SHIRU
まっ白いカミ。

163枚目:「無口な末裔。」

 

「王様、異常ありません。」
「王様、異常ありません。」

異常の初期症状をみのがしたドクターのせいで、
その国は徐々に狂っていった。

聴覚が過敏になった王様、
コンポのボリュームが釘打ちされたのは
その幕開けに過ぎなかった。

いつしか当然のように施行された、
言語流通量規制法。

「あ」〜「ん」の各音は国の専売公社で
購入しなければならなくなった。

国民は国中を飛ぶバグによって、
一字一句発声をカウントされ
所有言語量以上の使用は重加算税をとられた。

割舌の悪い者は逮捕されて、
早口言葉のトレーニングを受けさせられる。

当然、仕入れの量が制限されるので、
そうそう無造作に使うわけにはいかなかった。

「ありがとう。」「むかつく。」 「かわいいね。」
言葉の価値とGNPは急上昇した。

そして多量に仕入れた言語業者から、
パッケージで語彙を買うと割安になるのだった。
同じ語数で、より美しくパッケージングする
有能な言語マネージャーがもてはやされ

時流を読むものには、
流行語を見越して先物取引。
いくつかの音をストックして、
一儲けをたくらむ音声ディーラーなども登場した。

「めし、ふろ、ねる。」
圧縮言語を操るものさえ登場した。

「お前達、いままで黙っていたけれど、
 実は私は若い頃、モ○○○…」

いまわのきわで在庫が切れて、
婆ちゃんの若い頃の秘密を聞き逃す。

国民は皆、しだいに短い言葉で
的確に話す術をみにつけた。

大企業では効果的に音声を節約する
音声会計士がお抱えになり、
17文字、多くても31文字に要約する
彼らの技量が重宝された。

世間話をすることが至上の浪費となり、
午後の陽光降り注ぐ喫茶店。
身なりのいい紳士淑女の談笑が羨望された。
1ヶ月黙り込んで、デートの1日に
すべてつぎ込む、そんな一点豪華主義。

「ああ。こんな言葉少ない人とわかっていたら…」

挨拶が真っ先に節約され、人心は荒み、
酒場の静かなその国は遠からず滅んだ。

無条件降伏の前夜、暴動がおきた。
王様の体は八つ裂きにされ、
血みどろのその残骸は雨の中央広場にさらされ、
民は大声で吠えた。

亡国の民は難民となり、それから数千年。
いまや、その末裔はただ無口なやつ、と思われて
私達のまわりにいる。

思い出してみるといい。
無口だが、一度怒らせるとすごく怖い人がいるだろう。

そいつだ。


エプソンプリンター購入記念
プチ絵本プレゼント…当選結果。

だ、だ、だ、だん!…うぎゃ。(返り討ち。)
ファッキンジャップぐらいわかるって、
わかんだよばかやろう。シルチョフです。

前回のプチ絵本プレゼント企画には、
たくさんの応募、ありがとうございました。
3名の枠に115通の応募…と、厳しい倍率でしたが、
数億分の1の確率で生まれてきた皆さんのこと、
これしきたいしたことはありませんよね。

心を鬼にして、手元にあった「虚構船団」を
ぱらぱらとめくって厳選なる抽選を行いました。

さとうさん、おのぐちさん、もりさん、
がろぴんさん、くおんさん。

ちょっと増刷して5名の方にお送りしました。

それから感想を書いてくれたり、
子供の誕生日だったり、妊娠されていたり、
せっかちにも住所が添えてあった方全員には
残念賞として102枚目のまっ白いカミ、
ただのブラックコーヒーが飲みたかった。」を
ポストカードにしたので送りつけました。
もう
次にこういう企画をした時には、
同じ手じゃ残念賞も狙えませんよ。

互いに何かを切磋琢磨するとしましょう。

じゃ、また。

2001-02-14-WED

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