はたらくことのおもしろさ。 佐々木俊尚×糸井重里 はたらくことのおもしろさ。 佐々木俊尚×糸井重里
作家・ジャーナリストの佐々木俊尚さんと
糸井重里が「はたらくこと」をテーマに
トークイベントを行いました。
話はさまざまな方向に転がり、
「(よくしゃべったのは)会場の若い人たちが
とても真剣に聞いていたから、
その熱のせいなんじゃないかとも思えました」と、
糸井は翌日の「今日のダーリン」に書きました。
とくに白熱したのは最後の質疑応答の時間で、
会場の方からたくさんの質問が挙がったんです。
その様子もふくめての全7回、
どうぞご覧ください。

※今回の対談は、佐々木俊尚さん、松浦弥太郎さん、
灯台もと暮らし、箱庭が運営する
コミュニティ「SUSONO(すその)」の企画で
おこなわれました。
「SUSONO」については、こちらからどうぞ
3週間無料のクーポンもあるそうですよ。
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2 プレゼンテーションの無駄。
佐々木
いまの社会って、
目標は高く持たなきゃというような
空気があると思うんです。
たとえば、ベンチャーの経営者で、
まだ20代で、会社をつくってまだ社員も数名、
みたいな人たちに目標を聞くと、
「年収1000億円」と言うわけです。
無理だろうそれは、と思うんだけど。
糸井
「言うだけタダだから」ってことですよね。
責任を持ってものを考えている人だったら、
目標はどんどん低くなるとぼくは思っています。
昔、宮藤官九郎さんと対談をしたときに、
「あなたはいいね、目標が低くて」と
言った覚えがあって。
佐々木
あまりそういう褒め言葉はないですよね。
糸井
(笑)そうですね。
でも、心からそう思ったんです。
そしたら、「そうなんですよ」と。
人から見たら、
宮藤さんがやっていることは
憧れの対象になることかもしれないけど、
でも、宮藤さんは、
その都度、目の前にある「できること」から
はじめているんです。
そんなふうにしていると、
自然と目標は低くなると思います。
佐々木
ただ、企業に勤めていると、
やたらと高い目標を提示されることがありますよね。
上から命ぜられて毎年ノルマが上がっていく、
というような。
株主がいる会社だと、
クォーターごとの売上成長を求められて大変、
みたいな話をよく聞きます。
糸井さんの会社はどうかわからないんですが、
そこをかわすことはできるんでしょうか。
糸井
うちはたぶん、
そういうことと関係なくやってます。
成長の戦略に関して、
「こうでなければ」という話もよくされるんですが、
「そういうふうにしたいと思って
上場するわけではないです」
という話をしています。
ぼくが思うのは、株主の方も最終的には
「あの会社大きくなったね」という話がしたいわけで、
短い期間に上がった下がった、というのを、
目の前にある数字で見せられても、
あまり意味はないんですよ。
佐々木
日本とアメリカの投資状況の違いに
よくそのことが挙げられています。
どうしても日本は短期の結果に目がいきがちで、
四半期ごとに売り上げを立てなければ、
と投資家も言えば、
上司も、経営者も言うみたいな、
そういう圧力があるんですよね。
糸井
そう。ただ、ぼくは、
「そういうのはどうかと思うよね」
と言う人たちの数のほうが
本当は多いように思っているんです。
佐々木
なるほど。
糸井
やっぱり一番知りたいのは、
会社を動かしていく人がどうなりたいのか、
その視線の先に何があるんだろう、
何かあったときどういう態度をとるんだろう、
ということですよね。
ある意味で健康的というか、
人を育てるのと同じような目で
会社を見ようとしている人が多いと思います。
だから、たとえばぼくが優等生的に、
「いま、こういう計画をしています」
という話を、しどろもどろに言ってもしょうがない、
と自分でも思っているんです。
