HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

はじめまして、しいたけ.です。

VOGUE GIRLで毎週掲載されている
「しいたけ占い」やnoteの連載で
大人気の占い師・しいたけ.さんが、
ほぼ日に遊びに来てくれました。
きっかけは、糸井重里がもともと
しいたけ.さんの占いを愛読していて、
さらに最近ではTwitter上での
やりとりも生まれていたこと。
「はじめまして」の機会でしたが、
実は物事の感じ方が似ていたふたり。
話はおおいに盛り上がりました。
この日は占いの背景にある、
しいたけ.さん自身の過去のお話や、
大事にしている考え方などを
いろいろと教えてもらいました。
全6回、どうぞおたのしみください。

しいたけ.さんプロフィール

イラストレーション:タロアウト

1. 手紙を書いている。

しいたけ.
しいたけ.です。はじめまして。
糸井
こんにちは。こんなかたなんですね。
顔を出していらっしゃらないから、
どんな人なんだろうと思っていました。
よく使っているイラストは男性だけど、
実は女性ということだって
あるかもしれないし(笑)。
しいたけ.
そうですよね(笑)、
今日はよろしくおねがいします。
糸井
こちらこそよろしくおねがいします。
しいたけ.
糸井さんにはずっと
お会いしたかったんです。
だから、今日はとても嬉しくて。
糸井
そうですか、ありがとうございます。
しいたけ.
だからいろいろ聞きたいことを
準備してたんですけど、さきほど糸井さんの
「ブイコちゃんが家に来た」という
報告のツイートを見て、
話したかったことがすべてふっとびました。
かわいすぎて。
※この日は糸井がTwitterで愛犬のブイコが
家に来たことを初めて公開した日でした。
糸井
ぼくもちょっとダメですね。
昨日の夕方にブイコが来たんですけど、
おとといから眠れなくなって、
ずーっと睡眠不足で(笑)。
でも大丈夫です。
しいたけ.
よろしくおねがいします。
糸井
ぼく自身はしいたけ.さんの占いを
見るようになって一年以上かな。
もともと社内の人が「しいたけ占い」を見て
ワーキャーしていたんです。
それで
「そんなにおもしろいんだ?」と見たら、
ぼくにもおもしろかったんですよ。
本やムックも買ってます。
しいたけ.
わぁ、ありがとうございます。
糸井
ただ、おかしいんだけど、
本を買っても自分のところしか
読まないですね。
書くほうとしては、仕事の12分の1しか
役立ててもらえない職業というか。
しいたけ.
そこなんですよね。
糸井
だからもし
「山羊座と蟹座は同じことを
書いてやったぜ、へへ」とかしても
気づかれない可能性がありますね。
しいたけ.
はい、もちろんちゃんと
書いてますけれども(笑)。
中には全部チェックされているかたも
いるようなんですが、
基本的にはほとんどのかたにとって
12分の11が余計なので、
常にその葛藤は抱えています。
糸井
それ、大変ですよね。
にもかかわらず、しいたけ.さんはずっと
毎週タフに続けていて。
ぼくにはそのタフな感じもおもしろくて。
しいたけ.
タフ、そうですね(笑)。
VOGUE GIRLのかたから最初に
「しいたけ占い」のお話をいただいたとき、
実はぼくとしては
「ぜんぜん知らない人たちに向かって
手紙が書けるな」と思ったんです。
糸井
へえー! ほんとそうですね、手紙ですね。
しいたけ.
昔、自分が学生のときとか、
もっと手紙を書きたくてしょうがない気分が
あった気がするんです。
だけどいま、手紙ってほとんど
書かないじゃないですか。
メールや電話のやりとりになって、
書く時間をとることすら難しい。
ただ、それでもぼくはいまも、
手紙を書く時間ほど素敵なものはない
と思っているんですね。
だから、何とかそれを仕事にできたら
嬉しいなと思っていたら、
VOGUE GIRLのかたから、
ぴったりのお話をいただいたんです。
糸井
手紙って、文字に「手」と入ってるけど、
まさに「手仕事」ですよね。
相手の人にしか伝わらないかも
しれないことを、
時間をかけて書いていくという。
しいたけ.
そう、まさしく手仕事で、
もちろん用件を伝えるだけなら、
メールや電話のほうが速いし便利なんです。
けれど実際には手紙の持つ
「遠回り性」みたいなものにも、
すごく良さがある。
たとえば手紙で
「元気ですか? そろそろ夏が終わりますね」
とか書きはじめるとき、
書くほうはすでに相手と一緒にいる
情景をイメージしながら
「秋に一緒に釣りに行けたらいいですね」
と考えてたりするんです。
やっぱり携帯のメールなどでは、
その情景までは浮かびにくいというか。
糸井
たしかに手紙だと、そういうことを
考えながら書いてますね。
しいたけ.
こういうことを言うのもなんですけど、
ぼくはまさに糸井さんの文章にも
「手紙性」を感じるんです。
糸井さんのことばって、
糸井さんがそれこそ障子の前とかで、
読む人たちのことを想像しながら
時間をかけて書かれている感じが
あるというか。
糸井
ああ、なるほど。
しいたけ.
そして、良い意味で、受け手側が
聞いても聞かなくても大丈夫というか。
‥‥というのが、
ぼくはメッセージ性が強すぎることばが
ちょっと苦手なんですね。
「わたしはこれだけ苦労をして、
これだけのことを達成してきたから、
みんなも絶対こうしたほうがいい」
みたいなことばって、
なんだか威圧される感じを受けるんです。
聞きたくなくても聞かなきゃいけないような
気がしてしまって。
でも、糸井さんのことばは、
もっと出入りが自由な印象を受けるんです。
心づくしというか。
糸井
そういう性格というか。
ぼくもいまの
「メッセージ性が強すぎることば」
については、まったく同じことを思うので、
自分はそういう表現を
避けてると思うんです。
しいたけ.
ああー。
糸井
「ことばを届ける」って、ほんとは
金魚すくいみたいなものだと思うんですね。
力を抜いて、スーッと
なでるようにすくわないと、
なにかが破けてしまうというか。
しいたけ.
ぼくはよく「ことばが本当に届くって
どういうことだろう?」とか
考えるんですけど、
何かを強く「届けよう!」とか
思いすぎるときって、
意外と届かないことが多い気がしています。
糸井
ジュンサイって、プルプルごとが
ジュンサイじゃないですか。
ことばも同じで、周りのプルプルまで込みで、
そのことばだと思うんです。
そういうのじゃないと、
結局のところ何も伝わらない。
だからぼくは
「水ごとすくってメダカを差し出す」
みたいなことばかりしてると思うんです。
しいたけ.
はぁー。
糸井
さらに言えば、
伝えることのおおもとには、やっぱり
「恥ずかしさ」があると思うんですね。
「何か言う」って恥ずかしいことで、
実際にはいつでも言い足りないことや
言い過ぎたことだらけなわけで。
「これでぜんぶ言えた」と思っているときは、
実はほんとうに全部を
言えてるときじゃないですよね。
「言えてないんだよな」という気持ちとともに
言うことばのほうがほんとうというか。
しいたけ.
はい。そうだと思います。
糸井
そして、しいたけ.さんの文章の書きかたも、
ぼくがいま言ったことと符合しますよね。
読みながら「誤解されたくないけども、
簡単に言い切ってしまうのではなく、
繊細なところまで含めて
できるだけほんとのことを言いたい」
というのが、よく伝わってくるから。
しいたけ.さん自身も
そういう感覚なんでしょうね。
しいたけ.
はい。そういう思いはすごくありますね。

(つづきます)