はたらくことのおもしろさ。 佐々木俊尚×糸井重里 はたらくことのおもしろさ。 佐々木俊尚×糸井重里
作家・ジャーナリストの佐々木俊尚さんと
糸井重里が「はたらくこと」をテーマに
トークイベントを行いました。
話はさまざまな方向に転がり、
「(よくしゃべったのは)会場の若い人たちが
とても真剣に聞いていたから、
その熱のせいなんじゃないかとも思えました」と、
糸井は翌日の「今日のダーリン」に書きました。
とくに白熱したのは最後の質疑応答の時間で、
会場の方からたくさんの質問が挙がったんです。
その様子もふくめての全7回、
どうぞご覧ください。

※今回の対談は、佐々木俊尚さん、松浦弥太郎さん、
灯台もと暮らし、箱庭が運営する
コミュニティ「SUSONO(すその)」の企画で
おこなわれました。
「SUSONO」については、こちらからどうぞ
3週間無料のクーポンもあるそうですよ。
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第4回:いま必要なお金について考える。
佐々木
よく日本の企業は加点主義ではなく
減点主義だと言われますけど、
われわれ日本人は自分自身を
減点主義にしちゃっている気がするんです。
できるだけ失敗しないように、という
強迫観念があるのかもしれません。
糸井
努力が継続しやすいところに
自分を置きたがるんですよね。
「これについて10日間考えた」
と言うだけで努力した感じがしますが、
思いつきで言ったことがあたったりすると、
人はフロック(まぐれ)だとか言うんです。
でも、たまたまあたった人に、
他の人は食わしてもらってるわけじゃないですか。
佐々木
10日間考えたからって
いいものができるわけじゃない、と。
糸井
そうなんです。
それと、もうひとつ、
あたるかも、と思ってから本気になった人は、
割合強いんですよ。
ヤフーの検索エンジンとかも、
最初に考えた人はたくさんいると思います。
だけど、みんなが喜ぶからもっとこうしよう、
みたいな手作業をいっぱい繰り返して、
ヤフーという会社に仕立てあげたのは
経営者のセンスだと思うんですよね。
佐々木
これはイケると思ったときに、
どこまでガーッと集中できるか。
糸井
そう。本気を出せるか。
それをしないで、あとから
「ああ、それはあたるって俺わかってたんだよ」
なんて言う人もいますけど。
佐々木
あとから言う人、いますね。
「ほぼ日手帳、ああなるとわかってたよ」みたいな。
糸井
そうですね。
アイデアなんて、サケの卵じゃないんだから、
何万個もいらないと思うんですよ。
だけど、ある程度、
芽が出そうだな、というものがあるといいですね。
芽のなかには、儲かる仕事になるものもあるし、
あまり儲からないけど、
ものすごくいろんな人が喜びそうだなという
仕事もあると思います。
うちで言うと、お金の面から言ったら、
みんなに責められてしまいそうな、
「ドコノコ」というアプリがあるんです。
みんなが自分の家の犬猫を登録して、
写真を撮ったらそこに載せていって、
フェイスブックみたいに
見ることができるものなんですけど。
佐々木
犬猫のSNSみたいな感じですか。
糸井
そう。
ただ、どうやって儲けるか考えずに
つくっちゃったんです。
でも、絶対必要なものだと思っています。
野良猫でも名前のついている
野良猫はいじめられないんですよ。
ご飯をあげている者同士が知り合って、
「私、旅行に行くんですけど
頼んでいいですか?」と言ったら、
「いいですよ、私がごはんを持って行きましょう」
なんてことも言えるわけで。
登録することで知り合う犬猫が増えて、
犬猫が迷子になったときには、
同じ地域の人が探してくれる掲示板もあって、
その結果、助けられる犬猫の数が
すごく増えると思っています。
佐々木
たしかに、そうでしょうね。
糸井
たとえば、戯画的だけど、
紛争地域の国境線の向こうとこっちで、
「ドコノコ」をやっていて、
その間に猫がいたら、
お互いの「近所の猫」になるわけですよ。
敵の地域にいるあの猫、無事かしら、
そういう心配をしあえますよね。
そんな状況も含めて、
ぼくらはできたらいいなと思っています。
佐々木
それは、ほぼ日の誰かが考えたんですか?
