おいしい店とのつきあい方。
サカキシンイチロウの秘密のノート。



はじめまして、サカキシンイチロウです。
レストランの話を、させてください。

はじめまして、サカキシンイチロウといいます。
外食産業のコンサルタントを
生業(なりわい)としています。
飲食店の店作りはこうしたほうがいいんじゃない、
とか、
最近、こんなお店が流行ってるらしいよ、
といったアドバイスをするのが
ボクの仕事の日常的な大部分です。

仕事柄半分、好きだから半分。
ボクはいろんなレストランで食事をします。
その軒数と回数は、とんでもなく多くなります。

どこそこに新しいレストランができた、
と聞けば飛んで行くし、
どこそこの若い調理人が独立した、
と言えば顔を見に行く。
当然、お馴染みでお気に入りの店には、
季節ごとに顔をださなきゃいけないし…、と、
ボクの生活はレストランに行くことを中心に動いています。

一人でこっそり行ってみることもあるし、
何人かで押しかけることも当然ありますが、
一緒に行った仲間は大抵、こう言います。
「おまえと一緒だと、なんか旨いものに
 ありつける気がするな」
「楽しく食事できるし、
 お店の人にも大切にしてもらえるし」
「だからまた誘ってよね」
って。
確かに初めての店でもすぐお店の人と仲良くなれたり、
メニューに無いものをワザワザ作ってくれたり、
いろんな得をしている…。
そんな気がします。

お客さんの望むレストランと
レストランの望むお客さんの間には
差があると思うのだけど。

かと思うとこんなこともあります。

今度あそこにできた店は
素晴らしくサービスが良かったよ、とか、
あそこの料理は特徴的で素晴らしかった…、
とかってボクがだれかに薦めるとします。
で、その人がその店に行ってみて、こう言います。
「確かに良かったけど、
 とりたてて大騒ぎするほどでもなかったよ」
「堅苦しいだけであんまり楽しめなかった」
…とか。

業界関係者、例えばレストランのシェフだとか
マーケティング関係の人とかに
ボクのとっておきの店を教えると
「たいしてうまくなかった」とか
「もっと面白い店は一杯ある」とか、
逆にお叱り頂戴しちゃったりもします。
しかもそういう人達を紹介したお店の人には、
「この前、サカキさんに教わったって来たお客さん、
 本当に失礼しちゃう。お店に入るなり
 ジロジロ店中、見渡したり、
 ヘンテコリンな質問したり、
 食べ切れないほどの料理を頼んだり…」
とかって迷惑がられる。

どうしてなんだろう?

もしかしたらボクはみんなと違う
注文の仕方をしてるんだろうか?
お店の人から、ボクはみんなと違うように
見えているんだろうか?
何がボクに得をさせてくれてるんだろう?

いろいろあれこれ考えるに従って、
ボクはあることに気がつきました
ボクのとても中ぶらりんで中途半端な独特の立場。
レストランで働いている人でも無く、
純粋無垢なお客様でもない中ぶらりんな立場。
インサイダーでも無くアウトサイダーでも無い…、
ということはインサイダーでもあり
アウトサイダーでもある、という贅沢な立場。

レストランの人達が今、どういう基準で行動し、
どういう目線でお客様を見つめているか…、
ということをボクは知っています。
同時に、お客様として今、どうしてもらいたいとか
こういうことが不安で仕方ない、という気持ちも
十分知っています。
多分、ボクは普通の人よりも
レストランの裏表が分かる。
それがいろんな得をボクに
プレゼントしてくれてるんじゃないだろうか?
…と最近、思ったんです。

これからこんなことをお話ししていきます。
どうぞよろしくお願いします。

今回、ほぼ日にこの連載をさせていただくにあたり、
こんなことをお話ししたいと思いました。

●レストランで働く人から、すてきなお客様、
 と思われるにはどういうことに
 気をつければいいんだろう?

●レストランで働く人から、侮れないお客様、
 と思われるにはどうすればいいんだろう?

●シェフにどんな注文をすれば、やる気を鼓舞して
 すばらしい料理をつくってくれるようになるんだろう?

●この人と一緒にレストランに行くと楽しい、
 と友達から言われるにはどうすればいいんだろう?


などなどなどなど…。

そんなボクのこうした疑問に対する
極めて私的な解答をまとめてみます。
レストランが好きで仕方ない人のために。
そしてレストランをもっと好きになりたい、
と願う人達の為に。


というわけで、今回は「まえがき」のようなもの。
次回が「第1回」となります。
レストランがお客様をもてなすのに
心を砕く三つのポイント
「先味・中味・後味」についてのお話をしますね。
では、次回。


illustration = ポー・ワング

2003-07-03-THU
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