糸井 それから、おふたりそれぞれ
トレーニングをなさって。
増田 はい。ツアーがはじまったら
体を維持するためにたくさん食べて
プロテインを飲んだりしています。
糸井 そのくらいハードなことしてる、
ということですよね。
あの長いステージのあいだ、
ぜんぜん差し支えなく歌ってた。
アンコールになってから
水を1回飲んだだけ?
増田 いいえ、水はちょこちょこ飲んでます。
でも、あまり飲むと
横っ腹が痛くなってしまうので
のどを潤す程度にしていて。
糸井 なんだかマラソンやってるみたいだな。
増田 そうそう、そうなんです。
ステージがはじまる前って、
まるでマラソンの気分なんですよ。
「だいたいあの辺で苦しくなるなぁ」とか
「あの山場を超えれば」とか。

どんなに調子がよい日でも
はじまってみないとわからない。
「今日すごく調子いいと思ったのに
 なんでこんなに疲れちゃうんだろう」
「今日はどうしようかと思っていたのに
 本番がはじまって何曲かいくと、
 思ったよりぜんぜん体が動く!」
とかね。
糸井 いや、ほんっっとに、
スポーツ選手の発言を
聞いているみたいだね。
一同 (笑)
増田 「はい、バナナ」「次はこのドリンク」と、
トレーナーさんが
いろんな食べものや飲みものを
目の前に用意してくれるので、
言われるがままに摂って
ステージにのぞんでいます。

足もよくつるので、
小林製薬から出ている
コムレケアという薬を飲んで。
糸井 コム、コム‥‥?
増田 コムレケア。
糸井 こむら返りの?
増田 ケアをする。
糸井 小林製薬ならではのネーミングですね。
増田 それが効くんでね。
一同 (笑)
糸井 そのがんばりって、
いったいどこから来るんでしょうか。
増田 ピンク・レディーだからですよ。
糸井 かっこいい(笑)。
ピンク・レディーはなんでもできるんだね。
増田 いえ、できるというのじゃなく、
ピンク・レディーは、
なんでもやんなきゃいけないんです。
糸井 うーん‥‥そうなんだね。
増田 なんたって私は若い頃、
腹膜炎で手術して、
2週間入院するはずが1週間足らずで退院して、
おなかが開いているところにガーゼを詰めて、
武道館のコンサートをやったんです。
糸井 ピンク・レディーだから。
増田 そう。そして、このあいだ
福岡のコンサートの朝、
突然おなかが痛くなっちゃいましてね。
ひどい下痢で、脱水症状を起こしていました。
でも、コンサートがある。

そんなとき、腹膜炎でおなかが開いてた
あのときのことを思い起こすのです。
あの、穴が空いてた痛みからしたら
なんでもない。
糸井 ‥‥‥‥。
増田 すごくおなかは痛いけど、
ふさがってるし、と。
糸井 すごい(笑)。
明治の男としゃべってるみたい。
一同 (笑)
増田 あの当時の自分と比べて
ついついがんばりすぎてしまいます。
糸井 そういう経験を蓄積させて
いろんなことを計算し尽くさないと
あのステージは成り立たないですね。
増田 そうですね。
ですから私たちは
自分のいちばん弱いところを
よくわかっています。
私は喉が弱く、
気を抜いているとすぐ痩せてしまう。
ツアーのあいだはケガをしないように
とにかく気をつけます。

若いころ、いつもそうやって
自己管理をしていたことを思い起こしました。
前回の、2年間の限定のコンサートのときは、
ツアーが終わった翌朝に
すごい解放感を味わったんですよ。
だけど、よく考えたら今回は
「解散やめ」をしてしまったので、
限定がないんです。
糸井 あ、文言としてはそうですね。
増田 はい。まぁ、とりあえず、
今回のツアーは9月19日で終わるので、
そこまでは何がなんでも
ピンク・レディーでいなくては、と思っています。
糸井 でも「第一のコース」が終わっただけですね。
それは、大人にならないとできない仕事です。
「あそこまで行くぞ」という
ゴールのある話じゃないですもん。
ひょっとしたら、死ぬまで
ピンク・レディーかもしれないね。
増田 あ、それはそう。
死ぬまでピンク・レディーでいたいと思う。
糸井 だけど、プロ野球選手でも
引退しますよ。
増田 そうですねぇ(笑)。
だけど、一回解散してしまったので
もう引退はありません。
どちらかが死ねば終わりです。

(つづきます)

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2011-09-13-TUE