社長に学べ!

白を選ぶおまえでいてくれ

安森 ぼくにとって「モノの価値」というのは
まずは「使用価値」なんです。
糸井

‥‥わかった。

ようするに、黄色いマグカップに
珈琲を注いだら、うまそうじゃないからだ。
安森

そう、いかにも不味そうなんです、色具合が。

とてもじゃないけど、
ぼくなんかにはね、飲めないですよ。
糸井 だから、少なくとも「珈琲を飲むとき」には、
黄色いカップには「使用価値」がない‥‥と?
安森

せっかく珈琲や紅茶を飲むんだったら、
乳白色の、それもできるだけ白いカップがいい。

そういう色のカップに注いだときにこそ、
「ああ、この美しさよ」と思うわけですから。
糸井 まぁ、たしかに、そうでしょうけど。
安森 うちの娘なんか、ぜんっぜん平気だからね。
糸井 また身近な具体例が出た(笑)。
安森

そんな色したマグカップで珈琲を飲んで、
ほんとに、うまいのか‥‥と。

そしたら「ロフトで買ったんだけど」って。
糸井 いいなぁ、安森さんの家族ばなし(笑)。
安森 いや、使用価値のことを考えるならばね、
どこで売ってようとですよ‥‥。
糸井 ええ、ええ(笑)。
安森 だって‥‥そうでしょう!
糸井 はいはいはいはい(笑)。
安森 父親として教えなきゃならんですよ。
糸井 使用価値の大切さをね。
安森 「どこで売ってようと関係あるか!」と。
糸井 「白を選ぶおまえでいてくれ‥‥」と(笑)。
安森 そういうことです。
糸井

でも、多くの人が白いカップを選ぶからこそ、
黄色いカップが売れるんですよね。

つまり、世の中のカップが「黄色」だったら、
こんどは、みんなが「あえて白」になる。
安森 うん、そうかもしれないね。
糸井

「珈琲には白いカップだろう」ってことが
前提となっているからこそ、
「ちょっと黄色にしてみよう」と思うわけですよね。

で、ロフトって
「そういうお店」なんだと思いますよ。
安森 うん、そうそう、そうなんだよな。
糸井 安森さんの「暮らしの価値観」とは
対極にあるけれども(笑)。
安森

そう、だから、ロフトを立ち上げてから
ずーっと意思決定に携わってきて、
あんなおもしろい店をつくれたこと自体は
すごく楽しかったし、満足してるんだけど‥‥。

いつか「大人のロフト」をつくってやろうと、
いつも、思ってたんです。
糸井 ああー‥‥。
安森 ぼくの価値観に合うようなロフト、ね。
糸井 はい、はい。
安森 でもさ、そうするとね、
「むかしの百貨店」になっちゃうんだよな。
糸井 ああー‥‥そうなるのが、わかる?
安森 うん、わかる。
そして、そりゃきっと、売れないわ。
糸井 ははぁ‥‥。
安森

もちろん、むかしだったらよかったんです。

でもね、少なくとも、
今の時代には「売れないわ」とハッキリ思える。
糸井 安森さんって、そのあたりの「自己認識」を
ものすごく正直に語りますよね。
安森 そうかな?
糸井

お話をはじめてからずーっと、そうですよ。

自分が「どうまちがってたか」とか、
「いいかげんにしてきたか」ということについて、
すごく率直に、
しかも、たぶんかなり正確に語ってるのが‥‥
ちょっとめずらしいほど、すごいです。
安森 そう‥‥かな?
糸井 いや、ふつうの人だったら
「ほんとはこういうつもりだったんだけどね」って
言いわけをすると思うんですよ。
安森 だって、そんなものさぁ‥‥。
<続きます!>
2008-08-18-MON
前へ 次へ