
- ーー
- ほぼ日では、お医者さんに来ていただいて、
集団で麻疹風疹混合ワクチンの
予防接種をする機会がありました。
だいたい100人ぐらいの社員に
予防接種の意思を確認したところ、
すぐに接種できるということで
糸井重里を含めた大半の社員が
予防接種を希望したんです。
- 荻田
- ほぼ日の社員さんの意識の高さが伺えますね。
接種の費用を会社持ちにしたところで、
注射を打たなかった人の話も
聞いたことがありますから。
予防接種は、ぜひ打っていただきたいです。
ぼくは風疹の患者団体の人を通じて
先天性風疹症候群のお子さんと
会うこともあるのですが、
身につまされてならないんですよね。
- ーー
- 妊娠中には予防接種を打てませんが、
特にパートナーである旦那さんには、
ぜひ打ってもらいたいですね。
- 荻田
- うちの病院に来た妊婦さんの家族には、
まずワクチンを打つように伝えています。
大阪府下ではすべての自治体で補助が出ますけど、
補助の出方は自治体によっていろいろで、
「まず抗体検査を受けてくれ」がほとんど。
でも残念なことにね、
抗体検査は平日でないと
受けられないところが多くて、
旦那さんには面倒くさがられるんです。

- ーー
- うーん、時間の制約が多い人にとっては、
難しいと感じるのかもしれません。
抗体検査のために病院へ行き、
注射を打つために病院へ行くわけですもんね。
- 荻田
- じつは、抗体ができている上で
ワクチンを接種しても特に問題ないんですよ。
なのでぼくも、抗体検査をしないで
予防接種を受けることを推奨しています。
- ーー
- 2回の予防接種が必要で、
3回以上打ったとしても
問題ないと聞いたことはあります。
- 荻田
- ただ、個人のブログなんかでは
予防接種を打たせないように
誤った知識を載せてしまう人もいるんです。
風疹への抗体があった場合、
その上にワクチンを打ったらどうにかなる、とね。
そういう噂を信じてしまって
予防接種を打たない人もいるみたいですね。
個人で信じていることについては
ぼくから何を言っても仕方ないのですが、
誤った知識を流されるのは本当に困ります。
- ーー
- 妊娠出産から育児については
妊婦さん自身や、奥さんが妊娠をしていると、
知らないことばかりで不安になって、
いろいろ調べたくなりますよね。
ネットで検索したり、雑誌を読んだりしていると、
参考になりそうな情報もあれば
明らかに怪しい情報も混ざっています。
どうやって情報と接していけばよいですか。
- 荻田
- みなさんね、不安になるとは思います。
ただ、何か不安なことがあったときに
スマホで検索するのが
最初に起こすアクションになっていると、
正しい情報を手に入れるのは
なかなか厳しいなという気はしますね。
間違った情報を垂れ流しているブログも
検索すれば出てきちゃいますから。
自分が「こうかな?」と思うブログを見つけたら、
「ほら、当たりだ!」と思っちゃうんですよね。
いかに正しい情報を伝えるかが大切なんです。
最近は検索エンジンも考えてくれているようで、
信頼できる情報筋を上位に並べて、
ヒット数だけでは上位に来ないように
調整しているみたいですけど。

- ーー
- 妊娠、出産の話題に限らず、
ついつい調べちゃいますからね。
- 荻田
- いわゆる、メディアリテラシーですよね。
ひとつ言えることとして、
個人ブログはあまり信じないほうがいいですよ。
本来であれば、きちんとした専門家の意見を
直接聞いた上で参考にするのがいいと思います。
かかりつけ医に聞くことになるでしょうが、
かかりつけ医の情報が間違っていないか、
これもよく考えたほうがいいですよ。
「これ、うさん臭いよね」っていう情報には、
裸の王様みたいな感覚で接してください。
「王様は裸!」と言ってもいいんです。
- ーー
- 医療や健康にまつわる話って、
とんでもない理論で書かれた
文章を見ることがありますもんね。
- 荻田
- 基本的には、かかりつけ医と話をして、
解消していけたらなっていう歯がゆさがありますね。
いずれにしても、医療従事者としては、
正確な情報を出し続けないとしょうがないです。

- ーー
- 先生が妊婦さんと接していく中で、
これは食べていい、これはダメ、
という相談を受けることも多いのでは?
- 荻田
- 相談してくださいって言っていますので、
いろんなことを質問されますよ。
で、相談されるようなものについては
適量であれば、ほとんど問題ないんです。
よく相談されるのは、薬についてですね。
おおざっぱなことを言うと、
妊娠中に飲んではいけない薬って
数種類しかないんですよ。
もっと言ってしまえば、
おなかに赤ちゃんがいる状態で
抗がん剤を投与したこともありますから。
もちろん計算に基づいた適量ですが、
抗がん剤って赤ちゃんに届かないんですよ。
ぼくが大学病院で仕事していた若い頃なんて、
医者によって考え方が違うから
よく意見をぶつけ合っていましたよ。



