、
という風習ありますもんね。
飯島
ありますね。
それが全員に当てはまるわけではないです。
糸井
僕はけっこう、人見知りなんですよ。
だけれども仕事は好きなんで、
否が応でも人に会うことになるんです。
どこかでスイッチを入れて人と会えるので、
そういう意味では仕事があってよかった。
竹山
僕も、ものすごい人見知りなんですよね。
糸井
わかる(笑)。
表に出ている人は多いですよね、そういう人。
写真
竹山
こういう仕事をしているので
あまり信じてもらえないんですが、
できたら表に出たくないんです。
でも、まあ嫌いではないので、
どこかで我慢をしてスイッチ入れて
仕事場に向かう。
世のサラリーマンと一緒です(笑)。
糸井
生き物全体がそうですよ。
ヤギだって、めんどくさいなと思いながら、
生き延びるために草を食べに行っているはず(笑)。
ストレス過多になってしまったらダメでしょうけど、
適度にたのしいことをしながら
微妙なバランスの中でやりくりするのが
大事なんでしょうね。
飯島
これは私の研究ではなく世界的に発表されたもので、
30万人を対象とした「どういう人が長生きをするか」
という研究があったんですね。



私たち医師はメタボ予防のことや、
習慣的に運動することを推奨してきました。
あとはお酒やタバコはやめなさいと。
竹山
僕が散々言われていることですね(笑)。
飯島
ところが、その研究では、
メタボ予防や禁煙よりも
「人とのつながり」が強いかどうかが、
長生きするためにいちばん大切なことだと
発表されたんです。
すなわち、人とのつながりが
長寿にいちばん貢献するんだと。
写真
竹山
へえー!
糸井
竹山さん、完全に勝ち組じゃないですか(笑)。
竹山
いやいやいや、
どの先生に診察してもらっても、
絶対に怒られますからね。
不健康な数値が出てるって。
糸井
どこが悪かったんですか?
竹山
前は肝臓が悪かったんですけど、
いまは特にコレステロール値ですね。
人とのつながりはいいんでしょうけど、
さすがに基本の生活が悪すぎる。
酒呑んで、しょっぱいものと脂っこいもの食べて、
夜遅くにドカ食いですから。
写真
飯島
それは、悪い意味で合わせ技一本、ですね。
糸井
医者じゃなくても、
それはやめたほうがいいってわかりますね(笑)。
今、おいくつでしたっけ?
竹山
47歳です。
まだまだ先は長いなと思ったんですけど、
先生に「気をつけないと東京オリンピック見られないよ」
って言われて、そこまでひどいのかと。
糸井
それは危機意識が高まるひと言だ。
ちなみに、飯島先生は運動は?
飯島
私は52歳で、
運動らしい運動はしていないんですが、
ベーシックなことは気をつけています。
地下鉄ではなるべくエスカレーターではなく
階段を一段飛ばしで登りますし、
全国各地で市民講座をして人と交流しているので、
そういう意味では安心かなと思っています。
糸井
ご趣味はありますか?
飯島
趣味‥‥研究することですかね(笑)。
今は5万人ほどの自立高齢者を調べましたが、
欲を言えば10万人、20万人と調べたいです。
オタク気質なんですよね。
竹山
仕事の感覚が全然ないんでしょうね。
飯島
好きなことがあるっていうのは、
身体にもいいですからね。
写真
(つづきます。)
2018-10-11-THU