
糸井
「むかし作ったコマーシャルソングの
『おいしい生活』は
すきなものを並べただけなんだけど
あの歌詞を合作で書いてるときも
ぜったいうまくいくという自信があったよね。
あれはいったいなんだったんだろう」
矢野さん
「歌詞の文字だけでなく
調子で伝えることもなにもかもひっくるめて
やれる、ということなのかな」
糸井
「シンガーソングライターの人は
自分がやることだから信じられんだろうね」
矢野さん
「そうかもね」
矢野さん
「これも、意味を伝えたいというよりも
『感じ』を伝えたいということなんだよね。
まるで俳句みたいということを
つくったときも言ってましたよね。
劇的展開とか、男の子が思いを遂げるとか
そういうことはないんです。
状況が描かれているだけ」
糸井
「それがどうしたんだよ、ということなんだよね」
矢野さん
「朝日と夕陽があたる家、という詞が
さいごにはいってるんですけど、
その家が、じぶんなりの家として
みんなあたまのなかにあるんですよね」
糸井
「その調子をうまく伝えるというものが
歌なのかもね」
糸井
「今回、ほぼ日を通じて
言葉の募集をしました。
さっきアッコちゃんが住所を歌ったのと同じように
ひとつの言葉をどう歌にするか
やってみていただきたいんですけれども。
この言葉です」
気仙沼にいます。
糸井
「よく、散歩中の犬に『行くよ』とか
『おとうさん待ってるよ』とかいうと
言うこときいたりするんだえけど、
あれって、言葉の意味を理解してるんじゃなくて
言葉の調子でいうこときいてるんじゃないかな、
と思うんだけど」
矢野さん
「そうねぇ。
そうすると、言葉というより、
調子が人を動かすのかしら」
糸井
「そうかもね!
だって、英語の歌だって
意味がわからなくてもぼくら感動してるもの」
矢野さん
「そうだよ」
糸井
「たとえば、ここの紙に住所が書いてあるんだけど、
宮城県気仙沼田中前‥‥」
矢野さん
「住所?」
糸井
「歌ってみて」
矢野さん
「♪みやぎけ〜ん〜 けせ〜んぬ〜ま〜
たなか〜ま〜えぇ〜♪」
場内大拍手。
矢野さん
「言葉の意味を考えるというより
言葉を遊ぶ、という欲求が
私にはあるわけです。
ころがしたくなるんですよね」
糸井
「耳でころがすの?」
矢野さん
「耳の中で、ころがすんです」
















