USAGI
東京糸井重里事務所の給湯室より

8月27日(木)

キヨタさんへ

<本日の業務連絡事項>
・『踊る!さんま御殿!!』アンケート返送してください。
・『未来潮流』本日の撮影は午後2時からの予定
 〜深夜まで。
・アッキィさんに頂いたジョアンのミニクロワッサン、
 超おいしい!

しかし、このところいちだんとスズムシの鳴き方が
激しいですね。キュウリとナスの消費量もハンパじゃなく
激しいけど。
でもさ、これを食べて毎日元気にバリバリ鳴いてくれるかと
思うと、ほら、もっとバクバク食いなさい、って
思いますよねぇ。
うちに来たころはちいさいゴミみたいなもんが
もぞもぞ動いてるだけだったのになぁ。
ああ、感慨深いわ。チ〜ンとしちゃうよね。

スズムシだけじゃなくって、クワガタもきたもんね。
社長部長と事業部長とセイヒローさんの奮闘の
おかげですわ。糸井事務所は今やちょっとした
「ペットショップ」状態だわね。
でもって、ペットショップボーイズセイヒローさんから
‘そろそろキヨタさんにうさぎ公団レポートを
 催促しておいてください’
といわれましたので、そのむね伝言いたします。
セイヒローさんは、どうもキヨタさんに直接は
催促しづらいんだって。
なんでかしら? 彼のこと、いじめてない?
キヨタさんのその「ものごとを右から左に聞き流す能力」の
素晴らしさにちょっと呆れているフシもありそうだったし。

ま、こうしてメモしとけば、あなたも忘れずに
書いてくれるでしょ?

じゃ、明日、新潟へ行ってきますわ。成瀬さんの応援にね。
勝利の報告を楽しみにしていてください。
お留守番がんばってね。

サイトウより


サイトウさんへ

業務連絡、了解しました。
金曜日は新潟に行かれるのでしたね。
リングスの試合って、そんなにすばらしいものなんですか?
「私設応援団」を結成して新潟遠征しちゃうくらい?
わたしはまだ一度もナマのリングスを
観たことがありませんので
ぜひこんど、連れて行ってくださいませんか。

それからセイヒローさんにお伝えください。
そんな他人行儀なことしないで直接原稿取りに
来てくれればいいのに、みずくさいんだから。
わたしがこちらに入社して4ヶ月、
セイヒローさんが2ヶ月、お互い新人どうし
助け合って仲良くやりたいものですわ。

で、時代は「CSデジタル放送」ですよね。
ダーリンさんがオシゴトしていらっしゃる
「スカパー」、ですか?
ああいうこと、ですよね。
つまりは、世の中「多チャンネル時代」に突入するわけで。

当然、そこは世間の動きに敏感な「日本うさぎ公団」
のこと。
「CS放送」っていう「新しげなひびき」に、
そのまま黙って耳をこまねいているわけでは
ありませんよ。

「と、いうわけで、本日の議題は
多チャンネル時代を生き抜くためのメディア戦略、
日本うさぎ公団オフィシャル放送『ウサギチャンネル』
コンテンツの企画立案、です。」

「おお、議題がりっぱだ。」
「なんだか会議っぽいぞ。」

出席している公団役員たちからも、
満足そうな笑みがもれます。
議長が議題を発表しただけで
拍手するものさえ、いる始末です。
議長はちょっと会議の進行がしづらそうですが、
気を取り直して進めます。

「えっと、つまりこの『ウサギチャンネル』では
 何を放送するか?
 やはりこれは「目玉番組」をいかにたくさんつくるか、
 ということにかかっていると思われます。」

「そうだそうだ、メダマは大事だ」 またまた拍手。

「それはさ、うさぎ公団員がみる番組なの?
 それとも一般市民にも見てもらうものなの?」

おお〜〜〜! 再び会場がどよめきます。
スルドイこというねぇ、なんてひそひそ声も。
うさぎってそういうカンタンなことに
感心するものなんですね。

「うほん、お答えします。
 えーと、基本的には我がうさぎ公団の活動や
 社会参加のありかたを一般市民に啓蒙していくのが
 ネライです。
 当公団の認知度を高めるのに、
 このウサギチャンネル放送は
 非常に有効なメディアでありますからして、
 つまりそのコンテンツづくりにおいても、え〜とその、」

「ああ、わかった。
 ま、とにかくムズカシイことはおいといて。」

「えーと、うほん、そうです。つまりは。」

それから企画担当が考えた番組企画が発表されました。
どれどれ、順番に挙げてみましょう。

まずはスコットランド在住のマクレガーさんに
無農薬での野菜づくりや本場英国式ガーデニングを
基礎から学ぶ番組。
タイトルは「レタス畑からこんにちは」。
生徒役はもちろんピーターラビットに
やってもらおうと思っています。

それからミッフィちゃんにも、登場してもらいましょう。
せっかく、この春から「給与振込口座」を持った
ミッフィちゃんなのですから、
とかく一般人にわかりにくい、経済や銀行業務の
仕組みをミッフィと一緒に勉強する番組はどうでしょうか。

だったら、マイメロディにもなんかやって
もらわなくちゃいけません。
ああみえても意外に金銭感覚がしっかりしている
マイメロです。その持ち味を生かして通販の番組なんか、
面白いんじゃないでしょうか。

鈴木蘭々とリトルラビッツにもフジテレビ以外に
レギュラー番組を1本受け持って欲しいですしね、
ゆくゆくはハリウッドとも提携してロジャーラビットや
バックスバニーたちをかつぎ出したいと思っています。
「ウサギチャンネル」もあっというまに国際化ですよ!
ハリウッド資本との提携で全世界にウサギチャンネルを
流しまくろうではありませんか!

