永江朗さんが聞き、糸井重里がこたえた 「宣伝会議」の特別講義。いま、「コミュニケーション」とは。
永江朗さんが聞き、糸井重里がこたえた 「宣伝会議」の特別講義。いま、「コミュニケーション」とは。
 
人の生活が変わり、広告も変わる。 そのとき、自分は何をするのか。
糸井 つまり、今の時代は
「インターネット」によって
みんなが情報を共有している。

全員の預金がひとつの銀行にあって
お金を使いたい人は
いつでも、
いくらでもおろせるっていう状況。

釣りばかりしていたときに
そういう時代が来たら、
何がどんなふうに起こるだろうって、
ずっと考えていたんです。

というのも、
「作っている人は知っているけれども、
 買う人は知らなかった」という時代に 情報を小出しにして
教えてあげたりしていただけなのが
それまでの「広告」だったわけですから。
永江 はい。
糸井 インターネットによって
人類全体の
埋もれた情報が表に出てきたとき、
今までの広告のやり方っていうのは
絶対に変わる。

そしてそのとき、
広告が変わるだけではなくて、
人間の消費行動も変っていく。
「生活」そのものが変わるんです。

そういう時代に、
自分は何をするのか。
そんな順番で多分、考えてました。

テレビや新聞という
いわば不動産価値のあるメディアで
面積あたりいくら、
時間あたりいくら、
という考え方で稼げた時代が終わったとき、
すべてが様変わりするはずなんですよ。
永江 細かい質問をふたつ、みっつ。
「年収を今の倍にするには
 どうしたらいいですか?」
‥‥知っていたら、もうやってますよね。
糸井 その質問を思いついた人は
えらいなと思いますね。
つまり、
年収を「2割増し」にするだけでも
簡単そうで、実は相当難しい。
永江 フリーライターの場合、
年収を倍にするには
仕事を倍にすればいいんですけれど。
糸井 仕事を倍にするには
どうしたらいいんですか?
永江 愛想を良くする、
ぐらいですかね(笑)。
糸井 でも、すごく良い作品が書けたとしても
仕事が2割増しになるわけでも
ないと思うんですよ。

ゼロになってもいい、
と思って一年を棒に振って、
本当に良い仕事ができたとします。
そうしたら次の年、
3倍になりますよね。
永江 そうですね!
糸井 だからその2割増しにするよりも
さらに、「倍にしたい」という場合には
「今の自分を辞めなさい」
「脱ぎ変えなさい」っていうことですよね。
非常に観念的な答えですけれど、

今のあなた自身が
今の年収に表れているんだから、
今のあなたのままでは無理ですよ、と。
永江

年収3000万円の人が
年収6000万円にしたければ
服を脱ぎかえるだけでなく、
別人にならないとダメですよね。

それでは、
「新聞はなくなってしまうと
 思いますか?」

糸井 僕は予言者じゃないですけど、
残るでしょうね。
毎朝、「紙」で
読みたいっていうニーズは。
永江 マネー本を50冊読んだときに、
自分に投資するのが最大の投資だ、と
いろんな人が言っているんです。

で、自分に対する
一番の投資は何かというと、
新聞をちゃんと読むことだ、と。
糸井 新聞の良いところって、
自分のためだけじゃなく
他人のための情報までも、
毎朝、自分の家に届けられる、
ってことだと思うんですよ。

つまり、情報って
自分から探しにいっても
なかなか新しいものを
見つけられないんですよね。
永江 ‥‥続きまして
これまた難しい質問です。
「広告を作るうえで
 一番大切にしていることは
 なんですか?」
糸井 この商品、サービスは
しっかり届けられたほうがいい、
と確信を持つことですね。
永江 社会的意義、
ということでしょうか?
糸井 それに近いと思います。
実際、まったくダメな商品ていうのは
そんなにはないんですよね。
取り柄のない人間がいないように、
案外、ひとつくらい取り柄があるんですよ。
永江 どんな商品にも、
存在意義はある(笑)。
糸井 そして、
その取り柄を見つけられるまで
書かないことですよね。
書くよりも、考えることです。
永江 ずっと腕組みをしてるんですか?
糸井 発表されてから
人々がどんなふうに口にしているかとか、
そっちを先に考えるんです。
永江 あぁ。
イメージですね。
糸井 世に出てからは、「迷惑だ」って声が
聞こえてくることもありますから
そこまで考え抜くことですよね。
<続きます!>
2006-02-02