糸井 ピンク・レディーのケイちゃんは
そういう人かもしれないけど、
「増田恵子さん」は、どうなんですか。
増田 増田恵子は、別に
思いのままに生きていればいい。
ナチュラルでいいよ、と思ってる。
糸井 でも、厳しい増田恵子像だって、
あったっておかしくないですね。
増田 まぁ、周りの人に言わせると、
普段もストイックだと言われます。
糸井 あ、そうですか! やっぱり。
増田 自分の決めたことは
泣きながらでもやるし。
糸井 ‥‥もしかして、
親もそうでしたか?
増田 親がそうでした。
糸井 ああ、そうなんですか。
近しい人もそうじゃないかな、と
思ってたんですよ。
増田 自分に甘くしちゃうと
いくらでも
甘くなってしまうような気がして。
糸井 それは誰でもそうなんですけど‥‥。
増田 自分をごまかしたら、
ごまかしたことを
いつまでも忘れられないでしょう?
嘘をついても、人はわからないですけど、
自分はわかっちゃいます。
それがずっとついてまわるから。
糸井 うん。自分は憶えてますからね。
増田 だから、自分の決めたことは
ごまかさず、嘘つかずに
やりたいんです。
糸井 そこに、自分だけじゃない
「ピンク・レディーだから」
という言葉が加わったら、
そうだよなぁ、なんでもできちゃいますね。
増田 ピンク・レディーになったら、
命も捧げないと許してもらえないだろうな
と思います。
糸井 そういうものなんですね。
増田 うん。
一日でも長く
ステージをやりたい。
だから、自分の健康はもちろん、
ミーの体もすごく心配になります。
「あ、風邪ひいたでしょ」
「ひいてないから!」
「いや、それはちょっとヘンだ」
お互いに戒め合って。
糸井 「あなたはわたし」ってことだ。
ひとりになったら、
ピンク・レディー・ハーフに
なっちゃうから。
増田 そう、ほんとに(笑)。
糸井 訊いてみなきゃわかんないですねぇ。
こんなことをケイちゃんが考えてるって
誰が思うでしょうか?
ただの人間としゃべってる気がしない。
‥‥モンスター?
増田 ふふふふふ。
私たちふたりが重なると
持ってる力の
何百倍も出てしまうとは思います。

お互い、年齢についても
痛切に感じています。
スーちゃんが亡くなったことも
大きな衝撃でした。
私にとってはミーが、かけがえのない人。
糸井 うん。
増田 明日どうなっても後悔のないように
生きたいと思いました。
糸井 そこまで本気で言えるのは、
やっぱり、見てきたものの
くっきり度が違うからなんだよね。
ぼくらもおんなじようなことは
考えるんですよ、たぶん。
だけど、ケイちゃんのおっしゃることは
ピントがもっと合ってる。
増田 私は難しい言葉を上手に使えないので
いつも自分の思いを
伝えられないんですが。
糸井 でも、ケイちゃんは、よーく見えてます。
「9月のステージまで、
 生きてるかどうかわかんない」
「明日どうなっても後悔のないように」
本気でそうおっしゃっていることがわかります。
そして、そういうことを
まじめに考えているにもかかわらず、
追い詰められた感じはしないです。
増田 それはないです。
糸井 だからこそ、そういう気持ちが
ステージでぜんぶ
「うれしー」になるんですね。
増田 はい。
「たのしー! しあわせだーっ」
で終わっちゃいます。
糸井 それはきっと、
すごい快感なんでしょうね。
増田 回を追うごとに、
ものすごい快感を感じています。
自分たちだけじゃなくて、
お客さんにも感じてもらいたいし
携わってるスタッフにも
感じてもらいたい。
そういう思いで、毎日、やってます。
糸井 では、最後に‥‥、
ピンク・レディーじゃなかったときの
ケイちゃんの話を聞かせていただけますか?
増田 デビュー前の?
糸井 そうです。

(つづきます)

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2011-09-14-WED