潮風ほぼトレイル

「いま、何か音がしませんでしたか？」

しました。
しましたしました！

下り坂の、
私たちのバラバラした足どり。

また「おおー」といって、
写真を撮っている。

雪が消えた。
ということは、さっきのとこが、
いちばん標高があったんですね。

ここから下り坂だ。
やっほー。
田口くんも上着を脱いでいますが、
いま私は暑くて暑くてたまらないのに、
顔とか手とか耳はきんきんに寒いです。

「あっ。人の足あともありますね。
わーー、トレイラーが通ったんだ♪
ほかにもここを歩いた人がきっといるんだ♪
わーーー♪」

（なんでそんなにうれしそうなのか
歩くのに必死すぎてわからない）

「鹿はこう」

「ちがいますよ。
熊なら、こうです」

「これ、何かの足あとですよ。
鹿かな？」

熊じゃない？！

ちょい待って、田口くん！
足跡をたどって歩くから。
ここでどちらかが転倒し、
脳しんとうを起こしたら、
もうふたりとも、おわりだから！

雪道からのォォ、
うみー！！

こんな景色、
いままで知らなかった！

夢だけど、
夢じゃなかった！