USAGI
東京糸井重里事務所の給湯室より

9月23日(祝)

サイトウさんへ

いやぁ、今日も一日忙しかったこと。
『秋のお彼岸の中日』で、
おめでたい国民の祝日だったわけですが、
あちらこちらの地方公共団体や小中学校、町内会なんかから
「今日の良き日に『日本うさぎ公団』の活動などに
つきましてのお話を一席、いかがなものか?」と、
このわたしに講演の依頼が来ておりましてね。
ま、本来でしたらそういう晴れがましいところは、
公団総裁に行っていただくのがスジですし、
私などの出る幕ではないと
再三ご辞退申しあげていたのですが、
『ほぼ日刊イトイ新聞』で
紹介している程度の話でいいから、と
押し切られまして、まあ、じゃ、彼ら公団の活動の一端でも
知っていただけるならば、という気持ちもありまして、
今日は都内を全部で3ヶ所、
かけもちで回ってまいりました。

聞きにきたひとのなかにはこの
『ほぼ日刊イトイ新聞』を読んで
くださってる人もいましたよ、ありがたいことですねぇ。

さて、前回は日本うさぎ公団にとって
一年のうちでの最大の行事で
ある『十五夜』と「月見だんご」に
取り組む姿勢をお伝えしたのでした
が、今回はそれ以外の活動についてもご紹介しましょう。  

前回もお話ししましたが、秋という季節は
「日本うさぎ公団」に
とりまして、最も繁忙をきわめる時期です。
秋といえば月、月といえばうさぎ、
そのうさぎの元締めはわれらが
『日本うさぎ公団』と、
三者の関係は昔から不変だったのですから。  

ちなみに月というものはもちろん、
秋以外の季節、夏や冬や、春にも
分けへだてなく、出たり出なかったり、満ちたり欠けたり、
しているわけですが、あたりまえですよね、でもなぜか
日本人には「秋の月」をとりわけきれいだと思う気持ちが
あったようで、そんときには
いわゆるひとつのかかり結びのような
間がらというのでしょうか、
とにかく、うさぎも踊りなさいよ、
モチなんかついてみたりするのも、
また一興なのではないか、と
「月と餅ツキするうさぎはツキもの」
というような(苦笑)、
そんな暗黙の了解でも昔からあったんでしょうかね。  

だから、公団に舞いこむ仕事の依頼はなにも
「月見だんご」づくりばかりではありません。  

京都の西陣織の老舗が
「着物の絵柄のモデルを探している」とか
有田焼の窯元からも「染付の新柄を描きたいので
泊りがけで九州まできてくれないか」などと、
先方からのオファーはさまざまです。  

それらのニーズにあわせて、
公団がピックアップしたモデルたちが
現地にむかいます。
かれらにも一応おのおの自慢の
「チャームポイント」があって、
あるうさぎは、まっしろでまんまるで
ふわふわのしっぽが自慢で、
自称「うさぎ界一のバックシャン
(←これ、もう死語?)」だったり、
あるうさぎは左右同じ長さのかたちのよい耳がご自慢の、
いわゆる「耳タレ」だったり、
またあるうさぎは
「跳躍の高さと滞空時間の長さなら誰にも負けない」
という具合に、です。

そうした公団員たちの活動を束ねる
「モデルエージェンシー部門」も
5年前に公団内部に設立され、
それからはいっそう営業もスムースに
なりました。  

最初は豆シボリのちっちゃな絵柄からスタートして、
今や国民的アイドルの売れっ子モデルに
成長したうさぎもいるんですよ。
また、3年ほど前になりますが、
加賀友禅の新作絵柄のモデルとして
お仕事をしたのが縁で、金
沢の呉服屋の若ダンナに見初められ、
今は呉服屋のおかみとして、
店を立派にきりもりしているという
シンデレラストーリーも生まれたくらいです。

サイトウさんも、
この時期にお近くのデパートに行くことがあったら、
ぜひ和陶器・食器売場に足を運んでみてください。

「秋の食卓のしつらえ」などというコーナーには、
うさぎ公団員が
モデルをつとめた絵柄の土鍋、塗り盆、
箸置き、暖簾、茶碗、湯呑、
酒器などが、数えきれないくらい並んでいます。  

「じっとしていること」が、
なにより苦手なうさぎたちが、
長い時間、月を見上げたまま
ポーズをとってじっと動かずにいたって
いうことだけでも、なかなか見上げた
プロ根性じゃありませんか。   

今年の十五夜、晴れてくれるといいですよねぇ。
彼らのためにもね。

キヨタより

1998-09-25-FRI

BACK
戻る