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| 糸井 |
‥‥ただですね、その後、ぼくはたしか
４作目くらいで、『新宿鮫』には
お別れしちゃってるんですが‥‥なんでだろう？
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| 大沢 |
それはオレに聞かれてもなぁ（笑）。
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| 糸井 |
いわゆる「シリーズもの」って
だいたい、そうなっちゃうんですよ、ぼく。
京極（夏彦）さんのも、
どこかで、やめちゃってるんですよね。
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| 大沢 |
４作目というと『無間人形』（むげんにんぎょう）かな？
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| 糸井 |
いや、たぶん『炎蛹』（ほのおさなぎ）じゃないかな‥‥。
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| 大沢 |
それじゃ５作目だ。
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| 糸井 |
そうですか。
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| 大沢 |
『炎蛹』なら、５作目ですね。
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| 糸井 |
女性が主人公‥‥なのは、ちがうか。
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| 大沢 |
うん、女性が主人公なのは
３作目の『屍蘭』（しかばねらん）か
６作目の『氷舞』（こおりまい）です。
『炎蛹』は、いろんな事件が同時並行で起きる話。
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| 糸井 |
じゃあ、そのへんから読んでないかも。
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| 大沢 |
『氷舞』は、鮫島が晶以外の女に惚れちゃう話で。
※晶‥‥鮫島警部の14歳年下の恋人で
ロックバンド「フーズ・ハニィ」のボーカリスト。
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| 糸井 |
『無間人形』（むげんにんぎょう）って、東北に行くやつ？
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| 大沢 |
はい。‥‥いや、実際には
「東北」だとは、いっさい書いてないんだけど、
みんな東北だと思ってるんです。
小説のなかでは「Ｆ県」としか書いてない。
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| 糸井 |
あれ、そうでしたっけ。
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| 大沢 |
うん、日本人は「北帰行」というと
なぜか「東北」だと思い込んじゃうみたいで。
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| 糸井 |
ぼくもいま、無意識で「東北」って言ってたわ。
‥‥ともかく、女性が主人公になったあたりで
読者としての自分が
要求してるものと、ちょっとちがうかなと‥‥。
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| 大沢 |
たぶんね、仮にオレが「読者」だったとすると、
「シリーズもの」には
あるていどの「お約束」というか、
「パターン」がないと、ダメだと思うんですよ。
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| 糸井 |
ははぁ。
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| 大沢 |
きちんと「そのシチュエーション」になったら
「印籠」とか「風車の弥七」が出てこないと。
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| 糸井 |
なるほど。
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| 大沢 |
でも、いざ「書き手」としてのオレになると、
そういう「パターン」は絶対イヤで。
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| 糸井 |
印籠、出したくないんだ。
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| 大沢 |
出したくない。
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| 糸井 |
それで、主人公が台湾の刑事になったり、
女性になっちゃったりしてるわけですか。
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| 大沢 |
それだけじゃないけど、まぁ、そうです。
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| 糸井 |
飽きちゃうんですか？
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| 大沢 |
わがままなんでしょうね。
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| 糸井 |
イヤなものは、絶対にイヤ？
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| 大沢 |
いや、だって‥‥糸井さんだって
「この太い脚はイヤだなぁ」と思ったら、
もう、ずっとイヤでしょう？
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| 糸井 |
わかんないですよ、それは。
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| 大沢 |
オレは無理。
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| 糸井 |
そうなんですか（笑）。
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| 大沢 |
まぁ、でもね、本当に悲しいことに、
20年前は
溶けるような「六本木一の美脚」を誇った女性が
今はなんだか
かわいらしい象さんみたいになっちゃって‥‥。
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| 糸井 |
ほんとですか？（笑）
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| 大沢 |
現実に、それに近いことが起きてますから。
オレのまわりでは。
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| 糸井 |
ははー‥‥（笑）。
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| 大沢 |
それでも、今でも１年に１回か２回くらいは
ご飯をご馳走したりするわけですよ。
オレの愛したあの美脚はどこへ行ったんだと
嘆きながらね。
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| 糸井 |
でも、あらゆる美脚は「85歳」になりますよ。
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| 大沢 |
いや、糸井さん、それを言ったら人生は虚しい。
それを言ったら、人生は虚しいんですよ‥‥。
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| 糸井 |
まあ、その‥‥とにかくですね（笑）、
むりやり今日の「本題」に戻しますけど、
いつか「ほぼ日」でも
「こんなふうに、ならないかなぁ」って
思ってたことなんですよ。
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| 大沢 |
あ、そうですか。
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| 糸井 |
小説連載、というのは。
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| 大沢 |
そんなたいしたことでもないでしょう。
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| 糸井 |
でも、これはもう「ほぼ日」を始めた時点から
思ってたことだったんです。
ただ、なかなか難しいだろうなぁなんて
漠然と考えていたら、
今回、大沢さんからお話をいただいて‥‥。
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| 大沢 |
まぁ、ぼくもずいぶん意外な感じがしました。
この話を、
光文社の『新宿鮫』担当からもらったときは。
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| 糸井 |
そうですか。
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| 大沢 |
10作目の『新宿鮫』を「ほぼ日」で‥‥って。 |
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＜つづきます！＞ |
