社長に学べ!
おとなの勉強は、終わらない。


第7回 マニュアルは、なぜ存在する?

糸井 マクドナルドの店員たちの
マニュアルというのは
教科書のように伝えられていますけど、
それは古くはなっていないんですか?
原田 マニュアルは
「バカの大量生産だ」
みたいな発言もありますが、
マニュアルはバカを作るんじゃなくて、
最低限の基礎なんです。

必須科目としてのマニュアルは、
それ以上のレベルの教育のために
マスターしておくべきで、だから
私はマニュアル否定論者ではありません。

マニュアルは、お店で最も効率よく
自分の能力を発揮するための基礎教育ですから、
それは、絶対にやらなければいけない。

というのはなぜかと言うと、
たとえば、糸井さんが、
マクドナルドのお店に行って
教育を受けたとします。

ニコニコして、
「いらっしゃいませ」
「ありがとうございました」
「どうぞごゆっくり」
帰られる時には
「ありがとうございます。
 またいらしてください」
これはなかなか言えないですよ。
私、言えなかった。
糸井 原田さん、やったんですか?
原田 ええ。

つまずくんです。
一見易しいと思える
基本的な挨拶でさえ、
やっぱり言えないんです。

だからマニュアルで
覚えなければならなくて、
それ以上は自分のスマイルと
自分のアドリブでやるべきでしょう。

お客さんが困っている時……
たとえば、赤ん坊がおしっこをもらしました、
小さいお子様が飲みものをこぼしました。
パッと行って手伝って、
新しいものを持ってくる。

これはもう、
個人のホスピタリティーですよ。
そこまでいかなきゃいけないです。

だけど、最初から
すべてを自由にやりなさいと言ったのなら、
基本ができていないまま
自由にやるわけだから、
これはサークル活動になってしまいますね。
糸井 規則というと堅苦しいのですが、
最低限、何を守るべきだ、
ということがわかっていたほうが、
社員をラクにしてあげられるんだ、
ということは、ぼくも感じています。

規則って、
人を自由にするために作るべきでしょう。
だけどそれがむずかしくて、
失敗したり成功したりの
歴史がないと作れないんですよね。
原田 ビジネススクールには、
次のようなケーススタディがあるんです。

「アメリカの小さなボートを作る会社が、
 ベンチャーでスタートして、
 素晴らしいデザイナーが作った会社で、
 どのボートメーカーのデザインよりも
 優れているから、
 すごい勢いで業績が伸びました。

 そこで銀行投資家が目をつけ、
 買収して投資して大企業にして上場しました。
 ところが、その会社は潰れました。

 新しい経営陣が、デザイナーに対して、
 あいつはときどき勝手に休む、
 お客さんの納期は守らない、
 会社の方針とぜんぜん違うことを
 勝手にデザインする、
 金にならないことをやるなどと批判して、
 自分たちの作った規則を
 守らせようとしたからです……
 あなたならどういう経営者になりますか?」

この場合の答えは、
「会社の中にいる
 アーティストを大事にするべきだ」です。

「会社にとって核になる価値を提供し、
 会社を成長させる
 アーティストは大事にしなさい」

「経営者は、アーティストが
 さらにすばらしいダンスを踊るための
 ステージを作るべきだ」

そう学ぶわけです。

「チケットが売れたとか、
 マーケットシェアがどうだとか、
 アーティストにはいちいち言うな。
 いい仕事をさせろ」

とも言われるわけです。
  (つづきます)


postman@1101.comまで、ぜひ感想をくださいね!
このページを友だちに知らせる。

2005-01-01-SAT



戻る