野に立つ一本の紅葉。まわりはまだ緑色なのに、一足先に秋の準備を始めましたといわんばかりの一本の小さなこの木が、ふしぎととてもいとおしく感じたりしました。秋ですねえ。
Camera NIKON D800E Lens 24-70mm/f2.8

前回は、デジタルカメラは“RAW”で撮ろう、
そしてコンピュータで“現像”をしよう、
というお話をしましたが、
少し専門的な話になってしまいましたので、
難しく感じてしまった人も多かったかもしれませんね。

掲載後、「そうは言っても、現像ソフトが難しくて‥‥」
というような声も聞かれました。
たしかに難しいところがあって、
ぼくも、それほど細かい設定をしていませんし、
実はそのやり方を熟知しているわけではありません。

ソフトの使い方もそうですが、
現像ソフトでいちばん大事なのは
「何を目的にするか」「どこをゴールにするか」
ということです。
RAWで撮影してパソコンで現像するときは
ほんとうにいくらでも色を変えることができますが、
目的にすべきなのは、「撮影したときの印象」です。
何を感じてカメラを向けたのか、シャッターを押したのか。
それをすっかり忘れてしまっていては、
現像するにも、目的がなくなってしまいますよね。
デジタル時代だからといって、
「とにかくたくさん撮影しておけばなんとかなる」
なんていうことは、通用しないとぼくは考えます。
やっぱり撮影するときの気持ちがとても大事なのですね。

さて今回は、この季節に、
この連載を読んでくださっているみなさんに
ぜひ撮ってほしいものをお伝えしたいと思います。

それは「夕陽にうつる紅葉」です。

ここのところ、東京もすっかり寒くなって来ました。
落葉樹の多い日本にとっては、まさに“紅葉の季節”。
寒くなりかけの季節は、色とりどりの紅葉のすがたが、
本当にきれいですよね。
(北海道や東北地方では、
 すでにそのピークを越えてしまいましたけれど。)

紅葉には、たくさんの神秘が詰まっています。
秋の紅葉というのは、見れば見るほどに不思議ですし、
とても目にやさしい、すてきな色彩だと感じます。
実は未だに「なぜ赤くなるのか」について、
はっきりとした答えが見つかっていないらしいですね。
一般的には、秋になると、
春の新芽から始まった葉の光合成能力が落ちてきて、
植物体として維持できなくなるので、
落葉して、休眠する。
その際に、“葉”から“枝”へ
光合成した糖分が行かなくなり、
その糖分と、葉の緑色の中にある成分が反応して、
「赤くなる」といわれています。

ぼくは、10年以上にわたって、
JRの仕事で、毎年
関西地方の紅葉を撮り続けてきましたが、
本当に同じ木でも、毎年その紅葉の状態は異なります。
毎年一喜一憂しながら撮影を繰り返していましたが、
時折、信じられないほどに
すべての木の紅葉が、赤く色付くときがありました。
そんな年は、往々にして、寒暖の差が大きい。
昼間はまだ、ポカポカ感じるほどに暖かいのですが、
日が暮れると、いきなり驚くほど冷え込みます。
そして、昼間はすっきりとした秋晴れで、
しっかりと腫れていて、
葉にもさんさんと太陽が降り注ぐ。
そんな年の紅葉は、いつもとてもきれいでした。

実はこの写真は雨の中で撮っています。雨といっても霧雨程度ですが、それでもやはり植物は、少ししっとりすることで、むしろ生き生きして見えるのですから不思議ですね。
Camera LEICA M8 Lens SUMMICRON 50mm/f2

紅葉と書いて“もみじ”と読むように
いわゆる“かえで”は、
紅葉の中でもひときわ赤く色付きます。
そこに混じって、微妙な“橙色”だったり
“黄色”だったりが混在すると、
ほんとうにきれいです。

ぼくが、JRの仕事で使用していたカメラは、
中判から大判のカメラが多く、
すべてがフイルム撮影でしたので、
なんとかその“色”が写って欲しいと願いながら、
シャッターを切っていたことを思い出します。

もちろん、フイルム時代も、
ある程度はプリントする時や、
あるいは印刷物にするときに調整が出来ましたが、
やっぱり大切なのは撮影のときに、
そのときの“光の色”がどれだけ残せるか、でした。
だからぼくは、現在、
デジタルで簡単に色調整出来てしまう時代でも、
やっぱり“ほんとうの色”に勝るものは
ないと思っているのです。

きれいな紅葉を探しながら、
同時に、そこにある光の状態を追いかけていく。
その感じは、まさに“紅葉狩り”という感じです。
紅葉の写真は、赤い葉の葉脈が見えるように、
ちょっと逆光気味で撮ってみてもきれいですが、
ぼくが一番きれいだなあと感じたのは、
一日の最後に、夕日に赤く染まる紅葉でした。
これも、後処理で赤くするのとはわけがちがいます。

葉が赤くなる“紅葉”というのは、
もともと、光合成によって作られたいのちの源が、
最後に、あんなにもきれいな色をつくる、
ひとつの表現です。
考えようによっては、あの色は、
“光の色”そのものなのかもしれません。
だからというわけではないでしょうが、
“夕陽に染まる紅葉”を見ていると、
“光と光のシンクロ状態”を見ているような気がします。

ですので、ぜひ一度、“紅葉狩り”の最後に、
“夕陽に染まる紅葉”を見て、
写して欲しいと思っています。
そして、その“ほんとうの色”を
しっかりと記憶して下さい。
その“記憶の色”をもとに、
デジタルで現像をしてみてください。
これはとてもよい練習になると思います。
このことは、これからのカラー写真にとって、
最も大切なことになるのではないかと感じています。

まさに夕陽に染まる紅葉。そこにある木々が紅葉にしていることで、そこに射し込んでくる夕陽によって、その世界が赤くなったかのような錯覚とともに、とてもあたたかかくて眩しい世界。
Camera NIKON D800E Lens 70-200mm/f2.8

2014-10-31-FRI