どうなる幸せな家庭、
どうする幸せな家庭?!

不徹底大討論会議事録。

第12回 タイタニック。



糸井 深く考えすぎてたら
結婚もできないし、日常生活、
ぜんぶ無理が出てくるよね。
慶一 飛びこんでいかないと、
ハッピーはないのかもなぁ。
糸井 できちゃった結婚した人って、
意外とうまくいってるケース、多いよね。
それも、まちがいの中に飛びこんだわけで。
既婚 確かに、子どもがいるということで
解決する問題はいっぱいあるかもしれない。
次から次へとやってくる山を
乗りこえたふたりになれるんじゃないですか。
ふたりだけだと、お互いのことをよく観るから。
子どもがいなくなった瞬間に
勝負がやってくる夫婦というのも聞きますね。
糸井 それは、よく語られる問題ですね。
観客 老後に勝負、で思い出したんですけど、
『マディソン郡の橋』が
昔に小説も映画もヒットしたじゃないですか。
あれ、ずっと結婚していたけど
死んだあとにダンナの墓じゃなくて、
ぜんぜん違うところに捨ててほしいっていう映画で。

あれはダンナは死んでしまっているから
気づかないですんだけど、
その奥さんの思いに対して、子どもが
その気持ちわかるとか考えていることがおそろしい。
ああいうのって、幸せなんですかね?
リリー あんな気分の悪い映画はなかったですね。
糸井 小説で読んだけど、ほんと腹が立ったねぇ。
観客 あれで感動した人がわりといたということに、
ショックを受けたんですよ・・・。
あれが幸せなら、なんなんだ、っていう。
糸井 あのカメラマンの役が、
一般的に思われている慶一くんなんだよね。
あれ、ケーキ屋ケンちゃんでしょ?
リリー 自分が結婚して、自分が奥さんよりも先に死んで、
その奥さんが自分が死んだあとに
ほかの男とセックスすることを想像したら、
一緒に死んでもらいたいもんね。
糸井 (笑)もういまから決まってるんだ?
たしかに、動物として、
女の人は受け入れられるようにできてるって。
観客 女性のほうが、たくましい。
リリー 逆に男は、トシとってから
かみさんに先立たれると、ほんとうに
スカスカになっちゃうじゃないですか。

死んじゃってから、
魂もすべてなくなって、
起きてることがわけわかんなくなればいいけど、
浮遊してて、見るようなことに
させられた日にゃあ・・・。
観客 (笑)
リリー 死んでまでそんなくだらないやきもちを
焼かないといけないとしたら・・・。
糸井 (笑)浮遊してるんだ?
リリー もしかしたら、
そんなこともあるかもしれないでしょ。
キツイですよ、死んだあと苦労するのは。
糸井 浮遊は、イヤだねぇ。
たのしく笑っている姿を見るだけでイヤかも。
リリー しかも死んだあと、ヒマでさぁ。
それを見るばっかりの生活になっちゃって。
糸井 ぶらぶらしてるんだ?
リリー ぶらぶらしてても生活できたりしてて。
既婚者 『マディソン郡の橋』に
賛同はしないけど、可能性はあるような気がする。
糸井 マディソン郡だけじゃなくって、
女の人は、恋愛映画好きですよね?
あれって、何を思ってみているんですか?
リリー 映画の見方だけど、
ほとんどの女の人は、映画を
恋愛映画だと思ってみるけれども、
『タイタニック』をみて、男はあれ、
パニック映画だと思ってますからねぇ。
糸井 (笑)
リリー あれ、恋愛映画だと思ってみたら、
主人公の女、あんなスベタはいないですよ?

だって、いくらメジャーに行ってる
長谷川にそっくりの婚約者が
イヤだったとしても・・・。
糸井 (笑)
リリー でも、あいつとケイト・ウィンスレットは、
かたちだけでも婚約者なわけでしょう?
それを、イヤだイヤだと言いながら、
ゆきずりのあんな
貧乏絵描きとセックスするじゃないですか。

それでやるならやったで、
じゃあもうディカプリオと
よろしくやってくれよ、と思うのに、
ディカプリオに絵を描いてもらう時に
首につけてるのが、
長谷川にもらったネックレスなんです。
糸井 (笑)ははは。
リリー おまえ、どっちなんだ、っていう。
それを女の子と一緒にみにいった時に、
その女の子は、わたしでもつける、と。
どうせならキレイに描いてほしいから、って。
それを聞いた瞬間に「ヤなやつだなぁ」と思った。

ほかの女の人に聞いたら、
あのネックレスをつけてるシーンでさめた、
って人もいましたけど。
糸井 そう言ってくれる人は、いいなと思ったんだ?
リリー ええ。
いいなと思ったんですけど、
でもあの映画でいちばんおもしろいシーンは
船がバキッ!って折れるシーンですよね。
慶一 (笑)
リリー すげぇ、あれどうやって撮ってるんだろうなぁ、
っていうのがおもしろいだけの映画ですからね。

でもあそこでネックレスをかけて、
美しく描いてもらいたい、という人とは、
一生、男は平行線をたどるだろうなぁ。
糸井 あの船のさきっちょで
腰を持つシーンは、あれは何だろうねぇ。
リリー あれ俺けっこう氷川丸でよくやりますよ?
糸井 (笑)あの、勇気を出して飛ぼうというシーンって、
そそのかしている男に感情移入するのも難しいし、
女にも感情移入するのが難しいし、
長谷川にも感情移入しづらい・・・。
どうすればいいの?
リリー いや、長谷川には最後に感情移入できるんです。
もう、宝石を持って逃げるわ、
船に水は入ってくるわ、のシーンで
ケイト・ウィンスレットに向けて拳銃を撃つ時、
「当たれ!」って思ったもん。
糸井 (笑)
リリー 死ねばいいのに、あの女、って。
糸井 チカラあるもんね。鎖断ち切ったり。
一人でも生きていける女だよねー。
リリー そんで結局・・・。
糸井 生き残ったもんね。
リリー いちばん泣けたというか、
涙がやっと出たシーンは、
そのババァが最後に映った時に、
ディカプリオが死んだあとも
いろんな男とつきあったシーンが
写真になって飾ってあったとこですよ。
・・・この連中はつらいって。・・・泣けた。
糸井 ああいう種族と
意味のあるキャッチボールをするとしたら、
壊れるに決まってるじゃない。
だから意味の交換はよくないんですよ。
観客 男で感動する人は、あんまりいないですね。
慶一 いやぁ・・・俺、あの映画、
船に水が入ってからあとしかみてないわ。
糸井 あははは(笑)。
慶一 それでもなんとなくおもしろかったから、
それでいいや、って思ってたんだけど。
リリー (笑)いちばんいい見方ですね。
糸井 そうだよ。
前をずうっと耐えていて、
いったいどうするつもりなんだよ、
って思っている時に、
「みなさんお待たせしました。
 知ってのとおり、船がこわれますよぅ」
っていう展開だもん。
観客 氷山が出てきた時、ホッとした。
糸井 そうそう。ようやく!って。
それでもなきゃあ、バスの中でもなんでも
やってることはおなじだからねー。


(つづきます)

2002-05-12-SUN

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