USAGI
東京糸井重里事務所の給湯室より

年末年始の「ほぼ日」は、
何かお役に立つようなことを!
(やろうとしたけど、無理だったかな?)
 

サイトウさんの、
1999年のお年玉的なコラム。


1.この1999年は、有名なアンゴルモアの大王が、
なんかしにくる年らしいのですが、
ヤツから(             )を守りたい。
この、(  )の中にコトバを挿入して、
そのことについて、考えとか意志とか理由とかなんでも、
たっぷり書いてください。


( 日本 )
とにかく、『ノストラダムスの大予言』には
昔からえらい迷惑をしているわけで。
あの本がでたときには(五島勉って訳したひとの顔も
そのときに覚えさせられておりますが)
わたしは当時小学校の4年生くらいだったのですが、
親の書棚からこっそり持ち出して、
夜毎ベッドで盗み読みしては、号泣していました。
そんなに恐けりゃ読まなければいい、のですが、
もう、あまりにも恐いもんで、その恐さがあたまのなかで
ぐるぐるしちゃってまた読んじゃう、読むとまた恐い、
そのくりかえしで、とにかく毎晩毎晩、
書棚から持って来ちゃあ、読み、「その日」を想像して
大泣きし、またそれをご丁寧に書棚に戻してから、
泣き疲れていつのまにか寝る、という日が続いていた。

考えてみたら「カッパブックス」みたいないわゆる
「おとなの本」を読んだのもあれが最初だし、
「何十年か後の自分の哀れな末期」を想像したのも
あれが最初だし、
「そのときに年老いてる両親のもっと哀れな末期」を
想像したのも、当然そのときが最初だった。
そのときまで、わたしは、
楽しい可愛らしい美しいきれいおいしいものだけに囲まれて
生きているという自覚&生きて行けるはずだという
妙な自信でもって、10年あまりの自分の人生を生きていた。
それが、あのノストラダムスの大予言の本のなかには、
人類にとって最悪の結末がすっごい勢いで描かれていた。
どうがんばっても逃れようのない「最悪の状態」のなかで
36歳のわたしは死ぬのであった。
なにをやってても、死ぬんだ。
どんなひとになっていても、だれと結婚して
何人こどもがいようとも、すっごく恐くて
汚くて気持ち悪くて醜い死に方で、死ぬんだ。36で。

って考えちゃ、目がとけるくらい大泣きしていた
1999年になるのかぁ。まいったなあ。
結局、どうなるのでしょうか? ほんとのところは??

あのとき想像していた「36歳の自分」ってものが
どういうものだったかもまったく覚えちゃいませんが、
ま、こういうものでなかったことは確かです。
まいったなあ。


2.「ほぼ日」の読者に、どういうことを期待してますか。
よく読者に筆者への注文をたずねたりしてますが、
ここでは逆なんです。


読み続けてほしい。もちろん毎日じゃなくてもいいから。
そして面白かったときは「面白かったよ」と言ってくれて
全然構わないと思います。

3.いっちばん好きな食べ物はなんですか?
おせちに飽きている読者に、教えてください。
できたら、いますぐ食べたいと思わせるくらいに、
たっぷり、強くおすすめくださいませ。


いちごとアイスクリーム、どっちがいちばんかな?
だからといって、「いちごのアイスクリーム」が最強に
すきだというわけではないけど、どっちもそうとう好き。
でもでも、きっといちばん好きなのは「白いごはん」。
ごはんが、すきです。
あたたかい炊きたての、ゆげのたつごはんを
はふはふ食べるのも大好きだけど、冷やごはんも好き。
夜中、家に帰って、シンとひと気のない台所の
ガスコンロにのっかっているごはんの
おナベのフタをとるとき、いつも最高にドキドキします。
ごはんが残っているときは、どんなにおそくても
必ず茶碗に一杯よそって食べる。茶碗によそう前にも
しゃもじから直接手にとって食べちゃう。

3回に1度くらいのわりあいで、フタを開けたら
「炊く前のコメの状態」だったり、する。
そのときの自分の落胆は、我ながら情けないです。


4.ヒマでこまっている、正月の読者のみなさまに、
ヒマのつぶしかたを伝授してください。
本なら書名とか、なるべく具体的にお願いします。


「あ〜あ、ヒマだなぁぁ」というようなことを、
ここ1年口にしていないような気がしています。
ですので、ヒマのつぶしかたについて、
読者のみなさまに伝授できるほどのものは
持ちあわせておりませんが、
読書するのにまとまった時間がとれるのであれば、
(1)アーサーランサム全集(岩波書店)
(2)夏目漱石の本何冊か
などはいかがでしょうか。

(1)は、いわゆる児童文学といわれる
ジャンルのものですが、「こどもむけ」だと思ったら
大間違い。ひと夏、ひと冬かけてたっぷりと休暇を楽しみ、
大冒険し、勢いあまって命まで賭けちゃうくらいの
超「波乱万丈」な物語なのであります。
途中ではなかなかやめられません。

(2)は、もうすこし「静かにヒマをつぶしたい」方へ、
100年前にちゃんと近代とは何かを考えたひとが
いたのだった、ということを知るだけでも、いいかも。
千円紙幣に印刷されてるひとっていうだけじゃ、寂しい。

1999-01-04-MON
BACK
戻る