7月30日(木)
サイトウさま
あらら。
「毒にもクスリにもならない」とは、
よく言ってくれました。
えぇえぇ、確かにそのとおりですわ。
ま、すねてみても始まらないっす。
今日はやはり、
もうとっくに流行ってる『総裁選』について
お話しするべきでしょうね。
永田町かいわいじゃ、誰が何になるだの、
やれ挙党態勢だの、
やれ適材を適所にだのとやたらと大騒ぎですが、
いっぽう「日本うさぎ公団」の「総裁選」は、
いたって静かなうちに執り行われるのが彼らの自慢です。
彼らに言わせれば、「票がため」だの「派閥の論理」だの、
そんなのバカバカしくてやっていられない、
ということです。
「周りを見るな、自分を見ろ」と、
わたしが話を聞いた公団員のひとりも言ってました。
だいいち、「日本うさぎ公団」の総裁には
任期というものがありません。
総裁になりたいと思ったうさぎは、その時点で
「大きく手を挙げればいい」んです。
なりたいひとは「手を挙げる」。シンプルですよね。
ただ、「日本うさぎ公団」はあらためて説明するまでもなく
たいへんりっぱな組織ではありますが、
公団という組織の性格上、
あからさまな「TV政見放送」などは打ちません。
そんなことをしたら、うさぎ公団員のみならず、
全国の団友、及び
一般ピープルまでが面白がって
TVを見ちゃうじゃありませんか?
それじゃ、「日本うさぎ公団」が非営利団体として
日々専ら地下活動に徹している
意味がなくなってしまいますもの。
でもなぜか選挙時には混乱もなく、福沢諭吉に包まれた
うさぎ好みニンジンが配られることもなく、
粛々と総裁が選ばれます。
総裁の選ばれ方について、
公団が発行している『日本うさぎ公団の手引き』を
ちょっとひも解いてみましょう。
どれどれ?「承認の場合はクビを縦にふること」
と書いてあります。
「否認の場合は・・」あ、「否認」のときのことは、
書いてないや。
とにかく「いい」と思ったら、
黙ってうなづけばいいのですね。
現総裁の長期安定政権のヒミツは、
こういうところにありそうな気がしますね。
なんせ今の総裁は、
身体がデカいことが取り柄らしいんですって。
ぱっと見た目は完全に「うさぎ離れ」しているとの噂です。
(極秘情報では体長160cmくらいあるとか)。
そんなにおっきいのが「総裁に、なってもいい?」
って手を挙げたら誰だって、
顔をもっとよく見ようと思いますよね。
すると自然に、目線を下から上に
何度も動かすことになりますから、
結果としては「クビを縦に振っている」ことに
なるのですね。
実際、今の総裁が選ばれたときには、
何千、何万という公団員たちが
総裁の足元に集まってきて、
いっせいにクビを縦に激しく動かしていた
ということです。あたかもそれは
「このひとこそ総裁に!」という
熱い思いのこもったうなづきそのものだった、
ということです。
ところが、そうして得た総裁の座。
反主流派の動きも上手に抑えこみ、
政権安定かに思えた3、4年前、
「総裁危うし!?」の局面があったらしいんですよ。
ある日、公団内に
「新たな総裁候補者が手を挙げたらしい!」という
トピックスが走ったからです。
しかも今までの対立候補に比べると、
見た目のインパクトは段違いだ
というじゃありませんか。
「ニューヒーローの誕生か?」と、
公団員も色めきたちました。
情報の出所をたどると、どうやら、その候補者は
どこか南の島から大志を抱いて立候補しようと
しているらしい。
「南の島っていっても、いろいろあるでしょ」
総裁は側近にたずねます。
「なんでも、奄美大島だとか。」
「え? 奄美大島? どのへんだっけ??」
さすがの総裁もちょっと
不安の色を隠せません。声も上ずり気味です。
「名前は?」
「アマミノクロウサギ、とか。」
「アマミノ、クロウサギ?!」
・・・・・・・・。ううむ、できる。
こいつは油断ならない相手だ。
肉を斬らせて、骨を断つ、か?
総裁はそのとき初めて
自分の掌中にあるものへの執着心を自覚した、
と聞いています。
南方系のほりの深い顔立ちに、全身をおおう剛毛と、
黒くしまった精悍なからだつきをしたヤツの姿が
目に浮かぶようです。
高温多湿の亜熱帯ですくすく背も伸びて、
もしかしたら2mくらいある大男だったり、するのかなあ?
そうだとしたらしょうがないなあ、
まぁこれまでけっこうやりたいこともやれたし、
そのときは潔く退くとするか。
総裁がそこまでハラをくくったとき、
側近がその「アマミノ」の顔写真を持って
跳びこんできました。
「これが、その「アマミノ」ですぜ!」
恐る恐る写真を覗きこんだ総裁は、
次の瞬間、思わず叫びました。
「か、かわいいじゃないかっ!?」
かくして「日本うさぎ公団」総裁は、
結局その座を明け渡すことなく
今日に至っている、ということです。
でもだからといって、一生ずうっと総裁のままでいるか、
ということではありません。
狭いようでいて広いニッポンのどこかに、
体長が160cm以上のうさぎが、
満を持して立候補の準備を整えているかもしれませんから。
キヨタより。