BUSINESS
オトナ語の謎。
オレ的にはアグリーできかねるんだよね。

■■■  第7回 オトナの基本用語:その7  ■■■

冒頭に注意をうながしておきたいことがある。
どうかみなさん気をつけていただきたい。
それは、仕事中にオトナ語を探していると
仕事に支障をきたすということである。
「あ、これオトナ語」などと思って
喜んでいるうちはまだいいが、
「わ、いま私、使ってんじゃん」とか思い始めると、
なんとも言動がぎくしゃくし始めて、
右手と右足が両方出るようなことになってしまう。
なので、ぜひ、肝に銘じて欲しい。

「オトナ語を楽しむことと、
 オトナ語を使うことは、
 別アタマで」
ひとつよろしくお願い申し上げる。

全国のオフィスでがんばる諸先輩方、
お世話になっております。
たとえあなたと私が初対面でも
お世話になっております。
たとえあなたが元気いっぱいでも
お疲れさまです。

社会に飛び交う謎めいたオトナ語を紹介する当コーナー、
モニターの前のあなたを
「あ、それあったか」とうならせつつ
大小さまざまなオフィスに資本金の差別なくお届けする。

合い言葉は「なるはや? 昼イチ? ペンディング?」
謎めいたオトナ語を叡智の光で照らせ。
昼休みのオフィスに吹き込む一陣の風、
それがすなわち「オトナ語の謎」
体調不良をぶっ飛ばしつつ、
さまざまな方面にコミットしながら、
寝ワザ絡みでお届けする。
爆弾を抱えた現場のことは忘れて、
おしりまでじっくりご笑覧くださいませ。


経費で落とす
(提供者:木尻透)
■あまりにも当たり前の言葉として
 認識されているためか、
 意外に投稿数は少なかった。
 経費をつかって処理することを
 「落とす」と表現するのは
 冷静になると、特殊な言い回しである。

マネージャー
(提供者:葉子、かっしー)
■学生諸君のイメージと
 社会人のそれが大きく異なる言葉。
 社会におけるマネージャーは、
 レモンの輪切りを用意したりはしない。
 部下を持つ管理者をそう呼ぶのだ。
 副主将と恋に落ちたりはしない。

ボール
(提供者:KEN)
■投げたり受け取ったりする意味では
 球体のスポーツ用具と同じだが、
 オトナがいうボールとは
 やりとりする質問や要求やアイデアを指す。
 投げ合ったりするうちに
 どこへ行ったかわからなくなるあたりも
 スポーツ用具と似てはいるが。

参上いたします
(提供者:ヨシ)
■それでは、みょうにち10時に参上いたします。
 おまえは、忍者か。いいえ、社会人です。

軟着陸
(提供者:てぽどん)
■進めている企画の現実的な結果を「着地」と表現する。
 頓挫しかかった企画でもなんとか「着地させたい」。
 いろんな犠牲を払いながら企画が「着地」するとき、
 それは「軟着陸」と呼ばれるという。
 考えてみると、プロジェクトXという番組は
 「軟着陸」のドキュメンタリーであるのだな。

フレキシブル
(提供者:りる)
■多くの場合、「対応する」という言葉とセット。
 臨機応変に、という意味だが、
 例によってなぜ英語かを問うてはならぬ。

バッファ
(提供者:みきぽん)
■もともとはパソコン用語かもしれない。
 ある程度、どの役割にも使える領域のこと。
 「じゃあ、4ページ目をバッファにしといて、
 とりあえずこの線で進めましょうか」
 ついつい水牛を想像してしまう人は子どもだ。

ジャストアイデア
(提供者:リオタ)
■必殺、ジャストアイデーアッ!!
 その実体はたんなる思いつきであって、
 会議などで思わず適当なことを言ってしまったときに
 「これはまあ、ジャストアイデアですけど」
 などと使う。似たような必殺技としては
 フラッシュアイデアがある。

小職
(提供者:キヨシ)
■オトナは自分のことを下へ下へと持っていく。
 へりくだればへりくだるほどオトナである。
 小職とは、一人称をへりくだる言いかた。
 いっかいの職員、といったニュアンスか。
 ちなみに銀行員などは「小員」になる。
 職種を問わない「小生」もとりそろえております。

この子
(提供者:まじょ)
■自社の製品に対する愛称。
 「この子が売れてくれるといいけどねえ」
 そこはかとなく愛情を感じる言葉であり、
 ドライなオトナ語のなかにあって異彩を放つ。
 自分のパソコンをそう呼ぶ人もいますね。

オンナノコ
(提供者:はなこっち、涼ちゃん)
■非常にざっくりとした意味で
 女性社員をこう呼ぶ男性上司がいるという。
 「じゃあ、オンナノコに取りにやらせますので」
 むろん、呼ばれた側は憤慨しており、
 今回この言葉を投稿してくれたふたりの女性も
 文面から察するに、ややカチンときていた。

〜女史
(提供者:女性営業員)
■これまた無神経な男性社員などが口にする。
 「山下女史、これお願いしていい?」
 本来は知識ある社会的な女性を呼んだらしいが
 今日ではあまりいい印象はないようだ。
 年下の女性社員を「〜嬢」呼ばわりする人も。

本チャン
(提供者:まゆこ)
■仮のものではなく、製品として使うホンモノのこと。
 あるいは行為としてリハーサルではなく、本番。
 「本チャンは5メートルになります」
 「いまが本チャンだと思ってがんばらなきゃ」

