みなさま、あけましておめでとうございます。

毎年、年があけると
体がひとまわり大きくなってしまうワタクシ。
今年はそんなコトにならぬようにと、
この原稿を書きながら誓いつつも、
おそらく大きくなってるでしょうなぁ‥‥。
正月という日はたのしく、愉快。
だって、日本中で同じような料理を一斉に食べる一日。
おせち料理の蓋をあけ、雑煮を作って
「あけましておめでとうございます」と、
日本中が言っていると思うと
なんだか、不思議な一体感を味わえる。

お正月というこの日は、
日本人が日本人であるコトを
実感できる日なんだろうと思うのです。
日本に昔から伝わる料理。
ひとつひとつに謂れがあって、
縁起が良いとされる料理をお腹に入れる。
今年一年が息災で、幸せに満ちた一年でありますようにと、
祈りながら重箱の中の料理をつまむシアワセ。
正月一日はなるべく神聖なる火を使わぬように。
包丁などで、切り刻むという行為を
せぬようにと言い訳しながら、
正月一日くらいは料理を作るという仕事とすらも忘れて、
家族みんなでのんびりしましょうという、
やさしい心配りが作った風習なのでありましょう。

おせち料理が日本全国、
同じような料理でできている一方で、
そのかたわらにある雑煮。
もともとは大晦日まで神様に祀った餅を、
体の中におさめるコトで、
新年の体に神様を呼び込む儀式をかねた料理で、
だから火を使っちゃいけない正月にも、
雑煮を炊くための火だけは特別扱いされる。
そんな雑煮は、日本全国千差万別。
僕が育った地方の雑煮は、醤油仕立ての出汁に丸餅。
緑の葉っぱに人参、それからブリの切り身が入ったもの。
ところが、ボクの家の雑煮は、
白味噌仕立てのポッテリとした汁に、
トロトロになるまで煮込んだ丸い餅。
具材は人参、紅白かまぼこ、くるんと結んだ糸三つ葉。
関東に来て四角い餅を焼いた雑煮にであったときには、
すっかり遠くにきたんだなぁ‥‥、
としんみりしたりしたものでした。

日本の食はその土地土地に根ざした
多彩な地方料理の集大成に違いない。
そんなコトに思いを馳せる正月でもある。


海外を旅して、
「豊かな食文化のある国かどうか」を感じる瞬間。
贅沢な料理があるかなしかでは決してない。
おいしい、おいしくないというのも、
あくまで自分の口に合うか合わないか
というコトとでしかなく、
ボクは「多様な地域性に恵まれているか?」
というコトと思ってる。
地域に根ざした料理があるというコトは、
すなわち古くからの豊かな文化が
あるかないかというコトで、
それら料理が生き生きと作り続けられているというコトは、
昔からの文化を守る努力をしているかどうかというコト。

フランスに行けばパリの料理と南仏の料理は
まるで違った料理に見える。
イタリア料理なんてひとことで決してくくられないほど、
地方、地方で料理が違う。
一方、アメリカに行くと地方性が一気に薄れ、
せいぜい昔フランスの植民地だったところに
かつての名残りが料理にあったりする程度。
どこにいっても同じような料理に出会う。
多様な価値観を集めることで超大国になった
アメリカ合衆国は、
アメリカ合「食」国ではないのでしょうネ。
だからマクドナルドのような
チェーンストアが生まれたのかもしれません。

と、そう言いながらも、最近の日本という国。
どんな街にいってもその駅前には、
ハンバーガーのお店があって、
大きな居酒屋チェーンの看板が並んでる。
ぼんやりしてると自分が今、どこにいるのかわからないほど
日本全国、チェーン店がぞろぞろできて、
昔からそこにあったその土地ならではの飲食店が、
ひっそり店じまいをしてしまう。
日本全国どこでも同じの究極の姿が
ショッピングセンターの中の飲食店なのでしょうネ。
どこに行っても同じテナント、品揃え。
それって本当にいいのだろうか、と思うことがある。
なやましいなぁと思っても、それは止まらぬ現実でしょう。

ただ、だからこそ、そんな中にも多様性やその店ならではを
ボクたちは発見しなくちゃいけないのだろうと思います。



飲食店は「人が現場で関与する割合が極めて高い」
場所なのですネ。
料理を作るのも。
注文を取り、サービスをして、
次のお客様に備えて売り場をキレイに整える。
それら全てが営業時間中の現場で実際、
人の力でおこなわれている。
日本全国同じしつらえ、メニューでやってる
チェーン店ですら、人が変われば
店の雰囲気や料理の味も違ったりする。
同じに見えて実は多様で多彩な店が、
ボクらのまわりで評価されるのを待っている。
そう思ったら、外食産業を嫌いにならずに
すむんじゃないかと、ボクは最近、思うようにしています。

人と人とのつながりを大切にしようと
経営しているお店をいかに嗅ぎ分けるのか。
それがこれからますます大切。
そんなヒントもお伝えできればと思い、今年最初のご挨拶。
今年一年も楽しくお付き合いいただければ、と思います。


2014-01-02-THU



© HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN