矢野さん
「例えば、糸井さんといっしょにつくった
　『自転車でおいでよ』
　という歌がありますけれども」

♪ポロリン　ポロリン
　自転車で、おいでよ〜

矢野さん
「これも、意味を伝えたいというよりも
　『感じ』を伝えたいということなんだよね。
　まるで俳句みたいということを
　つくったときも言ってましたよね。
　
　劇的展開とか、男の子が思いを遂げるとか
　そういうことはないんです。

　状況が描かれているだけ」

糸井
「それがどうしたんだよ、ということなんだよね」

矢野さん
「朝日と夕陽があたる家、という詞が
　さいごにはいってるんですけど、
　その家が、じぶんなりの家として
　みんなあたまのなかにあるんですよね」

糸井
「その調子をうまく伝えるというものが
　歌なのかもね」

糸井
「むかし作ったコマーシャルソングの
　『おいしい生活』は
　すきなものを並べただけなんだけど
　あの歌詞を合作で書いてるときも
　ぜったいうまくいくという自信があったよね。
　あれはいったいなんだったんだろう」

矢野さん
「歌詞の文字だけでなく
　調子で伝えることもなにもかもひっくるめて
　やれる、ということなのかな」

糸井
「シンガーソングライターの人は
　自分がやることだから信じられんだろうね」

矢野さん
「そうかもね」

この一行をどんな歌にするのでしょうか。

まずは前奏。

♪
　けせんぬまに〜
　いま〜す〜

　けせんぬまに〜
　いま〜〜す〜〜

　〜〜
　
　いま
　あなたと♪

♪　♪　♪　♪


‥‥‥‥‥‥。

会場、大拍手。

（中継担当、この一行の歌で
　泣きそうになっております）

糸井
「なんなんだ。なにそれ？
　これはマジックの人がもらう拍手みたいだよ」

糸井
「じゃ、休憩前に、
　もうひとつお願いします」


じょ〜ずに出産したねえ。