みんなが本当に知りたいのは、
ぼくがどういうことを考えているかだから。
佐々木
本当はそうなのに、
みんななんでそれを聞かないんでしょう。
糸井
つまり、つまんないことをしていたほうが、
「仕事した」というハンコが
押されるからだと思います。
佐々木
なるほど。
糸井
あの会社おもしろいな、
可能性があるよ、というのは、
書類にして説明できにくいんですよ。
だから、決裁できる人は
ぼくの話をおもしろがるんです。
会長とか社長とは仲良くなれるけど、
上から
「ちゃんとおまえ仕事してるんだろうな」
と言われている人とは、話がなかなか通じない。
佐々木
結局は、
「こういう数字が出ていないとクリアできません」
みたいな細かいレギュレーションがたくさんあって、
そこをクリアしなきゃと思ってる人が多いんでしょうね。
そういうものに価値がないとは言わないんだけど、
いまの日本はそこにあまりにもがんじがらめに
なっている部分があるかもしれないですね。
糸井
それでうまくいくんだったら、
どの会社もうまくいってますよね。
「絶対損はしません。何倍にも成長します」
という話をしろ、と言ってるわけだから。
佐々木
いまって、自己啓発本とかも流行ってて、
表面上はフワフワとした
夢を語る人が多いじゃないですか。
いっぽうで、実際には、
ものすごく泥くさい仕事をやらなきゃいけないと
薄々考えている人も多くて、
そこのギャップが埋められない感じがします。
糸井
ぼくの考えを言うと、
みんな、はたらくということを、
人力で水車を回すようなこととか、
封筒貼りをすることのように、
時間をかけて生産量をあげることを
はたらくことだと思い込んでないかなと思うんです。
いわゆるITの世界でも、
「こういう資格を持った人が何時間はたらきました」
というような人月単位になっていて。
佐々木
そうですね。
時間単価の業務をすることが、
はたらくということになっているかもしれません。
糸井
あれはつまり労働がどれだけ
商品の生産に組み込まれたかが価値だという、
労働価値説を額面どおりにとっているわけです。
売れる分だけつくる、といっても、
そうやって生産したものが
市場に出たときに余っちゃったら、
倉庫に残るだけなんです。
佐々木
いま何が売れるかって、
そもそもわからないわけですよね。
事業計画を立てて、
ただモノをつくっても売れなくて、
結局は倉庫を圧迫するだけだったり。
糸井
そうですね。
今日ここに集まってる方々は、
それこそクリエイティブな仕事をしている方が
多いと思うんですけど、
仕事のなかで、この方たちの労働時間を
無駄にしているものがあるんです。
ちょっと偉そうに言っちゃうけど‥‥。
佐々木
なんでしょうか?
糸井
プレゼンテーションです。
必要なアイデアの何倍もの時間とコストを
プレゼンテーションにかけてるんですよ。
佐々木
ああ、広告代理店とか、すごそうですよね。
糸井
そう。普通の会社でも、
部長の決裁を得るためには、
こういうデータを用意しなくちゃ、とか、
相手を納得させるためのデータとかも含めて
集めておかなきゃならないわけでしょう。
1週間のうちの8割くらい、
そういう仕事をしてるんじゃないですか。
佐々木
たしかに、そうかもしれません。
頷いてる人が結構います。
糸井
そういう気がするという方、
いらっしゃったら手を挙げてもらえますか?

(会場の大半が手を挙げる)
佐々木
多すぎないですか。
糸井
実際、そうなんですよ。
プレゼンテーションのための無駄な時間を
クリエイティブに回すことができたり、
いっそ遊びに行ったりすれば、
アイデアが出る可能性は増すと思います。
佐々木
おっしゃる通りだと思います。
本当のクリエイティブって何なのか。
プレゼン資料に表現するような
クリエイティブじゃなくて、
頭の中から湧いてくるものが
クリエイティブだ、ということですよね。
(続きます)
2018-06-27-WED