いただいた電話で恐縮ですが
(提供者:ジキルとハイド)
■この言い回しがスッと出てくるようなら
 あなたはいっぱしのオトナだ。
 先方がかけてきた電話をそつなくこなし、
 相手の用件が終わったところで
 伝え損ねていた案件などを切り出す。
 言われたら「おぬしできるな」と思うべし。

なんなんですが
(提供者:けーすけ)
■「さっそくでなんなんですが」
 「こんなものでなんなんですが」
 「お願いしてばかりでなんなんですが」
 そう言うあなたはなんなんですか。

とんでもございません!
(提供者:ドン)
■いくらこっちに問題がないとしても、
 先方が平謝りした場合はこう言わなくてはならない。
 「このたびはたいへんご迷惑をおかけしまして」
 「とんでもございません!」
 相手が言い終わるか終わらないうちに叫べ。
 間隔は短ければ短いほどいい。
 多少大げさなくらいでかまわない。
 平素から練習しておくとスムーズに言えるぞ。
 さあ、新入社員の諸君、ごいっしょに。
 「とんでもございません!」
 「とんでもございません!」
 「とんでもございません!」
 つぎは関西風に!
 「なにをおっしゃいますやら!」
 「なにをおっしゃいますやら!」
 「なにをおっしゃいますやら!」

ちょっと○○くん貸してくれる?
(提供者:ともちゃん)
■「わしゃ醤油かい!」と当事者なら思うだろう。
 けれど不思議とイヤな気はしないものである。
 誰かに必要とされるのはやっぱりいいものだ。

まっかっか
(提供者:ss)
■ものすごい原価割れ。びっくりするような赤字。
「例のあれはけっきょくどうだったんです?」
「いや、もう、まっかっかです」

まっしろになる
(提供者:スタカン)
■一瞬、思考を失ってしまう様子。
 重要なプレゼンでそうなる場合もあるし、
 思わぬ人物に出会ってそうなる場合もあるし、
 あまりの忙しさにそうなってしまう場合もある。
 矢吹丈とは無関係である。

ま、ま、
(提供者:はなび)
■年輩の上司などが温厚に場を取りなすとき使う。
「上手なやり方じゃなかったけど、ま、ま、勉強になった」
「先方もかなり怒ってたけど、ま、ま、それはそれで」
「灰皿投げられるとは思わなかったけど、
 ま、ま、最悪の事態ではなかったということで」

言った言わないの問題
(提供者:満月)
■社会に出ると痛感することになるのだが、
 「言った言わないの問題」はほんとうにあるのである。
 しかも、しょっちゅうあるのである。
 比喩や引用ではなく、実際に、
 「○○っておっしゃいましたよね、たしか」
 「○○とは言ってないですよ」
 などというやり取りがあるのである。
 今日も全国で3000件くらいはあるのである。

言った言わないの問題になってもなんですから
(提供者:ベック)
■多くの場合、これを言う時点で、じつはすでに
 「言った言わないの問題」になっているのだが、
 こう言うことによって、
 「自分はこれが言った言わないの問題に
  なっていることを認識している」ということを
 相手にアピールすることができ、
 それ以上の泥沼をくい止めることができる。
 先に使ったもん勝ちな感はあるが、
 使ってみるだけの価値はある。

仲良しクラブじゃないんだから
(提供者:)
■はたしてそんなクラブがほんとうにあるのだろうか。
 「仲良しクラブ」は「子どものおつかい」や
 「ボランティア」、古くは「慈善事業」
 といった言葉に置き換えられることもある。

すったもんだありまして
(提供者:あいちん)
■時代の流れに取り残されて消えゆく言葉は、
 意外にオトナが守り続けているという。

ソバ屋の出前状態
(提供者:Cazy3)
■先方から催促を受けて、その場しのぎに
 「いま送りました」などと答えること。
 「いま出るところです」「もうできます」
 「着いてませんか?」「まさに終わりました」など、
 オトナはいろんなソバを用意しているのだ。
 出版業界にいる人間はとくにソバの達人である。

手前どものにんげん
(提供者:ここみみ)
■武士道とは死ぬことと見つけたり。
 オトナとはへりくだることと見つけたり。
 「そちらに手前どものにんげんが
  うかがっておりませんでしょうか?」
 嗚呼、そこまで下へ潜らなくてはならないのか。

と、おっしゃいますと?
(提供者:ss)
■これはぜひ、覚えて帰ってください。
 たとえば相手の言葉が専門的で理解できなかったとき。
 「と、おっしゃいますと?」
 かなりの無理難題を切り出されて、
 おいおいほんとかよ、と思ったとき。
 「と、おっしゃいますと?」
 ズバリと問題点を突かれて
 言い訳を考える時間が欲しいとき。
 「と、おっしゃいますと?」
 あなたを窮地から救う魔法の言葉。
 むろん、根本的な解決には至らないので注意。


本日はこのあたりで失礼させていただきます。
最近、当コーナーをきっかけに
ほぼ日刊イトイ新聞の読者になったという方もいて
担当者としてはうれしいかぎりです。
手前ども、本日も、当コーナーのほかに
たくさんの新メニューをご用意させていただいております。
お時間ございましたら、こちらのほうもご覧くださいませ。
それではまた明日。よろしくどうぞ。

2003-06-18-WED

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