どうなる幸せな家庭、
どうする幸せな家庭?!

不徹底大討論会議事録。

第2回 暴走族とバンド。




リリー よく中目黒のカフェとかで、若い子たちが、
「もう男も女もないじゃん。
 俺ら気も合うし。ラブ&ピースだよねぇ。
 ・・・あ、このレコード貸すよ」
とか言ってんのを聞くと、
もう、そんなの俺はもうどうでもいい!って。

もっとこう、キワッキワのところで、
「この人しかいない」みたいになったらいいなぁ。
糸井 (笑)その発想・・・。
リリーさんって、男子高出身?
リリー いや逆に女子の多い学校でした。
糸井 でも、それ極道とかゲイの感覚だよ。
ちょっとわかるけど・・・。
「入れ墨入れたい」とか。
リリー 俺、書きかけた小説があるんですけど、
そういう男女の関係で、もう、
相手が自由にできなくてもいいから、
もうどこかを切断してしまおう、とか。
でも、「結局はそこのない人が好き」っていう
ジャンルの人もどこかにはいるから、
どうしたって他者の介入は受ける・・・。
糸井 (笑)
リリー ホームパーティーに関しても、
まぁ、「いいねぇ」というのはあったけど、
そんなもの、俺はカスリもしない人生だったから。
慶一 (笑)
リリー 一応は、「あれいいな」と思って
ホームパーティーを
2回3回ぐらいやってみるんだけど、そのうち、
「あれ? 男どうしで飲むほうが、
 おもしろいんじゃないのか」
というのを発見しはじめるんです。
糸井 そうそう。
リリー ホームパーティーをするよりも、
男どうしで飲んでいるところに
彼女を呼ぶほうが気持ちいいんです。
糸井 そういう時の彼女は、
その男どうしの乗りのところに
入っていける人を選ぶ?
それとも、入っていけない人がいい?
リリー 昔は、入っていけない人のほうが
いいと思ったんです。
昔は、たとえば彼女を呼んで彼女が来た時、
もうほんとなんかもう、
藤原紀香みたいなミニスカートはいて出てきて、
俺らが帰ったあとに
ともだちがガックリするようなのがいい、
って思ってたんだけど・・・。

いまは絶対もうそうじゃない。
男ともだちと楽しく飲める人じゃないと
自分が楽しく飲めないし、
酔いかたもだらしなくなってるから、
だらしないともだちの俺らを含めて
お母さんみたいに接してくれるほうが。
糸井 あははは(笑)。

あのさ、暴走族はなんでうまくいくの?
リリー ビッとしてるからじゃないですか。
糸井 あはははは(笑)
リリー たしかに、俺のともだちでそれ系の人って
ほんと子沢山で、ちゃんと働いていますよ。

・・・幸せのためには、情報は
あんまりないほうがいいかもしれない。
糸井 自由だと思って、選択枝を増やして
どんどん自分を追いこんでいくのは、
もう現代病のひとつだよね。
リリー いま、ネットも携帯も盛んで
便利なのがいいことだと
みんな思うかもしれないけど、
携帯電話があるばっかりに
いままで味わいもしなかった悲しい思いが
やってくるわけだし、人はどんどん
人のことをうたがうようになるでしょ?
暴走族は、そういうこう、
ウヨウヨしたものがないんですよ。
糸井 ビッとしてるから。
慶一 いいよなぁ。
糸井 そこでいいのって、
「諦観」があるからじゃないの?

たとえばダンナの自動車修理工場が
うまくなって工場を大きくして、
クラブに行くようになってみたときに、
「男はそういうものだから、
 よしこさん、許してあげてちょうだいね」
みたいな・・・そういう、
「しょうがない」ということを含んでる。
リリー 暴走族のやつって、
決めたがるじゃないですか。
もう16歳になったら単車には乗らないとか。
そういうのがちゃんとしているから。
ぼくらなんかだと、40歳になってから
バイクに乗りはじめたりとか、もう・・・。
糸井 様式美の世界。
暴走族は、きまりを守りながらも、
「裏がある」って知ってる気がするんですよ。
16歳で、とか言っていても、
「例外がある」ということを知っている気がする。
意志でできることなんかあまりない。
できなかったら、坊主になったり
様式美で反省して復活するとか・・・。

うまくいくコツって、
自分のせいじゃないことを増やすことじゃない?
約束をしちゃうと、
「守れない」ってことが増えて、
自分と相手を攻める要素が増えるじゃないですか。
しょうがないということも含めて、
相手も「どうせそうだよ」とわかったら最高ですよね。
暴走族の人間観って、もともと人間は
しょうがないもんだとわかってるから
すごいんじゃない? 人間観がすぐれてるという。

「人間はしょうがないものだし、
 利口な人たちはいろんなことを言うけど、
 俺たちは俺たちで、やることをやらなきゃ」って。
リリー 暴走族のヘッドとか
サル山のボスザルの女に手を出す馬鹿、
いないじゃないですか。
でも、ちょっと知恵がつきはじめると、
ボスの女に平気で手をつけるやつがいる。
だからおかしくなるんですよ。
慶一 うん。
リリー 慶一さんのバンドは長く続いていますよね。
バンドってすぐ喧嘩して解散するけど。
糸井 そうだよ、慶一くんって、
バンドは人から見たら「幸せな家庭」だよ?
慶一 バンドが幸せだから、
みんな家庭は困ってるっていうのかも。
糸井 バンドにいる限りは幸せでしょ?
慶一 うん。楽しいね。
糸井 ・・・ひとつあればいいんじゃない?(笑)
慶一 (笑)
リリー 慶一さん、バンドが家族になってるから、
それでいいというか。
糸井 俺もそれ言おうと思ってた(笑)。
いくつも、は、無理なんじゃないか。
慶一 たしかに、結婚した時にはみんなが
ちょっと冷たい目になって、
バンドというファミリーがズレてきた。
バンド最優先にできないから。
それで活動休んじゃったり。
糸井 あぁ、なるほど。
休む時期と結婚は重なってるんだ?
慶一 うん。
糸井 リリーさんは、常に
男どうしで無駄な時間を作っているじゃないですか。
仮に家庭を持ったとして、無駄な時間を過ごす時に
「俺、用事があるから帰るよ」って言えますか?
リリー 言えない。
糸井 じゃあ、そこに集まっている
無為な時間がリリーさんの理想の家庭だから・・・。
慶一 (笑)やっぱ、ひとつでいいんじゃない?
リリー (笑)

(次回につづく)

2002-04-28-SUN

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