2011年2月08日解体完了、本文入稿。

「さよならペンギン」は解体された。
スキャンをされて、いままでは一冊の絵本だったものが、
デジタルデータに変換され、
「編集」をすることができるようになったのだ。

さて、これをどうやって「編集」していこうか。
はたして、「編集」は必要なのか?

実は、解体をする以前から、
「復刻」の方針については、度々話をしてきてはいたのだが、
結論には至っていなかった。

本を解体したあとに、デザイナー清水さん、凸版藤井さん、
そして、編集の永田があつまって、話を始めた。


▲実は、引っ越す前から、その議論は何回かしていたが、
 結論は出さずにいた。「実際に」という時にならないと心はきまらないものだ。

前提として、必ず変更しなければならないことも、ある。
それは、カバーにはいっている出版社名や、
価格などが明記されている部分だ。


▲たとえば、この「すばる書房」や「980円」という価格だ。
このあたりは「情報」なので、
「今」の実情にあわせたものにしなければならない。
出版社は「すばる書房」ではないのは事実なので、
変更をしなければならない。
また、価格ももちろん「今」にあわせて、変更する必要がある。
このあたりは、とてもクリアな話である。

問題は事実以外の部分、
レイアウトを再デザインするか否かだ。

表紙のデザインなどの前に、
全員がまずひっかかったのが、本の中身の文字の部分である。
まず、一つの見開きをご覧いただこう。


▲「さよならペンギン」の本文はこんな感じのレイアウトになっている。
 分かりやすいように見開きの真ん中にグレーの線をいれた。
ひとつめが、文字のブロックの位置である。
清水さんも藤井さんも永田も、
これにちょっとした違和感を感じていた。
文字のブロックが、
左側に統一したスペースをもうけてあり、
その結果、右側のあきがまちまちになっている。
(これは他の見開きでも同様だ。)
「ここが、ちょっと気持ち悪い」ということなのである。
できることならば 、文字をセンターにあわせたい。

そして、次に文字と文字の間のスペースである。

▲分かりやすいように文字のブロックを拡大。
文字の間のスペースが、まちまちになっていて
やぱりこれも、感覚的に「落ち着かない」。

さらには、改行位置である。
「こんな」という文字で改行されている。
もちろん、これはじっくりみるとわかるが、
「こんな」を2行目にしてしまうと、
2行目から文字がこぼれてしまう、ということがわかる。
それはわかるんだけど、
「座りが悪い」と思ってしまうのも確かなのである。

▲かなり行きつ戻りつの議論をしていた3人。おだやかにモメていた。
 いや、正確にはモメていたのではなく、とにかく議論をしていたのです。

この3点は、基本的には
「気持ち悪い」「落ち着かない」「座りが悪い」という
感覚的な部分での話をしている。
この、感覚的な部分を根拠に
手を加えてもいいものなのだろうか?

「直したい」という欲求と、
「直してもいいものなのだろうか?」という迷いが
なかなか結論をださせない。

しかし、ここで永田が言った。

「この本をどうやって復刻したのかという説明を
 原稿にすると考えてみたんだよ。

 例えば、版がずれていて読みにくいとか、
 文字が潰れてしまっていることを直すとか、
 ノイズを払うようなことっていうのは、
 説得力をもって書けると思ったんだけど、
 文字間や改行を
 『今の感覚だと違和感があるから』直しました。
 ということは、どうも説得力に欠けていて、
 書きにくいとおもったんだよ。」
と。

これをうけて、清水さんは
「ノイズを払うっていうことは、
 つまり、リミックスじゃなくてリマスターってことか!」

そして、永田がキーになる一言を。
「そうそう! 『さよならペンギン』はビートルズ、
 と考えてみるとクリアになるんじゃないかな?
 ビートルズのリマスターと同じように考えるんだよ。
 あくまでも、当時に忠実。
 新しい音をいれて、リミックスするんじゃないんだよ。」

「ビートルズのリマスター」というキーがあれば、
細部をデザインするときにも、指標がはっきりとしてくる。

「デザインするときに、
 ソフトカバーのほうの見返しの
 このペンギン柄そのものを使うのはアリだけど、
 このこの柄に改変を加えるのは違う、
 という理解でいいんだよね?」
という清水さんに、永田は深く頷いた。


▲これが見返しの部分。非常にカワイイ。

これで、復刻の方針は決まった。
「完全復刻」というやつだ。

「つまり、表紙周りやカバーも、
 このまま行くと考えてよろしいですね?」
と、藤井さん。

「サイズなども、このままですね。」

はい。そのように!
おお、明快に返事ができる。
傍観者であったモギにだって、返事ができるぞ。
その後しばらくのあいだ、
清水さん、藤井さん、永田が
「ビートルズのリマスター」について、
いろいろと語っていたが、それはここではもちろん割愛だ。

その、永遠に続くかと思われた
愉快な「ビートルズトーク」を止めたのは、
デザイナーの清水さんだ。

「あのー、藤井さん、
 カバーを二つ作るって、できますか?」

(つづく。つづきながら、明日は販売当日だ!
 やっぱり、とうとう復刻記は終わらなかった!)

2011-03-31-THU
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