糸井
ぼくが考えました。
もう2年近くやっていて、
15万人ぐらいの人が登録してくれていますが、
広告も取ってないし、お金にならないです。
何してるんだ、って思います。
切り株の前に座ってメンテナンスをしながら、
待ちぼうけです(笑)。
佐々木
最近考えるんですけど、
たとえばグーグルって、
検索エンジンとか、メールとか、地図とか、
すごく有用なサービスを提供していますが、
実際はそれで儲けているわけじゃなくて、
広告で儲けているわけでしょう。
なんか、自分の好きなことで儲けなくても、
お金が勝手に降ってくる仕組みをつくれば、
ラクかもしれないなと思うんです。
糸井
そうですね。
佐々木
でも、たとえば、
ぼくのファンが目の前にいるとします。
その人に向き合って、
その人からお金もらうのが
一番単純で手っ取り早いし、
そういうモデルはよくありますよね。
でも、それってやりすぎると
よくないなともすごく思うんです。
情報商材とか自己啓発とかみたいになっちゃう。
糸井
あれはたぶん、最後のビジネスの形ですよね。
佐々木
最後のビジネス。
糸井
ぼくは、あれは、
終わりを意味していると思うんです。
何を書くかの話じゃなくて、
どう書いたら儲かるか、の
話をしているわけなので。
お金儲けに関しては、
いま必要なお金について、みんなもっと
本気で考えたほうがいいような気がします。
「ないない」って言うけど、
何を基準にして「ない」と言ってるんだろう。
少なくとも、勤め先がある人は、
次の時代の自分の生き方を
どういうふうにしたいのかを考えるのが、
実はポイントかと思います。
佐々木
その話に関して言うと、
ぼくの知り合いが、ある地方に住んでいるんです。
東京に住んでいたころは
年収800万円くらいあったけれど、
それでも本人は生活が
結構カツカツだったと言っていて。
まあ、東京で子どももいると、
そうかもしれません。
それが、引っ越したあとは、
年収は300万円に満たないくらいなんですが、
家賃のいらない家に住んで、
野菜や米は近所の農家さんからもらえるから、
100万円くらいしか使わないらしい。
つまり、可処分所得が200万円あって、
それで年に何回か三ツ星のレストランに
行ったりできるそうなんです。
そういう話を聞くと、
経済の問題じゃなくて、文化の問題によって
見方が変わってくるなと感じます。
糸井
結局、お金を得て何がしたいかというところを、
貯めてから考えようと思うとわからなくなるし、
いくらあっても足りないってなるんですよね。
もう一つは、
「病気になったらどうしよう」ということを、
わりとみんなが無意識で考えていますよね。
佐々木
そうですね。
でも、日本は高額治療費負担制度があるから、
実際に病気になっても
そこまで高額な治療費はかからないんですけどね。
糸井
そういうことを考えると、
漠然とした安心を買うための経費が高すぎますね。
佐々木
たしかに。
前、北欧在住の人と話していたら、
むこうの人はあまり貯金をしない、
という話になったんです。
なんで貯金しないのか聞いたら、
そもそも貯蓄で老後を維持するなんて
現実的じゃない、と。
よく、週刊誌とかで
老後に1億円必要だなんて書いていますが、
1億円貯めてる人は、
そんなにいないですよね。
それよりも、生活圏内に友人がいることで
助けてもらえるという安心感があるから、
べつにそんなにお金は貯めてない、
みたいな話をしてたんです。
まあ、そういう感覚が大事なのかなとも思います。
糸井
たぶん、一族みんなが
地元に住んでいる時代には、
そこで助け合いをしていたはずですよね。
めんどくさい親戚のおじさんとかに
いい顔しなきゃならないのも、
あれはあれで、あの時代のお金がないなりの、
一つの助け合い、
安心の積み立てだったわけです。
いま、親戚というものが、
そういう使い方じゃなくなったから、
親戚がいないほうがいい、になってしまった。
いないほうがいいとなったら、
それぞれ親戚をなくした人たちが、
自前で安心を手に入れなきゃならなくなった。
そのために、みんながちょっと
多めにお金が必要な気がしているんだと思います。
佐々木
それでがむしゃらにはたらかなきゃいけない、
という状況が生まれて。
それなら、さっきの地方在住の男性みたいに、
年収300万以下で生活を成り立たせて、
空く時間もいっぱいあるような暮らしをして、
ぼんやり遊んでいれば、
そこでいろんなアイデアとか思い付きが出てきて、
新しいビジネスにつながって、
いいんじゃないかなと思います。
糸井
あり得ると思います。
ただ、そういう暮らしもいいと思うんですけど、
単純に都会がだめだともいいきれなくて、
東京って、人と人とがギューギュー
押し合いへし合いしながらいる、
という快感があるんですね。
密集してるからこそおもしろいんですよ。
佐々木
たしかに。
半径1キロぐらいのところに点在していたら、
集まっている感じがしないですよね。
糸井
舞台でもバラバラに席が空いていたら、
つまんなかったと言われがちなんですよ。
自分の群れが自分を支えているような、
愛されている感じに近い何かがあって、
それが東京にいるということの
おもしろさだと思います。
(続きます)
2018-06-29-FRI