- ーー
- お医者さん同士が議論で熱くなるのは、
生命が第一だからこそですよね。
- 荻田
- 他の科の先生とも喧嘩をしたり、
目上の先生に意見をしたり、
若い頃はずいぶん戦いましたね。
まあ、赤ちゃんを守るためです。
- ーー
- テレビの医療ドラマでは
口論になるシーンをよく見るのですが、
実際の病院でも戦いはあるんですね。
- 荻田
- そうやって喧嘩をするのは、
プロフェッショナリズムから
来るものなんじゃないですかね。
優先順位が一番高いのは、
ぼくらにとっては赤ちゃんですから。
赤ちゃんに大変なことが起こるようであれば、
みんな、戦闘モードに入ります。
ぼくが産婦人科だからというよりは、
お産を取る周産期科医の
根っこなんじゃないですかね。

- ーー
- 産婦人科の先生からの
メッセージを聞く機会があるのって、
妊婦さんや、その旦那さんぐらいですよね。
妊婦さんの家族や同僚といった周りにいる人にも、
風疹の予防について
伝えられることがあれば教えてください。
- 荻田
- おなかの赤ちゃんの防波堤になりえるのは、
家族であり、周りにいる人なんです。
お母さんの周りにいる人が、
防波堤としての役目を果たしてください。
まずは、赤ちゃんのお父さん。
男性は妊婦さんにはなれませんよね。
「頑張ってね」と言うだけでは通じないので、
体を張って、いろんなものから守ってあげるという
気持ちになってもらえたら、ありがたいですね。
ワクチンを接種しておくのもできますし、
妊婦さんにストレスをかけないとか、
いろんなことが考えられると思います。
赤ちゃんは胎盤に守られて、
赤ちゃん守る体に変化しているお母さんを、
家族が守ってあげてください。
- ーー
- 防波堤という表現はわかりやすいです。
家族の防波堤の外側に、
職場や友だちもかかわってきそうですよね。
- 荻田
- 自分が属している集団が、
もうひとつの防波堤になってくれたらいいですし、
会社とかが防波堤になってくれたら、
さらに強固なものになりますよね。
妊婦さんの周りにいる人が
二重、三重の防波堤になってください。
そういうイメージで妊婦さんを見てあげて、
赤ちゃんを見てあげてほしいなと思います。

- ーー
- 自分たちにできることがわかりました。
荻田先生、ありがとうございます。
(おわります)
2019-02-05-TUE
2019-02-05-TUE


日本で風疹が流行しだした2018年の秋頃、
「ほぼ日」では、全乗組員を対象に、
風疹の予防接種をすることになりました。
社内には、妊婦さんや妊娠を希望する女性、
そして風疹の抗体価が低いとされている
「30代~50代の男性」が多く働いているため、
風疹ウイルスによる被害を防ぐために、
会社負担で風疹の予防接種をしました。
時間を決めて集合場所に集まります。
問診票を書いて体温を計り、
問診で問題がないのを確認できたら
接種をしてもらうという手順です。
今回みんなが予防接種を受けたのは、
「麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)」。
つまり「麻疹(はしか)」と「風疹」を
まとめて予防するワクチンです。
生きたワクチンを接種するので、
妊娠中の女性は注射を受けられません。
その他の人は性別や年齢を問わず、
抗体検査を受けなくても接種可能としました。
「はーい、ちょっとチクッとしますねー!」、
糸井は「全っ然、痛くなかった!」と笑顔です。
注射が苦手な乗組員に聞いてみても、
インフルエンザの注射より痛くない、
という感想が多く挙がったのが印象的でした。
みんな、ほっとした表情で席に戻ります。
ちなみに、事務所以外で働く乗組員も、
自宅のそばで予防接種を受けました。
これで、ほぼ全員が風疹への
抗体をつけることができました!
予防接種は、誰にでもできる対策です。
「自分や家族はどうだろう」と気になったかた、
お近くの医療機関での予防接種を、
ぜひ受けに行ってみてくださいね。
「ほぼ日」では、全乗組員を対象に、
風疹の予防接種をすることになりました。
社内には、妊婦さんや妊娠を希望する女性、
そして風疹の抗体価が低いとされている
「30代~50代の男性」が多く働いているため、
風疹ウイルスによる被害を防ぐために、
会社負担で風疹の予防接種をしました。

時間を決めて集合場所に集まります。
問診票を書いて体温を計り、
問診で問題がないのを確認できたら
接種をしてもらうという手順です。

今回みんなが予防接種を受けたのは、
「麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)」。
つまり「麻疹(はしか)」と「風疹」を
まとめて予防するワクチンです。

生きたワクチンを接種するので、
妊娠中の女性は注射を受けられません。
その他の人は性別や年齢を問わず、
抗体検査を受けなくても接種可能としました。

「はーい、ちょっとチクッとしますねー!」、
糸井は「全っ然、痛くなかった!」と笑顔です。
注射が苦手な乗組員に聞いてみても、
インフルエンザの注射より痛くない、
という感想が多く挙がったのが印象的でした。

みんな、ほっとした表情で席に戻ります。
ちなみに、事務所以外で働く乗組員も、
自宅のそばで予防接種を受けました。
これで、ほぼ全員が風疹への
抗体をつけることができました!
予防接種は、誰にでもできる対策です。
「自分や家族はどうだろう」と気になったかた、
お近くの医療機関での予防接種を、
ぜひ受けに行ってみてくださいね。


