ガールズ・フライト!
宇田敦子。宮下マキ。坂本美雨。
御免、糸井重里。

クリエイティブがなければ世界はない。
うるおいがなければ、人生はない。
若さがなければ、冒険はない。
まるで偶然のようにはじまったコラボレーションの軌跡。

まず、彼女たちが、空を飛んで見せるでしょう。
そしたら地上にいる人たちも、飛べると信じるでしょう。
ガールズ・フライト。
どこに着地するかはわからないけれど、
とにかく飛ぶことをはじめた女性クリエーターたち。
どうぞ、拍手と風を送って下さい。

第1回 宇田敦子さん。

第2回 宮下マキさん。

第3回 坂本美雨さん。

第4回 小宮山雄飛さん。

 
第5回 やりたいのか、どうか、それが問題だ。


「ほんとうにやりたいこと」
「誰かと組んでできるから、やりたいこと」
そんなことを実現したいと思っていた
3人のガールズが、今年の春に集まりました。

    

宇田敦子さん、宮下マキさん、坂本美雨さん。

それぞれの分野では、
いわゆる「若手」にあたります。

駆け出しかもしれないけど
アマチュアではない人たちが、
「ほんとうにやりたい」と考えたことを
思いきりやると、どうなるのでしょうか?

「失敗するかもしれないから、よそう」
と考えることをせずに
クリエイターどうしが組むと、
どんなものを生むことができるのでしょうか?

・・・そんな可能性を見たいという気持ちが、
3人のコラボレーションを、はじめさせました。

「ほぼ日」は、
NHK-BS1番組「デジスタ」とともに、
彼女たちの様子を特集しつづけています。

今回の「ほぼ日」では、
それぞれの仕事や留学を抱えた彼女たちが、
今後どうするかの方向を具体的に考えはじめた
10月はじめの話しあいを、お届けしましょう。




糸井 ひさしぶりだね。3か月ぶりぐらい?

美雨ちゃん、
9月11日にニューヨークにいたんだよね?
美雨 はい。
あんまり覚えてないの、あの事件のこと。
でも、わたしだけが待っているかと
思っていたら、糸井さんもアメリカにいて。

糸井 あ、「ほぼ日」見てたんだ?
美雨 ずっと見てた。
糸井 最初にテレビをつけたら、
「火事だよね」みたいになってたよね?
美雨 うん。
うちの場合は、住んでるところの窓から
こうやってガラって見たら、
「あれえ? 燃えてるよ」みたいな。

糸井 あんまりな姿だからね、
把握できなかった、最初は。
・・・あんまりだもんねえ。
美雨 ちょうど東京に帰る日だったから、
わたしと母で朝食を食べてたんです。
なんか騒がしいね、と言いながら食べてて。

たぶん2機めがつっこんだ時だと思うけど、
今度は、外でものすごい声がしたから、
「ケンカ?」とか思ってワーって外を見てみたら、
・・・燃えてるよ。
テレビつけたら、ああいう感じで。

糸井 ぼくらでいえば、
東京タワーをいつも見ながら
暮らしているのがなくなった、
みたいなことなんでしょ?
その話、みんなに聞かれすぎて飽きた?
美雨 いやあ、飽きてない、たぶん。
人に話さなければ、
自分のなかで消化することができない。

糸井 しゃべったほうが楽なくらい?
美雨 うん。
糸井 へぇー。
美雨 生々しい現実で消化できてないから。
よく「ごめんね聞いちゃって」とか
「言わないほうがいい?」
って言われるけど、別にそんなこともない。
ぼんやりしすぎちゃって、
まだ夢の中にいるみたいな・・・。

あの日のことは、あまり覚えていない、
というのが正直な印象です。





糸井 なるほどなぁ。
宮下さんは、もうすぐ写真家としての
奨学金留学で、ニューヨークに行くんだよね?
1年ぐらい、向こうに生活の拠点を置いて。
宮下 ええ。あと5日。
10月8日から、ニューヨークです。

あっちに行ってから、
パソコンで送るだけじゃなくて、
写真を宇田さんに送って、というかたちの
やりかたもあると思うんです。

宇田 ニューヨークにいる時の
美雨ちゃんと合流して
写真を撮ってもいいし。

宮下 うん。
糸井 ガールズフライトのメンバーのメールは
ずっと見てたけど・・・。
何て言うのかなぁ?

