HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

はじめまして、しいたけ.です。

VOGUE GIRLで毎週掲載されている
「しいたけ占い」やnoteの連載で
大人気の占い師・しいたけ.さんが、
ほぼ日に遊びに来てくれました。
きっかけは、糸井重里がもともと
しいたけ.さんの占いを愛読していて、
さらに最近ではTwitter上での
やりとりも生まれていたこと。
「はじめまして」の機会でしたが、
実は物事の感じ方が似ていたふたり。
話はおおいに盛り上がりました。
この日は占いの背景にある、
しいたけ.さん自身の過去のお話や、
大事にしている考え方などを
いろいろと教えてもらいました。
全6回、どうぞおたのしみください。

しいたけ.さんプロフィール

イラストレーション:タロアウト

6. 失敗しながら生きていく。

糸井
「しいたけ占い」以外だと、
いまはどんなことをしているんですか?
しいたけ.
実は最近、はじめて星座とかを絡めない
コラムの本を書かせていただいています。
星座だとどうしても
12分の1しか読んでもらえないというのが
ありますし、
占い以外のことについても
書いたり話したりしていきたいという
思いがあるんです。
糸井
しいたけ.さんは、占いのなかにも
作家的な部分があるから、
その本もおもしろくなりそうですね。
もしかしたら、いずれフィクションとかを
書いてもおもしろいかもしれない。
しいたけ.
ありがとうございます。
実はぼく、フィクションを書くのも
大好きで、ずっと昔、
架空の日記を大量に書いていたんです。
大好きな女優さんと一緒に暮らしている
体(てい)のもので、
さすがに闇に葬ったんですけど。
糸井
ああ、バカだねぇ‥‥(笑)。
でもしいたけ.さんは、
今も、この先も楽しそうですね。
しいたけ.
はい、楽しいです。おかげさまで。
糸井
いま自分の存在が
“しいたけ.さん”ということに
なってるのも楽しいですよね。
顔出しもしていないし。
しいたけ.
そうなんです。
糸井
自分自身を占うこともあるんですか?
しいたけ.
そこはやらないようにしています。
それをすると、いろんなことが
落ちていってしまう気がするんです。
例えば「この会社と組んで大丈夫か?」
みたいなことを
自分の占いでやってしまうと、
人と生きていくことが技術論になって、
自分の生きるという物語が
色を失っていってしまう気がするんです。
だからそこは、どんどん
失敗していきたいなと思っています。
糸井
そこは「さるかに合戦」
やらかしたあとの世界こそが、
自分が生きる場所だからってことですね。
何もない自分で、
どう生きていくかというか。
しいたけ.
わかります。
ほんとそうだと思います。
糸井
人って何もないとき、
自分だけのオリジナルの何かを
生まざるを得ない状況だからこそ、
生み出せるものがあるんですよね。
すでに良い材料があると、頭が動かない。
しいたけ.さんが若い時、
畳としか話してなかった時代に
得たものが
今のメシのタネになっているというのも、
同じ話ですよね。
材料がない場所でがんばったからこそ、
という。
しいたけ.
そうですね。
糸井
今って検索すれば
いろいろなことがわかって、
失敗しにくい世の中ですけど、
ほんとに大事なことって、
多少失敗しようが、やっぱり
自分で決めたほうがいいと思うんですよ。
野球の例になるけれど、
バントの成功率が6割で、
打ちにいったほうがいい根拠が
なにもなくても、
最後は自分の心で決めた方がいい。
ぼくは、一番大事なときにそれをやったら、
「さるかに合戦」の次が打てると
思うんですよ。
「確率的にバントだろ」
みたいな判断のしかたをすると、
次が打てないんですよね。
せいぜい、被害を食い止めるための
何かしかできない。
しいたけ.
はぁー、「さるかに合戦」をやらかして、
よかった(笑)。
糸井
そうそう。
で、「さるかに合戦」って、
ほんとはそこから
ものすごく勝ちたいわけじゃないですか。
しいたけ.
勝ちたいですねえ。
ぼく、次の日から、かなり
大学での居場所をなくしましたから(笑)。
糸井
でも、その経験があるからこそ、
いまの自分がいるのかもしれないし。
相手の女の子が、果たして
そのまま好きな彼のところにいって
どうなったかなんて、たかが知れてますよ。
‥‥知らないけど(笑)。
きっとしいたけ.さんの
「俺」の人生のほうがおもしろいですよ。
こっちはその失敗で
経験を積んでいるんだから。
しいたけ.
そうですね(笑)。
よかったです、ほんとうに。
糸井
最後にうちのスタッフから、
なにかありますか?
──
せっかくしいたけ.さんが
来てくださっているので、
2018年の後半から2019年にかけて、
占い的に
「みんな、こんな感じのことを
気をつけるといいよ」
みたいなことがあれば
教えていただけたら嬉しいです。
しいたけ.
なるほど、わかりました。
ひとつ指標のようなものをお伝えしますと、
ぼくは2017年から
その動きがすごく強くなってきてると
思ってるんですが、今日の話と同じで
「正直」というキーワードが、
2018年度の終わりに向かって
ますます加速していくと思っています。
2017年、アメリカで
トランプ大統領が出てきたのも
「正直」がポイントの話じゃないですか。
身も蓋もない話で、
ヒラリーさんが負けて
「だって、実際カネがないから
援助できないじゃん」みたいなことを言う
トランプさんが勝ったというのが
象徴的なんですけど。
ある種の理想論とカッコつけに対しての、
「いまはそれじゃないんだ」
というムードがすごく強くあるというか。
糸井
「屁をしたな」みたいなやつですよね。
しいたけ.
そうなんです。
実際に人を見てて思うけど、いまは
みんながその「正直」を志向する流れが
すごくあると思っています。
やっぱり個人でも、
「カッコつけようとすると負ける」
みたいなことですね。
悪いことをしたときに正直に謝るとか、
何かができないときに
「実はお金がない」とか
正直に言ってしまったほうが、
めちゃくちゃに見えて、
実はそこから対話が始まるみたいな感じを、
いまはすごく受けています。
変な話、いまタレントの人が
自分の恋愛を告白したりとかしてますよね。
それも、同じ流れだと思うんです。
各個人が「何を守るために
仮面をかぶってるんだろう」ということを
すごく突きつけられている気がして。
思い切って仮面を脱いだときには、
けなされるかもしれないし、
それはダメだよと言われるかもしれない。
でも、それでもいまは各個人が、
「カッコつけるか、それとも
正直な話をするか?」なら、
正直な話をしてしまったほうが、
いい気がするんですよね。
糸井
ほんとにそうだねえ、ほんとそうだ。
隙があるとか、弱みがあるとかも含めて、
しょうがないよね。
そんなところをメッキしてもね。
しいたけ.
しょうがないと思います。
むしろ「社運を賭けてやったけど
大失敗した」とか、そっちの話のほうが、
たぶんおもしろがってもらえて、
応援されるというか。
糸井
そんな感じで大丈夫?
──
ありがとうございます。聞けて嬉しいです。
糸井
こんなところかな。
実はぼくは今日、会う前から
しいたけ.さんのことを勝手に
「感性が似てるかも」と
思ってたんですけど、ほんと似てましたね。
しいたけ.
そうですね。
僭越ですが、こんなに話が合って
いいのかなと思った瞬間が
何度かありました。
すごくおもしろかったです。
糸井
ぼくもおもしろかったです。
ありがとうございました。
しいたけ.
こちらこそ、ありがとうございました。

(しいたけ.さんと糸井重里の対談は
こちらでおしまいです。
お読みいただき、ありがとうございました)