おいしい店とのつきあい方。
サカキシンイチロウの秘密のノート。




ボクは仕事柄、‥‥あくまで仕事柄、たくさん食べます。
ファミリーレストランに行っても、
セットひとつで注文が終わることは滅多にありません。

「ハンバーグを単品でいただいて、
 サラダを最初にもらいましょうか‥‥。
 ついでに今月のフェアー商品の
 このミックスグリルも食べてみましょう。
 ご飯の代わりにカレーを下さいますか?
 食後にチョコレートパフェを。
 コーヒーは最初に持ってきてくださいね!」

というような注文を、とても日常的にしちゃうんですね。
仕事ですから。
はははは。
それも昼食時とかディナータイムとか、
普通に人が食事する時間帯じゃなく
2時とか4時とか、
お茶の時間に平気でそういう注文をする。
すると、困ったことがおこります。

うわっ、狭い席に案内されちゃった!

たいていこの時間に
一人でファミリーレストランに入ると
お茶用の小さなテーブルに案内されます。
二人がけでちょっとものを置くと一杯になっちゃう。
例えばコース料理の
フランス料理屋さんなんかであれば
小さなテーブルでも別にかまわない。
だって一皿づつ料理が運ばれて、
それを食べ終われば下げてもらって
それから次のお料理がやってくる‥‥、
の繰り返しですから、
お皿が一つにグラスが一個分置ければいい程度の
大きさのテーブルがあれば、
それで事足りることになります。

でもファミリーレストランの場合、
頼んだ料理はたいてい一度に提供されて、
気づけばテーブルの上がお皿で一杯、
というようなことになる。
だからテーブルのサイズというのが、
快適な食事をするためにはとても大切です。

テーブルのサイズを知っておこう。

こうやってテーブルの大きさを測ってみましょう。

まずテーブルに両肘をついて両手を組みます。
その両手をあごの下においてみましょう。
このときの肘と肘の間隔が
お茶を楽しむときに必要な幅、と思えばいいです。
肘と肘の間にティーカップを一つ置いて、
向かい側に座っている人とのおしゃべりに
花を咲かせるのに適した大きさ。
あるいは、笑顔をかわすのに邪魔にならない小ささ。

次に徐々に組んだ手を顎から離してテーブルに近づけます。
肘を外側に外側に動かしながら、
手を組んだままピタッとテーブルに
手首がついたその状態が、
コース料理を快適に食べるのに適した幅。

それから今度は組んだ手を、
左右に徐々にはずしながら
伸ばした中指と中指がキスするように
触れ合う位置まで広げてく。
両手が中指だけでつながっているその状態の、
肘と肘の間隔が
ファミリーレストランのような店で、
快適に食事ができるテーブルのサイズです。
洋風の店であれ、和風の店であれ
それより小さいテーブルで食事をするのはとても危険。
料理がテーブルに乗り切らないで、
ライス皿を手に持ったままハンバーグを口に運ぶ‥‥、
なんて神業を披露しなくちゃいけなくなっちゃいます。

いったん座ったのに注文をした途端に、
立ち上がってテーブルを代える。
ちょっと恥ずかしいです。
料理が続々届き始めて、
テーブルに並びきらなくなったからって、
違うテーブルに案内される。
かなり恥ずかしいです。

「ワタシは大食いです。
 しかも自分がどのくらいの大喰らいなのか
 把握できないくらいに、一杯食べるんです!」

って大声で店中にふれて回っているような恥ずかしさ。
そんなことにならないように、
まず座ったら自分のテーブルの大きさを
確認してみましょう。
あるいは、そうならなために
「この店に来た目的をしっかり伝える」。
忘れずに。

子供が一緒のとき、あるいは、長居するとき、
おしゃべりしたいとき‥‥

ではテーブルの大きさだけが快適さの条件なのか?
というとそうじゃない。
使い勝手によって快適なテーブル、
そうじゃないテーブルが用意されています。
例えばそれじゃあ
家族向けのテーブルってあるんでしょうか?
特に小さな子供をつれた家族のためのテーブル。
ファミリーレストランという名前なのに、
すべてのテーブルがファミリー向けじゃない、
というのが実は不思議なはなしなのですけれど、
最近のファミリーレストランには
子供づれのお客様にとって優しい席が少なくなりました。
もし和食の店であれば「お座敷」、
これは子供を安心して
遊ばせることのできるテーブルです。
洋食のお店で椅子席しかない場合には、
「ブース席」と呼ばれるテーブル、
これがお座敷がわりのファミリー向けのテーブルです。
ベンチ椅子がテーブルの周りをぐるりと
取り囲むように配置されている席がブース席。
外食業界の人たちは「洋風のお茶の間」と読んだりする、
子供が転がろうが暴れようが、
少々のことではお店の人は迷惑と思わない
シアワセなテーブルだったりします。

今日は長居をしそうだ‥‥、
あるいは、我を忘れておしゃべりに没頭したい。
そんなときには厨房前の人通りの激しい、
ちょっと騒がしいテーブルをもらうといい。
普通、一番、人気の無い席です。
その分、長居をしても多めにみてくれますし、
何より少々の大声だって目立たないほどにぎやかです。
実はコンサルタントとしてお店の状態を見ながら
お店の人とあれこれ打ち合わせするテーブルも
こうしたテーブルなんです。

ファミリーレストランといえども、
いろんなお客様のいろんな気持ちに
ピッタリなテーブルがある。
だから「今日はどんな気持ちでやってきました」
という一言を添えて、
案内されるのをじっと待つ。
大切です。

さてそうしてあなたのためのテーブルに案内された。
次に何をすればいいでしょう?
せっかくの食事を台無しにしないための状況把握。
どこを見ればいいのでしょうか?

illustration = ポー・ワング

2005-05-05-THU


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