ぽつぽつとやりとりはあるけれども、
このところは、ちょっと、
おとなしい気がしてました。
宇田 ええ。
そうなってしまいました。

わたしはノルウェーに行って
研修の仕事をしていましたし、
宮下さんは、10月からの
アメリカでの留学の準備があったし、
美雨ちゃんはアメリカと日本と
行ったりきたりということで、おたがいに
実際に会う時間が、少なくなって・・・。

宮下 夏のはじめに、
美雨ちゃんの東京の家で
一回だけ撮らせてもらったことがあって。
あとは、会えなかったね。

宇田 その写真を、どう
かたちにしようかと思ってたんです。

宮下 ・・・美雨ちゃんは、なかなかやり手で。
警戒させないで、見せることを
できる人なんだな、って思った。

美雨 (笑)ふふふ。そうかなあ?
あとは、3人で個人的に撮った写真を
送りあってて、それは楽しかったけど。

糸井 まあ、ぼくは、
みんなが迷っている状態も含めて
楽しみたいと思って、
敢えてほとんどタッチしていないけど、
「本になってもいいし、
 CD-ROMになってもいい。
 展覧会にしてもいい」
と言われる自由には、
「何からやっていいか、わからない」
という不安も入っているの?



  ・・・でも、
不安がる必要はないんですよ。
本にしなきゃ、というプレッシャーを
感じる必要もなければ、
インターネットで見られるように
画像の容量を小さくしなきゃ、と
気にする必要もないと、ぼくは思ってます。
宮下 不安とかは、ないです。

ただ、最終的にどういう形態に
なるのかは、気になります。
写真なら紙なのかな?と思うし。

・・・でも、やるならやるで、
ドーンと派手にやりたい!
という気持ちだけは、あるんですよ。

展覧会とかを考えるだけで楽しい。
見せかたは何でもありだと思うし。
わたしは、最終的には展覧会にしたいんです。

宇田 うん。
美雨 いいね。
糸井 ・・・あの、
いま聞いてて思ったんだけど、
来春をめどに展覧会をするっていうのは、どう?
でたらめに言ってみたんだけど。
宮下 えーー!
うれしい!!

宇田 たのしそー。
糸井 何か、このチームでやったことを、
リアルな世界で見せたくない?
美雨 うん!
糸井 たとえば仮に、春に展覧会だとか。
出版やCD-ROMもあるかもしれない。
でも、展覧会をやることを、
いったん決めて、やるとかいうのは・・・。
宮下 あーもうぜひ!
宇田 ぜひぜひやりたいです。
糸井 (笑)ノってきた。
やっぱ、具体的な話のほうが、
おもしろいね。

いまの展覧会は仮に言ったんだけど、
「やりたい」と
ほんとうに強く思う人がいるなら、
まわりをどう巻き込むかも含めて、
それはもう、何とでもなると思うんです。

でも、何をどうするにしても、
「絶対やりたい」って思うのが先ですよね。
何をやりたいかの核がなければ、
手伝いたいと潜在的に考えてくれている人も、
「足りないのは、人手なの?お金なの?」
と、何を手伝いたいのかさえ、わからないし。

それに、このメンバーで集まって、
学芸会的なことをやっておしまいだったら、
やらないほうが、いいとさえ言えますよね。
・・・「あの人も参加」「あの人も参加」と、
過去にそこそこの仕事をした人たちが集まって
何も生まなかった例は、いくらでもありますもん。



   プロどうしが集まったボランティア仕事で、
結局全員が本職を重視して何もしなくて
しかも誰もが「いいひと」のまま、
つまらなくなったものって、多いよー?

