赤いほっぺを輝かせながら、
ドラゴンの乗客は一同、
一ノ関に降り立ちました。

ハッ。
気づけば睡眠率20パーセントに減っていた。
いかん。起きよう。
ていうか、高校生がどこからか乗ってきていて
乗客が増えて、
私のパーセント調査が
メチャメチャになってしまった。
高校生は運動部です。ホッケー部かな。

乗っているお客さんは
席の熱風のせいでみんな
赤いほっぺになってます。

ドラゴンレールは、
なにがってね、
ものすごくポカポカするんですよ。
座席の下からいつも、
熱風のようなものが出ているんです。

気仙沼のみなさん、
ドラゴンで正気を保てたことは、ありますか？

いま、見渡すかぎりの乗車数、５名。
男性率80パーセント。
そのうち、目を開けているのは20パーセント。
タヌキ寝入りとか、悩んでいるだけとか、
あるかもしれないけれども、
起きているように見えるのはいま、
私の、このアイズだけですよ。

ああでもいま、車内睡眠率が
とうとう100に達しようとしています。

ドラゴン〜ドラゴン〜

ドラゴンは発車しました。
土曜日の、この時間のドラゴンは、
すいていました。
イチゴのいいかおりも、
とくにみなさんにご迷惑にはなっていません。
私は横に長い席の
はしっこに座りました。

この、ドラゴンレール大船渡線が、
私をいつものとおり、
一関につれていってくれます。

仲間は、いま誰もいなくなりました。
お父さんと娘が、私にはいた気がする。
手にはいい香りのイチゴがある。
でもお父さんも娘も去った。
車もない。
Suicaも使えない。
でもドラゴンがいる。
ドラゴンはまだ発車していない。
ドラゴンさえいればもう大丈夫。

そして私は、
なにか、わけのわからないことをしていますか？
していますね。
仙台から直接、車で
気仙沼に来られるようになったよー、ということで
お送りしてきた本日です。

今日通ることがなくなったはずの一関に、
私はこれから電車で向かわせていただきます。

サユミちゃん、おつかれさま！
運転、どうもありがとうー。
また明日ねー。

もーー、道の駅でまったりと
人生の話とか別れの話とか
ブーメランの話とかしてるから、
こんなぎりぎりになるんだよ。

はい買って、切符買って。
よし、じゃあね、また明日！

よし、なんとか、ほんとぎりぎり！
盛岡にスガノが着けば、
今日の中継は終わりです。
じゃあねー。寝過ごすなよー。

切符は？
「Suicaで行けるはず！」
よし、じゃあ、明日ね！
中継、がんばりましょう。
「ハーイ、じゃあね！
すみません、Suicaで入れますか？」
駅員さん
「Suicaは使えません」
「ひーー！」
ひーー！

見えた、着いた！ ぎりぎりだ！
サユミちゃん、あと何分？
「４分です！」
ひーー、切符買え、切符！