ほぼ日刊イトイ新聞 ダイヤローグシリーズ 1 株式会社三角屋 朝比奈秀雄さんの場合
建物や家具になるために 息づきながら待っている 石や木との対話


第3回 最大限やる。


ほぼ日 こういった素材は、
どんなところから手に入れるんでしょうか。
朝比奈 建て替えで「もう要らん」言う人がいたら、
ほんならもらうで、ということで持ってきます。
例えばこれは、京都の織物屋さんの
棟やったんや。



ほぼ日 明治‥‥
朝比奈 明治34年。
取り壊して、ビル建てるいうから、
もろてきたんや。
それで、これを、
いつ使うかわからん
けど(笑)。
ほぼ日 いつ使うかわからないんですか。
朝比奈 うん。でも、使えると思う。
これをどうやってまた、使ってやろかなと思う。
ほぼ日 何に使えるんでしょうか。
朝比奈 柱か梁か、何かにね。
ぼくとこは、倉庫が広いからもらえるけど、
広うなかったら、こんなんもらえへん。
だけど、もったいないやんか。
こんなもん、燃やして終わりやからね。
たとえばあっちにあるのは、船の木やけど。
ほぼ日 船の‥‥木。



朝比奈 船の底やった木や。
ほぼ日 船の底!
朝比奈 形がね。わかる?
日本海の船や。厚いやろ。
ほぼ日 はい。木に厚みがあります。
朝比奈 琵琶湖の船は、後で見せてあげるけど、薄い。
日本海は、波が荒いねん。
だから、しっかりしとる。
少々のことではへこたれん。



ほぼ日 強い木だから、使える。
朝比奈 強い木というよりも、厚い木やね。
ほぼ日 倉庫の中、迫力がすごいですね。
木の迫力というか。
朝比奈 あるある、木の迫力。
ほぼ日 たくさん木や石がありますが、
それぞれどこにどう使うのか、
分類してあるのでしょうか。
朝比奈 そうやねぇ、木をどこに使うかは
挽いてるときにわかる。



ほぼ日 つまり、うすく切っていくときに‥‥。
朝比奈 まず、原木市場で材木を買うて。
ほぼ日 原木を買うんですか。
朝比奈 そやで、ここには既製品ないで。
ここにある木は、
全部自分で挽いたんや。
ほぼ日 ええ?! 朝比奈さんおひとりで?





朝比奈 ひとつも既製品ないわ、ここ。
あるはずないで。
全国の原木から、ほとんど挽いた。
ほぼ日 はぁあああ、すごい。
朝比奈 石のほうもいろいろあるで。
ほら、こんなとこにあるけど、
これはあれや、
東大寺の柱の礎石。
ほぼ日 えっ?
この石ですか。



朝比奈 そう。礎石。この石のくぼみのところに
東大寺の柱が立っとったんや。



ほぼ日 すごいなあ。
この石の上に、木がドンと
乗っかってたんですね。
朝比奈 これ、1300年経っとると思う。
正真正銘の東大寺の柱。
ほぼ日 すごい。
ちょっと触っとこう。



朝比奈 下のほうは地中に埋まってたから
ザラザラしとるやろ。
上の部分はみんなが歩いたり
さわったりするから、こなれとんねん。
手でふれたらわかる。これが時代やね。
ほぼ日 ああ、下の部分は土の中だったんですね。
朝比奈 これは、東大寺のお堂が
焼けたかどうかしたときに、
もろたんやけどね。
ほぼ日 この石で、この穴に入る大きさの
太い柱を支えていたんですね。
朝比奈 昔の人は、素材のもってる大きさ
ギリギリのところをうまく取って
やってたからね。
最大限を利用しよったんや。
それもまた硬い石を、なあ?



ほぼ日 硬い石なんですか。
朝比奈 こんな何十メートルの木が乗るねんで。
柔らかい石ではあかん。
こういう硬い石であっても、
昔は皆、手で削ってたから。
ほぼ日 石も手で‥‥大変ですね。
朝比奈 素材はあるものを使うしかないから、
人のほうがいつでも最大限、
やるしかないんやで。

(つづきます)

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2012-09-24-MON


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