おお〜っ!
なんてすばらしい。
さすがは、世界に躍進するわれらが日本うさぎ公団ですぞ。
すばらしすぎますぞ。

みんな興奮して、
ただ勝手に、おもいおもいに叫んでいます。

「うさぎ好みニンジン料理の番組もほしいね」
「ああ、そうともさっ」
「最新流行のうさぎモードファッションも紹介してよ」
「おうよっ!」

「じゃ、そないなわけでね」
「勝ったも同然ですな」

それからさっそく、番組出演のための交渉が
はじまりました。
ところが、これが思いもかけず難航しました。

まずピーターラビットに出演をもちかけたところ
「ぼく、ガーデニングなんて興味ないもん」
とまったくそっけない返事。
「レタスやうさぎ好みニンジンが食べられれば
 いいんだもん、作るのはマクレガーさんの役だもん、
 ぼくは関係ないも〜ん」
ですって。

当のマクレガーさんも「誰が出るもんか」と
たいへんなけん幕です。
「いいか、うちはもう100年ものあいだ、
 精根こめてつくったレタスをあいつらうさぎどもに
 食われっぱなしなんだ。いいかげんうんざりだ」
ありゃ〜。これは根が深いようで。
仲良くやってくれって考えるのがまちがいだったですね。

次にミッフィちゃんのおうちを訪ねました。
ミッフィちゃんはあいにく不在でお父さんが
応対してくれたのですが、

「うちはねぇ、2002年までNHK−BSとの
 契約があって。他のチャンネルには出ちゃいけない約束に
 なっているのですよ。」

「だって、他ならぬウサギチャンネルですよ。
 そのへんのところとはわけが違うでしょ。
 あなた、何年ウサギやってるんですか!」

「そうなんですけどね、契約は契約だから。
 すみませんねぇ」

あっちゃ〜。ミッフィもダメか。痛いなあ。
このへんのクラスはうさぎ公団をしょって立ってもらう
くらいの超大物タレントなのになぁ。
ワールドワイド、だったのになあ。

じゃぁ、マイメロディは? 
交渉担当も焦ってしまって気が気じゃありません。

「お願いします、マイメロさん、
 ひと肌脱いでもらえませんか?」
「あら、いいんですか? 脱いじゃっても」
「あ、いや、けっしてそういう意味じゃなく(汗)」
「え? いやだ、脱いじゃってもいいかっていうのは、
 この帽子のことよ」
「帽子?これって、帽子なんですか?」
「あ〜ら、いやだわぁ。やっぱりご存じないのね。
 実はわたし、ほんとはうさぎ公団員じゃないのよ。」
「えっ?」
「ほんとのわたしはね、キティちゃんなのよっ!」
「ええ!? うっそぉ!!」
「うふふ、ウソよ」
「ええええ!!?? いったいどっちなんだよ、
 まったくもう!」

まったく、もう。
どいつもこいつも勝手言いやがって、
ぜんぜんお話になりません。

そんなこんなで、しっちゃかめっちゃかの大騒ぎ。
こんな状態で「ウサギチャンネル」は無事に
放送できるのでしょうか?

ともかくそれから半月後、「ウサギチャンネル」は
立ち上がりました。

ピーターラビットもミッフィちゃんも、マイメロディも、
頼りにしていたタレントたちは結局だれも出演しては
くれませんでしたが、それでもなんとか放送は始まった
もようです。

それでは試しに一度、見てみましょうか。
えっと、まずチャンネルは333chにあわせて、と。
どれどれ?
ん??
なんにも映像が流れていませんね。
おかしいなあ?
テレビの故障かしら?

あ、かすかに何か、物音が聞こえてきます。

く〜〜す〜〜、く〜〜す〜〜。。。
す〜〜ぴ〜〜、す〜〜ぴ〜〜。。。

どうやら、寝息のようですね。
だれかが居眠りしているのでしょうか?

むにゃむにゃ。
「おれ、半チャンラーメン!」
むにゃにゃにゃ。。。。

やや、これはもしかして、寝言ですかね?

まさか!?
もしかして、もしかして、これって
「ウサギちゃん、寝る」?
そんなばかな!?

あれ?
そ、そんなこと考えているうちに、
なぜかわたしにも眠けが。
ふわぁ〜い、ねむねむ。あれれ、おかしいなぁ。
と、いうわけで今回のうさぎ、
あ、ワープロの字がかすん・・・、

ぐ〜ぐ〜ぐ〜ぐ〜。

1998-08-28-FRI

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