打ちあわせだけが長く過ぎていく会議だとか、
誰もが当たり障りのないことだけを言って、
安全に簡単にできていくものごとって、
いちばん無意味じゃないですか。

「結果的にはあれだけど、がんばったね」
って、あとで言っても、ぼくなんかは、
「何をがんばったの?」とか、思っちゃうもん。
やりたいと考えることを、がんばれてないから。

でも、宮下さんたちが、
次につながる何かの場所を作り出すとか、
あたらしいジャンルをつくっちゃうとか、
あとで「ここからデビューしたよね」と
言えるぐらいの何かをやれたら、
ぼくは、ものすごくかっこいいなあと思う。
宇田 うん。
あたらしいジャンル、つくりたい。

糸井 ソフトが最初に大事なものとして存在して、
やりたいことがとにかく先に来たうえで、
あとは実現するかを、
オトナも交えて完成させるという方向を
ぼくは考えています。

・・・ついつい、
若い人だと、クリエイターでも
「無理だよねえあれは」って、
ケチくさく考えてしまうでしょ。
でも、そういう
「無理だよねえ。じゃあ」
という地点から発想するものに、
いいものは、ひとつもないじゃないですか。

でも、誰かとんでもない馬鹿が、
「無理じゃない。やれる。本気でやりたい」
と深く思いこんだものは、もしかして、
という夢を乗せられるような気がするんです。

本気でやりたいと思う人は、
「無理じゃなくさせるには、
 どうすればいいんだろう?」
と考えるでしょうし、
その結果、失敗するとしても、
ほんとうに真っ正面から失敗に突っ込むよね。
そうしたら、
「次はどうしようか」
と、また考えられるじゃない?

失敗しないように
何かをつくっている人には、
ほんとうの意味での失敗さえ、
できないんですよ、きっと。
まっすぐ失敗しないと、
やるにしても、つまんないんですよ。



   ・・・何を言いだしてもいいけど、
やりたいことを言ってほしいな、
という希望が、ちょっとだけ、あるかな?

自分ひとりでも巻き込んでいきたい、
という立候補者がわの気持ちがないままでは、
何もフライトしていないことになるかな、
というのが、正直、少し思うことです。

・・・あ、長くなっちゃったけど。
いま、いちばんやりたそうなのは、
宮下さん?遠慮のなさそうな(笑)。
宮下 ふふふ(笑)。
展覧会は、毎年やってて、もう、
やらないと気がすまないんですよねー。
考えるだけでワクワクする。

そういうイベント、大好きですよー。

糸井 なんか、男らしいし。
美雨 そうそう。男らしい(笑)。
糸井 たぶん、誰が軸になって立つか、
みたいなことをわかっていたほうが
全員がやりやすいと思うんです。
数か月、ぼくが遠くから見ている限りでは、
宮下さんが走り出しちゃうのが、
いちばん速いような気がする。
そこを支えて宇田さんと美雨ちゃんが
三角形で走っていくみたいなイメージが、
いいような気がするけど、どうかなあ?
美雨 そう思う。
糸井 いくつものプロジェクトが
同時並行して進むのは、
ぜんぜんかまわないし。
宇田 うん。
それでわたしも美雨ちゃんも、
おもしろそうな人を連れてきたり。

糸井 ふくらみは、
すごいいっぱい考えられるよなぁ。
おもしろい人いっぱいいるもん。
宮下 春に展覧会、だねー。
たのしみ!

宇田 春、春。


しばらく会えないなかでの
再始動というかたちの話しあいは、
このような展開を見せました。
このあと、またしばらく、
3人の会わない時期がつづきます。

・・・春に展覧会をやる?
・・・やるなら、どうしてゆく?
・・・何を、ほんとうにやりたい?

新メンバー獲得があるかどうかも含めて、
「たとえば、展覧会のコンセプトが、
 ほんとうに決まるのかどうか?」
などといった物語は、これからはじまります。

うまくいくか、壊れてしまうのか。

このチームの行方を、ほぼ日は、しばらく
じっくりと見守っていきたいと思います。



(※文中に掲載している画像は、
  10月からニューヨークで写真を撮っている
  宮下マキさんが、送ってくれたものです)



宇田敦子さん、宮下マキさん、坂本美雨さんが
進めているコラボレーションの様子は、
NHK-BS1「デジタルスタジアム」でも特集中です。

感想や激励などは、
メールの表題に「ガールズ」と書いて、
postman@1101.comに送ってくださいね。

2001-12-10-MON

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