社長に学べ!
おとなの勉強は、終わらない。


第10回 自己管理をどれだけできるか

原田 不満を言う人に、
講演しているとよく会います。

「私の上司は
 ぜんぜん仕事ができなくて……」
と愚痴をこぼす。

でも、上司が仕事できなくても
ラッキーじゃないですか。
完璧な人間の部下であるほど
仕事がやりにくいことってないですから。

上司がアホだからこそ
自分で仕事のできる余地がある。
だからその時に上司のために
仕事をすれば、
もっと仕事をさせてくれますよね。

上司がアホだという事実で
困っているはずがないんです。
陰で「アホだ」と言いつづけていれば、
それはどこかの態度に出てしまいます。

人間の感情のことですから、
それぐらいは上司にも伝わってしまう。
だけどそこを
「上司のために働いてやる!」
と思ってやっていたら、上司のほうも
「原田くん、こんな仕事をしたら?
 一緒に社長のところに行こうよ」
というふうになるんです。

ぼくは、かつて若い頃、
上司をけっこう
バカにしていたほうでしたが、
それでもそう思います。
糸井 原田さんは
ものすごい働いてるふうだけど、
犬を飼っているし、
バンド活動もやっているし、
人から見たら遊んでいるように
見える時間もちゃんと持っていますよね。
原田 自己管理がどれだけできるかですよね。

いまだに週に一回
ヤマハ音楽教室に通う時間は
絶対に、取っていますからね。

若者でも三年続けるやつはいない中、
もうヤマハ音楽教室の
ドラム教室も三年続けています。
ヤマハが驚いています。

「社長、よく来られますね」
「社長だから来られるんだよ」
と言いますが……
もうドラムは通算で四十年続けています。

このまえの土曜も、
わざわざ電車に一時間乗って、
地下鉄三回乗りかえて、
ロサンゼルスから来た
ドラマーの特別セミナーに行ってきたね。

高校一年の頃から、
毎日、やっていましたからね。
当時はビデオなんてないし
教則本すらなかったから、
テレビでドラムの人の技を必死に見て
「こうやって叩いていたぞ。かっこいい!」
とかいって練習していたんですけどね。
糸井 時代っておもしろいですよね。

今のドラマーって、
その頃に比べたら、
ほんとにものすごくうまいから。
時代の底上げというのはおそろしいなぁと思う。
原田 スポーツの技術もそうでしょう?
糸井 酒飲んで酔っぱらって
ホームラン打ったとかいう自慢が
通用した時代があるじゃないですか。
今、ないですもんね。
原田 カラオケがではじめた頃は、
私は、目茶苦茶うまいと言われたんです。
そこそこのやつとダメなやつとの
バラツキがあまりにも大きかったから。

でも今は誰だってうまいもんね。
だからつまらないでしょう?
ふつうに歌っても盛りあがらないでしょう?
それも底上げですよね。
ぜんぶが標準化されている。
糸井 表面は
ものすごい速度で底上げされる。

だけど、いちばん重要な
魂の部分みたいなものは、
何にも変わっていないはずですよね。

みんな、同じチカラを持ったと
錯覚してしまうけど、
それでズバ抜けたものにはなれない。
原田 前に発売した
マッキントッシュの頃に
プロの方から言われました。

コンピュータで、プロもアマチュアも
おんなじようにできるようになった時代には、
音楽を作るなんてつまらないし、
芸術性の高いものなんて出てこないと……
でも違うでしょう。

道具は今までの
プロの創造性をもっと高めるための
ツールでしょうとこたえていました。
  (つづきます)


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2005-01-04-TUE



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